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she, sea, let's go

改稿中のため次のキャラは名称が変更になっています。

ハ●ーン様 → チグサ様

ピ●チュウの声の神 → チヒロ

オー●ドっぽい声の神 → オレオレオ…なんでしたっけ?

(チグサ様、サスペンションが欲しいです)

(何を言っているのだ、お前は?)


 翌日、お天道様が夜明けを告げるころ、ユーマは裏庭の荷台を見つめていた。

 クレソンたちの馬車の荷台である。

 曳くもののいない荷台である。

 あの揺れると腰が砕けそうになる荷台だ。

「早急に改良が必要だな」

 ユーマは、腕組みをしたまま考える。

 曳くものは、なんかどっかから仕入れれば良い。

 しかし、問題は乗り心地だ。

 どこかに旅行に行くとなったら徒歩で行くなどゴメン被りたい。

 ならば、文明の利器「馬車」を使わない手は無いのだ。

「クッションを敷く? いや根本的に解決しないな」

 完全なる独り言。

 みんな、まだ夢の中である。

「自転車とか車とか、あれってどうなって・・・・・・」

 記憶をたどる。

 自動車は持っていないが、何となく四輪駆動が浮かんでいた。

「はッ!? バネ! そうだ、サスペンションだ!」

 ド素人のユーマにはよく分からぬ。

 とりあえずバネのようなサスペンションが衝撃を吸収するのだ。

 という事でサスペンションを送ってもらおうという考えに至ったわけである。


(馬車の乗り心地が悪くて、バネを付ければ改善するのではないかと)

(そんなワケあるか。どこにどう付けるのだ)

 脳裏に馬車の裏側イメージが浮かぶ。

 箱のような荷台の前後に横棒が通り、その先に車輪が付いていた。

(!?)

 ユーマは気付いてしまう。

 そう、サスペンションなど付けれる余地が無い造りなのである。

 それはあまりにも原始的過ぎた。

 馬車というよりも車輪のついた箱であった。

「ウソだと言ってよ!!」

(現実だ。諦める事だ)

 差し込む朝日で光るのは朝露か涙か定かでは無かった。



『海に行くのです。ユーマよ、海があなたを呼んでいます。さあ、水着を手に入れ、悦ばせなさい』

 二度寝してわずか10数分後、唐突に天啓が下った。

 誰を悦ばせるのか、イントネーションがおかしかった気がするが、寝ボケまなこのユーマに正しい判断はできない。

(あい・・・・・・)

 適当な相槌を打つと、再び夢の中に旅立とうとする。

『良いですか。ユーマよ。新市街8番通りに新作水着を仕入れる商人が、今日、午後2時! 到着します! 事は急を要します! ただt』

(切電)

 まくし立てるように喋り続ける神の言葉を遮るくらいには、ユーマは眠かった。

 睡眠の前には、神とてノイズでしかないのである。

(海・・・・・・)

 静けさを取り戻し、惰眠という名の海原に意識を沈めていった。



 少し遅い朝、食堂で朝食をほおばりつつ皆が一様に夢の話をしていた。

「という夢をみたのじゃ」

 おたまを片手したマウスが切り出す。

 カッコいい大人のレディは、料理が上手という流言を真に受け、スープづくりにハマっているのである。

 連日、ジャガイモのポタージュしか作らない。

 ただのジャガポタマスターである。

「某も絶世の美女が同じようなことを」

 謎の肉に齧りつく七味も右にならう。

 こちらは、絶世の美女が出てきたらしい。

 ゴブリンの?

「私も見ました。神ですって名乗ってましたけど、神っているんですね」

 聖職者で教会の徒であるウリウリがトンデモ発言。

 アウスティリア正統中央教会には、信仰する神はいないのだろうか?


「なるほどな。つまりは、湖では無く海に行くっていう運命ってヤツだ」

 クレソンが4杯目のジャガポタージュを飲み干しながら、うんうんと深くうなずく。

「神の啓示であるならば、海に行くべきですね」

 アンソニーもジャガポタ6杯目である。

 こいつらはジャガポタしか食べない呪いにでも掛かっているのだろうか。

「ボクのところにも女神様が出てきたよ。マウスちゃんにカワイイ水着を、ウリウリちゃんにはすごいのをって言ってたな」

 なんという俗っぽい天啓であろうか。

 ベルナルドのところに出てきた神はオヤジかもしれない。


「・・・・・・神様だったんですね。錬気で倒しちゃいました」

 夢枕に出てきた神って倒せるのだろうか、と首を捻るが、ミズホのことである神通力みたいな謎パワーを発揮したのやもしれぬ。

 とにもかくにもユーマが話半ばに切電したせいであろうか。

 みなの夢枕に神を名乗る輩が現れたようである。

「つまり海へ行くって?」

「そうですね。自称神さまが仰っているので、そうなります」

 海、海かぁ・・・・・・。

 ユーマの脳裏に海の思い出が浮かぶ。

 かき氷、サイダー、イカ焼き・・・・・・こんがり焼けたマッチョのおじさん、パーカーを着たままパラソルの下から出てこない幼なじみ、離岸流に流され沖でクラゲに刺され・・・・・・。

「ううむ」

 あまり楽しい思い出が無い気がして唸る。

 かと言って湖とか山とか、挙句、教会に鍛錬という名の休暇など真っ平ごめんである。


「話は聞かせてもらったなの!!」

 バーン!

 けたたましい音を立てて開くドア。

 一斉に視線が集まるそこに立っていたのは、陰陽師のような出で立ちのケモミミ少女であった。

 巫女服の派生みたいな格好でフサフサのキツネの尻尾が生えている。

 見覚えのない少女は何故かドヤ顔をしていた。

「誰だ!?」

 アンソニーが声をあげる。

「うち? うちはチヒロ。神様なの」

「ロリ巨乳だ!!!」

 どこかで聞いたことのある声色と名前。

 ベルナルドがたわわなお胸を見て、包み隠さぬ感想を漏らす。


「おじさん達、ヘンタイさんなの。ふけー罪なの」

 眉毛がハの字に歪む。

「あ、あんたがピ〇チュ・・・・・・」

「ユーマ、それ以上言ったらいけないの。世界の法則が乱れるなの」

 なんとなく察しがついたユーマがメタ発言しようとすると遮られた。

 きっと口にしてはいけない滅びの言葉のなのだろう。


「さあ! 水着を買いに行くなの!」

 何としても海に出掛けさせるという強い意志を感じる。

 運命の方から迫ってくる理不尽にユーマは震えた。

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