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おっぱいを小さく見せる技術!

「さぁ、というわけでそろそろ撮影に入るっすよ!」


 話の流れをぶった切るように、詩冴が飛び出してきた。


 ――立場逆じゃないか? いつもなら詩冴がのたくって俺が進行させるんじゃないか?


 そして、俺は不安は的中していた。


「学園祭紹介ページの画像っすが、詩冴たちはクラスのみんなから一任されています。それはつまり、詩冴たちキレイどころを並べてアピールしろという暗黙の命令っす」

「うん、まぁそうだろうな」


 俺が視線を巡らせると、


 桐葉と麻弥はドヤ顔で胸を張り、

 舞恋と茉美は赤面しながら落ち着きを失い、

 真理愛と美稲は動じることなくいつも通り、優しい笑みと無表情だった。


 わかりやすい反応をありがとう。


 ――ていうかそこらのアイドルよりも可愛くてグラビモデルよりもスタイルのいい子ばかりまぁよく集まったもんだな。


 ネットでは、超能力者の女子は女性ホルモンの分泌量が多い、という俗説が流れている。


「つまり! 詩冴たちの強みを全力で活かすとこうなるっす!」


 言いながら、詩冴は桐葉たちの手を引っ張りポージングを促した。


 そこには舞恋と美稲が左右から桐葉を挟み、六つの豊乳が押し潰し合う光景があった。

 その背景で詩冴は茉美にドロップキックを喰らっていた。


 ――おバカ。


「ぐっ、これはほんのジョークっすよ」

 うそつけ。

「じゃあおふざけはここまでにして」

 よろめきながら、詩冴は三セットバストの中央に自分が入り、おっぱいサンドイッチにされた。

 コンマ一秒後、茉美ジャーマンスープレックスを喰らっていた。


 ――学べ。


「がふっ、ごっ、うぐぅ……でもハニーちゃん、そもそも論として桐葉ちゃんを映すならセクシーにならないほうが難しくないっすか? このセックスシンボルが服を着ないで歩いているような女子をどうやって健全にするんすか!?」


「え? 着ぐるみ?」

「誰でも一緒っすよそれ」


 詩冴が珍しくジト目になった。


「けど【彼氏】として言わせてもらうと」


 ――うぉぉ、彼氏って言っちまった。


「エロ目的の男子が来ても困るんだよな」


 あらためて、桐葉の容姿に目を向けた。


 亜麻色の艶やかなロングヘアー。

 蜂蜜色に澄んだ大きな瞳。

 形の良い桜色のくちびる。

 白くも血色の良いみずみずしい肌。

 ウエストは細いのに、メロンを詰め込んだように大きく豊満なバストとヒップ。

 背は高く手足はモデルのようにスラリと長い。


 これで、邪心を抱くな、というほうが無理だろう。


「俺と桐葉だけの問題じゃなくて、学園祭で問題が起きたら、世間への心証もよくないだろうし」


 せっかく、ここまで超能力者のイメージアップに努めてきたのに、水の泡だ。


「こうなったら舞恋ちゃんの出番すね」

「え? わたし?」


 きょとんと首を傾げる舞恋の両肩を、詩冴はわしづかんだ。


「舞恋ちゃん、胸を小さく見せるプロの技を伝授して欲しいっす!」

「プロじゃないもん!」


 珍しく柳眉を逆立て、舞恋はちっちゃな握り拳を作って怒った。


「まったくもぉっ。でも、必要なら教えてあげるね。別にプロじゃないし、そんなに詳しくないんだけど、あくまで一般教養のオシャレテクとしてね」


 不機嫌そうに詩冴の手を振り払ってから、舞恋は近くの小道具置き場に向かった。


「まず、この大きなお皿にお菓子を乗せて、お皿を胸元に重ねれば自然な形で胸を隠せるよね。ハニートーストとか、高さのあるお菓子ならなお良しかな」


 ――なるほど、物の陰に隠すのか。


「あと、麻弥を中央に配置して、隣には膝立ちの真理愛。二人の頭の間に高さのあるハニートーストを乗せたお皿を掲げる。これで頭三つ分の面積の陰を確保。そのうしろに桐葉、美稲、わたしが立てば、胸は完全に隠せるよ」


――物と人の合わせ技、というわけだな。


「桐葉と美稲は髪が長いから、それを前に持ってきて胸の前のカーテンを作って隠せばなおよしだね」


 技を披露するのが楽しいのか、舞恋はだんだん早口になって来る。


 ――そういえば超能力についてレクチャーするときも先生口調だったし、意外と説明好きなのかな?


「あたしはどうするのよ?」

「茉美は端でちょっと横向きに立って。サイドテールの位置を胸に重ねて膨らみを隠蔽しつつ、弱めのライトを下から当てて胸下の影を消せば、ほら、メイド服の白が凹凸を隠してあたかも平らに」

「わっ、すごい」


 鏡の前で実践すると、茉美が感嘆の声をあげた。

 舞恋は満足げで、にっこり笑顔だ。


「な、なんという年齢詐称ならぬおっぱい詐称スキルっすか」

「きっと中学時代の舞恋は成長の止まらないおっぱいとの戦いの歴史だったんだな」


 俺は詩冴と一緒に呆れた。

 同時に、舞恋に対する慈悲の心が芽生えて仕方なかった。


●本作はカクヨムでは252話まで先行配信しています。

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