女子会、大人の
「こ、これは! えええ・・・・・・不健全じゃないですか!?」
「不健全ですね! でも、こうなんて言うか、すごい背徳感ないですか!? ミズホちゃん!」
「こ、答えないとダメですか!? こんなえっちなもの見た事が・・・・・・あわわわ」
ロッテンハイマーの自宅にて、ウリウリの部屋から漏れ聞こえる黄色い声。
扉には「女子会」と書かれた札が下がり、追記したであろう「大人の」という文字が躍っていた。
「こっちの書物に描かれている悪鬼なんて、こないだのゴブリンそっくりです!」
「ミズホちゃん。それも・・・・・・こう」
「きゃぁあああああ!! え、えっち! エッチすぎます!!」
廊下まで漏れ聞こえる声からして何をしているかを悟るユーマはスケベであった。
恐らくは、十中八九ウリウリ秘蔵のエロ本観賞会をやっているのであろう。
純真無垢、だと思われるミズホがエロ本に汚染されていく。
おいたわしや、ユーマは眉間にシワを寄せた。
別に盗み聞きをしているわけでも立ち聞きをしているわけでも無い。
『我も大人のレディなのじゃー!』と言ってドアをブチ破ろうとしたマウスを制止していたのだ。
マウスが何歳かは定かではない。
無いが、少なくとも幼女である。
良くて中学生、悪くて小学生である。人間の見た目的には。
「リビングにカニ鍋があるから七味やクレソンたちと食べてきなよ」
そう言って離脱してもらったところであった。
先日のゴブリン騒乱後、ロッテンハイマーまで歩いて帰るのがイヤでクレソンたちを雇ったのである。
彼らも住む場所が無いし、商売を再開するにも拠点も仕入れ先も無い。
まさに渡りに船である。
かくしてユーマ宅におっさん3人が住み着き、必要に応じて自家用車と化したのだ。
当然のように食事のたびにべらぼうに広い食堂に全員集合するのであった。
今日はカニ鍋である。
真昼間からカニ鍋である。
「ウリウリさん。この飛び散っている液体はなんですか?!」
「あ、それは・・・・・・で・・・・・・です」
「あぁぁぁアアアアアアアアアッ!!! ウソ、そういう感じなんですか!?」
「じゃ、じゃあ、この巫女に刺さっているのって・・・・・・」
「・・・・・・です! ミズホちゃん!」
「キャアアアアッ!! そ、そそ、そそそそんな、ああああ!!! えちちちちッ!!!」
どうやらゴブリンが巫女さんをヒャッハー!する系の薄い本らしい。
どんどんおかしくなっていくミズホを正常な世界へ引き戻すべきだろうか。
数分、悩んだあとユーマは、そっとその場を離れることにした。
他人の趣味にケチ付けるほど聖人君子では無い。
うん、そういうことにしよう。
ユーマはそっとその場を離れると廊下を抜け、玄関をくぐると庭に出る。
イイ感じに生え揃ってきた芝生を眺め、ぐるりと辺りを見渡した。
「平和でなにより」
空を白い雲が流れ、風が頬を撫でる。
柔らかな陽の光が降り注ぎ、平和そのものだった。
露天風呂がある庭に視線を移すと天まで届きそうな大木がそびえ立っている。
マハールに行く前に異界でもらった種? 豆? を植えたら伸びたらしい。
推定30mくらいの大木には青々とした葉がきらきらと輝いていた。
成長速度がおかしいが、異世界なのでそれはそれ。
「秘密基地を作りたいな」
幹には登れそうな窪みがいくつもある。
それならば子供心全開で、樹上の秘密基地とかワクワクするくらいには、ユーマはお子様であった。
そして大木の脇に3台のけん引する動物のいない馬車の荷台が並ぶ。
クレソンたちの馬車の荷台だ。
結局、マウスのブレスで砦がほぼ全壊したため、馬車爆弾はいらなくなったのだ。
特に次の予定も決まっていない。
なんだかんだあって、最近ゆっくりできていない気がする。
「夏が近いのか・・・・・・」
最近、以前よりも暑くなったし、夕方も日の入りが遅くなった気がする。
ロッテンハイマーに四季があるのかは分からぬ。
だが夏休みがあってもいいのではないだろうか。
『夏休み』って言葉だけでワクワクする。
そうだ。
一月ほどゆっくりと過ごそう。
良い避暑地があるなら行ってみるのも良いかもしれない。
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「ユーロ湖にしよう! 湖はいいぞぉ! 釣りに水遊び、きれいな湖畔で夕陽を見ながら夕げを楽しむ。最ッ高だぞ?」
「八雲に行きましょう!! どこまでも続く棚田、風に揺れる黄金の稲穂・・・・・・は今の季節ないですけど。小川のせせらぎに満天の星空、情緒あふれる南丞の市街地とかワクワクしますよ!! あ、夏祭りもあります」
「家でダラダラし」
「なにを言っておるのじゃ!! 夏と言えば海! 海じゃ!! ・・・・・・と道具屋のおばさんが熱弁しておったのじゃ!!!」
翌日、ユーマ宅では盛大に揉めていた。
みながみな、自分の行きたいところやおすすめの観光地を述べまくり、収拾がつかなくなっていたのである。
何が原因か、というとユーマが切り出した一言が発端であった。
「明日から一か月長期休暇に入ります! クエストに行きません! 怪物とかとも戦いません! とりあえず『夏休みは遊ぶ期間」です」
と声高らかに宣言したのである。
最初は、何を言っているのだろう?という顔をしていた面々だったが、徐々に意味を理解したようである。
じゃあどこかにみんなで遊びに行こう、となったワケであった。
そして、リビングで論争が繰り広げられるに至る。
ちなみにユーマの家でダラダラしたいという意見は、途中で遮られて誰も聞く耳を持たない。
なんてヤツらだ。
ユーマは心の中でグチった。
一応出ている案は
1.湖のほとりでキャンプ
2.そうだ京●に行こう、もとい八雲に行こう。
3.海に行こう。詳細不明。
4.教会住み込みツアー
の4つだ。
1はクレソンたちおっさんのロマンが詰まっているらしい。よく分からん。
2はコスプレ巫女ミズホの故郷 ニセ日本に行こう。だ。夏祭りがあるとか言っていた。
3はマウス案だ。道具屋のおばさんが一枚噛んでいるらしく新作の水着のモニターをさせられるようだ。
4はウリウリ、と思いきや、先日お世話になったシシリーからの挑戦状である。死ねと言うのか。
ユーマは頭を抱えていた。
できれば家でゴロゴロしたい。
しかしどこか旅行先も決めざるを得ない。
みんな、どこかに行く気満々であった。
(天上におわします神々よ。どうすれば良いですか? 道を示してください)
丸投げした。
以前、丸投げして応答が無かったにも関わらず、またも丸投げである。
きっと神々がアドバイスをくれるに違いない。
ユーマは怠惰であった。
いつも閲覧いただき、誠にかたじけない!
ついったあーにて続きの行き先あんケェとを募集しているそう。
初めて読んだという方も毎回読んでるぞ、という方も気軽に選んで頂けると嬉しいぞ、
とのこと。
今後もTwitter(巻き舌発音)にてキャンペーンをやっていくそうなので要チェックであるな!
シチミィである(聞き取れない発音)