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6Gの通信能力

●キャラ振り返り10貴美美方たかみ・みかた&貴美守方たかみ・かみかた 

 姉と弟の双子キャラ。

 姉の美方はマグマを生成し操る【ボルケーノ】、弟の守方は水を生成し操る【アクアリウス】の使い手。

 アクアリウスは過去作の【立場逆転・島流されたらスクールカーストが崩壊しました】と【これはナマクラ天剣使いの俺が世界最強の彼女を救う話】の主人公同様、雷雲を作って雷攻撃をしたり過冷却水で氷攻撃など汎用性が高い。

 姉は高飛車お嬢様キャラで守方は眠そうな顔の昼行燈系男子でハニー君唯一の男友達。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 翌日の朝。


 既存の製品にダイヤモンド半導体を搭載した、6G対応の改造デバイスを含め、各種機器を手に俺らは都内の競技場を訪れていた。


 今、スタッフさんが客席の八方角×上中下、計24か所にVRカメラを設置してくれている。


「しっかし一日でよく準備できましたね」


 客席に座ってその様子を眺めながら、俺は感心した。


「ダイヤモンド部品は、製造に時間とコストがかかるというだけで実在はしていたからな。6G対応の五感VRカメラや通信機器のサンプル品はすでにあったのだ」


 隣に座る早百合次官は、まるで先生のように滔々と教えてくれた。


「デバイスも、既存の商品を基に開発は進んでいた。あとはダイヤモンド部品を安価に大量生産できれば、という段階だった。と、どうやらセッティングが終わったらしいな」

「それじゃ」


 俺と早百合次官は、客席の出入り口から出て行き、施設内コンコースへ移動すると、改造デバイスを操作して、施設内のローカルネットに接続した。


 目の前に表示されたダイアログから【観戦】を指でタップすると、VRモードが起動して、世界が様変わりした。


 ――おぉ。


 視界が、客席に座っているソレに塗り替わった。


 首を右に回せば、客席の右手が、左に回せば左手が見える。


 ここまでは従来のVRと同じだ。


 俺が驚いたのは、その解像度と立体感だ。


 従来のVRは平面的で、目を凝らせば、やはり肉眼のソレとは違った。


 でも、6Gで表示された映像はさっきまで座っていた客席からの光景そのもので、見分けがつかなかった。


「ハニー」


 フィールド中央に立つ桐葉が手を振りながら、俺のことを呼んでくれる。


 それは、デバイスが脳に送り込んだ電気信号なのに、本当に遠くから耳で聞いているようにしか感じなかった。


 立って歩いて移動こそできないものの、視覚と聴覚に関して、完全に生身と同じと言える。


「あとは触覚か」


 ちょっと緊張して待つと、打ち合わせ通り、フィールド内には先日のワーウルフやゴーレム、他、多数の戦闘系能力者たちが現れ、戦闘態勢に入った。


「それじゃあ始めようか。ボクを最終形態に追い込めたら、お寿司をご馳走するよ」


 数十人の生徒たちが奮起した。


 収入的には一般高校生と変わらない戦闘系能力者たちは、全員最初からトップギアで桐葉に猪突猛進した。


 だが、それでも勝てない。


 百鬼夜行を蹴散らす陰陽師もかくやという電光石火の早業で、桐葉は集団を切り崩した。


 ワーウルフのような獣人系、岩や金属を操る物質系を真正面から殴り飛ばし、投げ飛ばし、炎や雷撃の盾にして、生徒同士が動きを邪魔し合うように計算して桐葉は立ち回った。


 ただ強いだけじゃない。

 桐葉には、天性の戦闘センスが備わっていた。


 桐葉の打撃音が胸に響く。

 巨躯が地面に叩きつけられる衝撃音が肌を叩く。


 客席に飛んできた炎と光と雷の熱気が、額を汗で湿らせた。

 2040年の技術なら、触覚の再現は可能らしい。


 ただし、リアルな触覚情報は容量が大きく、無線通信では難しいと言われていた。

 けれど6Gならこの通りだ。


 しかも、視点切り替えで、24か所どの客席の五感にも瞬時に変えられる。


 桐葉がゴーレムの胸板を打ち砕き、ワーウルフを地面に突き刺し、炎使いや雷撃使いを他の生徒たちの下敷きにする頃には、すっかり6Gの性能に魅了されていた。


「はい終了。ハニー、ボクの活躍、見てくれた?」


 桐葉がカメラ目線にスリーピースとウィンクをキメると、背後で死んだふりをしていた生徒が立ち上がった。


「危ない!」


 俺の声が届かないのは承知で、反射的に叫んでしまった。


 が、桐葉は視線を微動だにせず、肩越しに親指を突き出し、背後の生徒が倒れた。

 きっと、親指から毒針を射出したのだろう。


 まるで映画の主人公だと、惚れ直してしまう。


 ――俺の彼女がイケメン過ぎて生きるのが辛い。


「どうでしたか? 早百合次官」


 VRモードを切って、意識をコンコースへ戻すと、俺は隣の早百合次官へ水を向けた。

 対する早百合次官は、実に満足げだった。


「素晴らしい性能だ。だが、知人と隣同士で会話しながら観戦したい人もいるだろう。現実の聴覚情報は遮断せず、家で一緒に観戦すれば会話ができるような機能もつけておこう。貴君はどうだ?」

「控えめに言って、最高ですね」


 計画の成功を確信して、俺は満面の笑みを作った。

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