VSアンデット
かくしてユーマ一行は下水掃除に向かうことになった。
ゴブリン闘士とドラゴン幼女は最後まで武人の誇りがどうのと唸っていた。
そこでユーマは下水が詰まるとどうなるかを激しく説いたのだ。
厳密にはトイレが詰まったときの話だったが。
町に下水道があるということは割とハイテクだと何かで読んだ気がする。
上水道もあるのか、と聞かれたら見た記憶が無い。
なみなみと水が入れられた”かめ”が家屋の隅に鎮座していた気がするからだ。
「さすがユーマ殿。カタコンベであるのならそう言ってくれれば良いものを」
しなびたキュウリみたいな顔をしていた七味が輝きを取り戻す。
甲子園球場ほどもある公園の片隅にぽっかりと開いた地下への入り口。
”地下墓地”と石壁に刻まれた横に6番下水道と書かれた木札がぶら下がっていた。
「下水掃除と言いつつ、アンデットの始末をするヤツじゃな? 我は詳しいのじゃ」
両目が死んだ魚みたいになっていたマウスも急に活き活きしだす。
一方、シスターは「迷える魂に安寧を」とか言っているが、良からぬことを考えているのだろう。
口元がにやけ、鼻血が垂れていた。
下水道とは言いえて妙な、とどのつまり地下墓地だったところに汚水を流しているのである。
何が下水か! ユーマは憤った。
「さあ、行きましょうぞ!」
七味が期待に胸を膨らませ、地下墓地の入り口に消えていく。
続いてマウス、ウリウリの順だ。
「マさん」と呼んだらこの世の終わりみたいな顔で抗議されたため、ご本人のリクエストどおり「ウリウリ」と呼ぶことにしたのだ。
想像した下水掃除と違うことに愕然としながらもメンバーの後を追う。
割と整備された石階段を下るとひらけた空間に出る。
大体だが幅6m、高さ2mほどの空間の両サイドに石棺が山積みされていた。
奥行きは不明だが、謎の光源で辺りが青白く照らし出されている。
「魔の者のにおいがしますな。各々方、油断召されるな」
先頭を行く七味が低く、ゆっくりとした口調でささやく。
真剣な面持ちで頷く幼女とシスター。
(下水の匂いなんじゃないのか)
ユーマは現実逃避を試みた。
しかし回り込まれてしまった。
「何かが蠢く音がしますね。この通路の先、左右どちらかです」
シスターも低い声で囁く。
そろそろと進む一行は曲がり角につくと、そっと通路の先を覗き込む。
薄暗い通路の向こう、確かに何かが蠢いている。
サイズ的に成人男性くらいの何かがユラユラしているのだ。
「マジかよ・・・・・・」
好き好んでファンタジーな下水掃除などに来たのでは無い。
ドブネズミくらいしか出ない、と聞いていたから安全を重視した結果だ。
それなのにアンデットとか!!
「ヴヴヴヴ・・・・・・」
ユラユラ揺れている何かが唸り声をあげる。
「地獄の苦しみにうめく声です・・・・・・」
ウリウリが解説する。
青白い光がそれの顔を照らし出す。
「見よ、目が赤いぞ」
マウスが嬉々として指さしながら囁く。
好奇心に満ち溢れた顔だった。
視線の先のアンデット?の双眸が赤く光る。
「やるか?!」
七味が突撃の構えを見せる。
なぜ自分に判断を仰ぐのか。
ユーマは困惑した。
そして、電流が走ったように思い立つ。
神々(読者)に判断を委ねよう、と。
-教えてくれ神、どうすれば良い?-
ユーマは心の中で顔も知らない神に語り掛けた。
ノベル〇ップさんで試験的に読者さんにコメントを求めてみた名残です。
と、思っていた時期がありました。錯覚でした。(このエピソード、こっちが先に更新していた・・・)