【外伝】珍味・いちめんのゴリポムチョ
「正気の沙汰ではないにゃ」
思わず本音が漏れてしまったウェイトレスのマオ。
ネコのような耳と尻尾が特徴の亜人ニャンシー族の少女マオは、料亭”タム”の看板娘だ。
思わず口元を手でふさぐが、時遅しである。
目の前で眉間にシワを寄せているゴリラ顔の店主の鋭い目つきがコワい。
「いや。いける。問題ない」
別に店主は怒っているわけでは無いのだ。
生まれつき気苦労が多くて、気付いた時には顔に深い深い溝が形成されていたのだ。
温厚で優しくて面倒見が良いのだ。
でも顔が怖すぎて、店で料理包丁片手にたたずんでいるだけで『オマエを材料にしてやろう』という感じがする。
かなり損をしている。
そして、マオは自分がいないとダメだなーと15歳のころからずっと働いている。
割とどうにでもなっている。
ただし時々狂ったメニューを提案する問題点がある。
それがテーブルの上に乗った”ゴリポムチョ”だった。
「いや、いけないよ! ゴリポムチョじゃん! 亜人、もといミニドワーフじゃん! 食べるには難易度高すぎるにゃ!!」
ミニドワーフ族ポムチョ科ゴリポムチョ、とどのつまりドワーフだ。
こんなもの出したら店が滅びる。
食事するお客さんがゴブリンだとか二足歩行の竜人ドラゴニュートとかなら大丈夫そうだけど、一般受けはしない。絶対!
「ゴリポムチョのように見えるが、大根だ」
「は?」
マヌケな声が出る。
大根? 手足っぽい部分があるのに? このゴリラはウソをつくならもっとマシなウソをついて欲しいものだ。
「大根だ。ちょっと特殊な」
「いや、手足がある・・・・・・」
大の字になったまま死んでいるっぽいゴリポムチョには手足がある。
さすがに指までは確認できないが、逆にそこまであると怖すぎる。
「それは茎だ」
「茎・・・・・・」
身長25cmほどの小人っぽいフォルムで手足部分が茎だとするとどう生えているのだろうか。
マオは難しい顔をして首を傾げる。
「とりあえず見て欲しい。裏の畑だ」
店の裏には家庭菜園がある。
店主の趣味で可憐な花やスタイリッシュな植物がたくさん育てられているのだ。
厨房を抜け、休憩室兼自宅を通り抜け、裏庭に至る。
立体的に配置された鉢や花壇は別名空中庭園だ。
そんな華やかな区画の奥に先月開墾された畑がある。
「大根だ。ちょっと特殊な」
店主が指さす先にはゴリポムチョがたくさん、たぁくさん生き埋めにされていた。
いや生きていない。死んでいた。たぶん。
いちめんのゴリポムチョ
いちめんのゴリポムチョ
いちめんのゴリポムチョ
頭が土に刺さり、無造作に宙を掴むような形になっている手足。
いちめんのゴリポムチョ
いちめんのゴリポムチョ
「店長!! これはヤバいにゃ!! 大量殺人にゃ!! 警ら隊に捕まって磔獄門にされるにゃ!!!」
マオが血相を変えて叫ぶ。
猫耳と尻尾が逆立っていた。
「待てマオ。大根だ。DA★I★KO★Nだ。よく見ろ」
店主は至って落ち着いていた。
気苦労のあまり、ついに狂ってしまった。とマオは嘆いた。
こうなったら、このゴリラ顔の店主と一緒に磔獄門に処されるのもやむなしと覚悟を決める。
マオは店主を愛してやまなかったのである。
一方、目玉がぐるぐるしているマオを尻目にゴリポムチョを畑から引き抜いてみせる。
土に埋まっている頭部、ではなく根っこ部分が土の中からどんどん引きずり出されていった。
長さ約30cm。
頭の長さが30cmのヤツがいたら、間違いなく人外だ。
「見ろマオ。大根だ」
「だいこん」
「これの土の中にあった部分は苦い。折る」
ボキン
首がへし折れるように見えるが大根である。
「あとはこんがり焼くと鳥肉の味がする。ソースを掛ければ”ゴリポムチョ”と言い張って売れる。間違いない」
なぜゴリポムチョに固執するのだろうか。
ああ、そうだ。
店長がハマっているんだった。
世界の珍味に。
「でも騙してるにゃ?」
「問題ない。誰もゴリポムチョの味など知らない」
はぁあああ・・・・・・
マオはクソでかため息をついた。
こんな怪しい事ばかりするから変な客が増えるのだ。
今に始まったことではないけど。
こうして、ゴリポムチョ料理(大根)がメニューに加わるのだった。
ただ、噂によると中にナニカ得体のしれないものが詰まっていた、という話を聞いたことも・・・・・・いや、幻聴かもしれない。
そうだね。
本編に登場した謎のグルメ「ゴリポムチョ」のショートストーリーです。
ちなみにゴリラ顔店主は珍味が出るお店の店主、マオは看板ウェイトレスさんです。
歳の差カップル(ごくり)




