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マグロ語る。そしてモザイク

 待機すること数秒。

 ユーマの脳内に高圧的な声が響く。

 幸い寝起きでも寝床から叩き起こされたわけでもないようだ。

(何事だ?)

(ステータスオープンって何ですか?)

 素朴な疑問を率直に投げつけた。

 だが、ユーマの中ではとてつもなく重要な質問であった。

(何を聞きたいのだ、おまえは)

 はあ、とため息をつくような音が脳裏に響く。

(いま、目の前にいるマグロ・・・・・・いや、半魚人? がステータスオープンって叫んでまして)

 マグロの手が空中で止まり、神妙な面持ちのユーマを不思議そうに見ていた。


(人の子の遊戯などでステータスが出るような何かではないのか? ・・・・・・マグロ?)

 困惑気味の声。

 うん、自称女神様も知らないのであれば、きっと異能であろう。

「なるほど! 特別なスキルって奴だな!!」

 考えることを放棄したユーマは、晴れやかな顔でマグロに笑いかける。


「・・・・・・人間は、ステータスオープンって使えないんですか? 二足歩行者にとっては、当たり前のことだと思ってました」

 マグロの目がぱちくり、もといトゥルンと輝いた。

 新鮮なお目目である。

「我らの神が、かの神魔戦争で水の楽園を創るために、我々に人と同じような手足と体をお与えくださったのです」

 またもや視線が虚空をさまよいだす。

「とはいえ、我々はもともとは魚体。そこから新たに進化するには、神力的にも時間的にも余裕がありませんでした」

 だからと言って、魚体に人間ボディをはやすという選択肢には、問題しかないような気がする。

「しかし、ある時のことです。一人・・・・・・一尾でしょうか?」

「いや、知らん。魚なのか人型なのかで違うんじゃないか?」

「そうですか。一人、としときましょう。ある時、一人の若者が人間にあこがれていました。何でも二本の足で地上の走ってみたいという夢があったそうです」

 いま、目の前にいる怪異のご先祖様的なアレであろうか。

 しかし、ユーマはどことなく知っているような気がしていた。


「ですが、我々は魚。足を生やすなど進化の法則に反します。・・・・・・ところがです」

 わざとゆっくりと言いよどむ。

 まるで特番の語り部が、視聴者の反応を確かめるときのような仕草であった。

「ある時、その若者は事故で突然変異してしまったのです!」


 何か、合いの手を入れた方が良いのだろうか。

 ユーマは思案するが、そんなことにお構いなくマグロは語り続ける。

「神様のみに与えられた神具がありまして、それの周囲には不可思議な力が働いているのです。それの魔力にあてられた彼は、一度、死に、新たなる生命体として蘇ったのです」

「それは」

「それが、我々、フィッシュマノイドという新人類!!」

「・・・・・・」

 腰に手を当て、両足を肩幅に開いたマグロが吠えた。

 股間の大根がブランブランと左右に揺れる。

 見たくも無いようなそれから思わず目を背ける。

(無粋な俗物め、恥を知れ!)

 脳裏では、いつの間にか一緒にご清聴してくれていたチグサ様が吠えた。

 マグロの股間に強力なモザイクが掛けられる。

 より一層、卑猥感が増した気がするが、などと声には出さないし、念じない。

 直視に耐えがたいものが、モザイクの彼方に消え去っただけでも僥倖であった。


(その俗物どもの親玉は、海神エルドゥ・ア・ナッサムだな? あのデブタコまだ生きていたか)

(なるほど。タコ)

 マグロにサメ、カニ(エビ?)ときて、大ボスはタコであるという。

 遺跡自体が、なんとなくどんぶりみたいな形をしている気がするから、海鮮丼・・・・・・などとどうでもいい思考が脳裏をよぎる。


「我らの神は、これを新世界への覇道の礎とみなされました!」

(バカなんすか?)

(知能は低いと聞いている)

 熱く語るマグロと対照的に冷凍庫並みの冷やかさで見守る。

 魚体に人間ボディが生えるという進化もクソも無い不慮の事故を前向きにとらえるポジティブさに恐怖する。



「結果として、この都市に住むすべての住民が、フィッシュマノイドとして生まれ変わらせられたのです・・・・・・」

 そこまで語ると心なしか、まん丸のお目目から光が失われる。

 というより悲しみをたたえていた。

「邪悪すぎる」

 事故で爆誕したHENTAIマグロを、積極的に創り出そうとするタコ型の神(?)。

 どう考えても失敗だろう、などとは言わない。

 目の前のマグロの逆鱗に触れて、飛び膝蹴りをかまされてはたまらないからだ。

 せめて魚みたいな顔をした人型のモンスターとかならマシであろうに。


 深き者ども的な。


「しかし、フィッシュマノイドと化したものからは自我が失われ、肉体組織は魔石へと変貌したのです」

「彼らは、もう個々の意識を持ち、個々の想いを持った生命体ではなくなりました。・・・・・・ただの尖兵でしか無くなってしまったのです」

 マグロボディには変化が無いが、ぎゅっと握りこんだ拳には青筋のようなものが見て取れた。

 お怒りである。

「なるほどな。しかし、あんたもそのフィッシュマノイドって奴だろ? めっちゃ自我があるように見えるけど」

 サメの変態?は、どうみても頭空っぽっぽい感じだった。

 しかし、こちらのマグロには確固たる意志があるように見える。

 むしろキャラが濃ゆい。

頭がおかしくなる路線のままイキますわよ!

(マジメにファンタジーをしているゴッデスポイントはノベルピア版)

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