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ゴブリン砦〜それから〜

 

 ――――――。


 かつて地図上にあった関所、今のゴブリン砦は消滅した。


 そこに大きな石造りの建物があったんだよ、と言っても信じないだろう。

 辺り一面にガラスのようなものが無数に散らばっている。

 超高熱に晒された石はガラスのようになるらしい、とモヘンジョなんとかの説明で見た気がする。


 かつて砦の石組だったものと言っても信じないだろうし、ドラゴンが怒りのままに焼き払ったとか言ったら笑われるだろう。

「ドラゴンが人里近くの、それも大都会マハールの近所に現れるわけないだろ」って。

 まあ普通はそうだろうなってみんな思うだろう。

 マンガやアニメでは、ちょっとした車に轢かれるハトよろしく主人公がぶった切っているが、それほどポピュラーな生き物では無いのだ。


 とにもかくにも街道を跨ぐように建っていた石造りの建物は爆発して無くなった。

「やりすぎたのじゃ・・・・・・」

「すまんのじゃ」

 すっぽんぽんの幼女が長い髪の毛を垂らして正座していた。

 つい先ほどまで身の丈10mほどのドラゴンと化して、口から謎光線を放っていたマウスである。

 ドラゴン化した時に衣服は燃えるゴミになってしまい、全裸であった。


「死ぬかと思いましたぞ」

 吹き飛ばされることに定評が出来てしまったゴブリン族の闘士 七味が全裸で胡坐をかいている。

 腰ミノは燃えてしまった。

 ゆえに立ち上がられると大変困った絵面になるのだ。

「私もヤられるかと思いました・・・・・・」

 シスター服がビリビリになり、キワドイところだけ隠しているシスターが恍惚とした表情を浮かべる。

 HENTAIシスターウリウリは平常運転であった。

 ゴブリンに引っ張られて破れたのか、巻き込まれて破れたのか定かではない。


 とりあえず結論から言うと『戦わなくても良い戦い』だった。

 そもそもゴブリンによる明確な被害届が出ていない、という事だったし、討伐に向かった冒険者が軒並み行方不明というアレもワケありであったのだ。

 捕まっていた商人のおっさんも無事救出されたわけだが、彼曰く「前金ピンハネした冒険者たちに騙された」とのことだった。


『ゴブリンが街道沿いの砦を占拠した』、『隊商が襲われた』、『冒険者である私たちがなんとかしてあげよう』とウワサを流したのは冒険者たち。

 商人たちから討伐料として前金をかすめていったのも冒険者たち。

 お気持ち程度に砦に放火などして、警戒度をあげたのも冒険者たち。

 ついでに、現地の様子を見に来た商人のおっさんの身ぐるみを剥いだのも件の冒険者たち。

 すっぽんぽんで倒れていたおっさんを保護したのはゴブリンであった。


「なんたる失態!!」

「く、外道の所業です!」

 教会の方々が憤慨していた。

 先入観と誤った情報でみんな踊らされていたわけである。


 間違った情報のまま、切った張ったの血祭が起き、死ななくても良い誰かが死んだのだ。

 猛烈に後味が悪い。


 何だったら最初からドラゴン化したマウスがいれば、抑止力というか恐れをなして逃げてくれたかもしれないのだ。

 それこそ、もしも論であるのだけれど。


「ええい! ヤケ酒だ!!」

 モヤモヤして仕方が無いユーマが叫んだ。

「お付き合いします!!」

 ほぼ半裸のミズホが天に拳を突き上げる。

 誰が悪いかと言えば、悪い噂を流したヤツである。

 しかし、それを精査せずに鵜呑みにした側にも責任はある。

 なんだかネットの世界で見たような構図だなぁと思う。

 ユーマ達を乗せた馬車は町へ進む。





 その後、3日間にわたりヤケ酒をあおった一同は、ひとり、また1人と脱落者を出しながら二日酔いに悩まされるにいたる。

「かちにげなのじゃあぁぁぁあああ・・・・・・。ゆるさんのじゃぁぁぁ・・・・・・もう一度、あそび・・・・・・たいの・・・・・・じゃ」

 酔い潰れたマウスがどうどうと泣いていた。

 酒瓶を抱きしめ、大股おっぴろげて大いびきをかくミズホはおっさんであった。

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