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ラウンドガール


 早くも、二人の姿はネット上で話題になり、美少女ラウンドガールコンビとして、投稿された画像には1万以上のイイネがついている。


 その人気ぶりに、茉美が声を硬くした。


「うわぁ、これ、二人の変なファンが湧くんじゃない? 育雄、あんたちゃんとストーカーよけになりなさいよ」

「心配性だなおい」

「だってあの二人かわいいじゃない。今までストーカー被害に遭っていなかったのが不思議なくらいよ」


 まるで保護者だな、と俺が呆れつつもほのぼのすると、茉美は子猫が鳴くような声を漏らした。


「いいな、可愛くて」

「は? お前も可愛いだろ?」

「!? な!? あんた急に何口説いてんのよ!? 言っておくけど、あんたに揉ませる胸はないわよ!」


 両腕で胸を抱き隠しながら、茉美は俺から一歩退いた。


「俺はお前の自意識がわからねぇよ……」


 普段の言動から、茉美は自分の美貌とスタイルの良さを自覚しているはずだ。

実際、気の強い美人さんと言った感じだ。


 それとも、美人系じゃなくて愛らしい系が良かったってことかな?


「あ、ハニー、舞恋と麻弥を守る為なら恋人宣言していいよ」

「ハニーさん、桐葉さん以外は全員一律二号さん枠でお願いします」

「お前らには俺がどう見えているの!? ハーレムとか考えていないぞ!」


 美稲が真理愛の両肩をつかみ、俺に無言の圧力をかけてきた。


「いや、すいません、はい。すでにハーレムでしたね。あの、なんでRECしているんですか?」

「こういうのがのちのちいい思い出になるんだよ」

「いつ思い出すんだよ?」

「結婚式の時に流せば盛り上がるよ」

「うんわかった。美稲、俺のこと嫌いだろ」

「……そんなことないよぉ」

「今の間はなんだ今の間は!?」

「なんだろうねぇ」


 美稲は無限の余裕を含んだ表情でコロコロと笑った。




 しばらくして、11試合が終了すると、ついに今日のメインイベントが始まった。

 バトルフィールドで、詩冴が声高らかに観客へ呼びかけた。


『さぁさぁお待たせしました! それではこれより本日のメインイベント、豪華絢爛、この世にふたつとない美少女バトルをお届けします!』

「じゃ、ハニー君よろしく」

「おう」


 桐葉が宙へ浮かぶと、俺は促されるまま、美稲をバトルフィールドの入場口へとテレポートさせた。


 詩冴が、マイクアプリで声をからすように叫んだ。


『まずは四天王の一角にして、たった一人で日本の資源問題を解決した大地の女神。ガイア! 内峰美稲の登場だぁあああああああああああ!』


 詩冴の紹介に合わせて美稲が姿を現すと、会場が沸騰した。


 恰好は異能学園の制服だけど、選手は全員生徒なのだから、これはこれで選手のユニフォームの兼ねられる。


『続いて入場するのは同じく四天王の奥井育雄、の、身辺を警護する日本最強のガーディアン。妖精のように空を舞い、荒ぶる神のように敵を貫く金色の女王! 針霧桐葉だぁあああああああああああああ!』


 詩冴が全身を仰け反らせて鋭く空を指さすと、桐葉は屋上から飛び立ち、上空から闘技場へと降り立った。


 金色に近い亜麻色のロングヘアーをなびかせ、ハチミツ色の瞳とともにクールな笑みとウィンクをひとつ。


 まさかのド派手な登場とウィンクに、観客は今日最高の熱気を見せた。


 登場の仕方もだが、桐葉の容姿なら当然の反応だろう。


 身内のひいき目を抜きにして、桐葉と美稲はトンデモない美少女だ。


 美稲は前に通っていた高校では高根の花だったし、桐葉も、一目見た瞬間、呼吸を忘れてしまうほどの美少女だった。


 アクセサリーもヘアセットも衣装も化粧もなく、無愛想な表情でなお俺の心を射抜いた桐葉は、まさに真正の美少女と呼ぶにふさわしい存在だ。


 二人の戦いは、打ち合わせ通りに進んだ。


 本気で戦えば、二人の戦いは膠着する。


 地上から離れた桐葉が上空からの遠距離戦に徹すれば、美稲は岩のシェルターにこもって終了だ。


 だから、試合を盛り上げるべく、桐葉には空中戦は最小限にとどめるよう言い含めておいた。


 美稲が地面を蹴ると、地面から桐葉目掛けて無数の石柱が飛び出した。


 だが、桐葉は縦横無尽の高速飛行でその全てを避けながら美稲の元へ向かう。


 桐葉は高度を地上6メートル以内を守っている。


 けれど、彼女の飛行は360度全方位へ予備動作なく加速して、それこそドローンのような融通性を持っていた。


 昆虫特有の、予想を裏切る無軌道飛行術だ。


 それでも流石は美稲と言うべきだろう。


 ここぞというタイミングで全包囲攻撃をしかけ、桐葉の逃げ場を奪った。


「捕らえたよ!」


 美稲が凛としたスポーツマンスマイルで畳みかけた。

 対する桐葉は、クールな眼差しを崩すことなく、口元を好戦的にゆがめた。


「なら、正面突破するだけさ」


 ためらわず、桐葉は美稲目掛けて突進した。

 迫る石柱は腕の一振りで粉砕して、捕食者のような俊敏性で美稲に五指の針を振り下ろした。


「これでぇ!」


 桐葉の右手が石柱に五本線のわだちを削り込んだ。


 超高速で天へ伸びる石柱は美稲を空高くエスケープさせた。


 桐葉の五指は石柱に突き刺さり、だが石柱はおかまいなしに上へと伸びるため、まるで桐葉が石柱に爪を突き立ててブレーキをかけるような形になってしまったのだ。


 空中でくるりと一回転をキメながら、美稲は別の石柱にやわらかく着地した。


 その左右には石柱の代わりに、太くたくましい二頭の石竜が生えてきた。


 あれは、流石の桐葉も剛腕で砕くのは難しそうだ。


 二人の戦いに客席は興奮が収まらず、ボルテージは上がる一方だった。


 こうして、異能学園のグラウンドは、熱狂の渦に包まれていった。

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