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振り返ればそこにいるゴブリン

 雨降って地固まる、夕日の河原で殴り合う。意味は同じだと思う。

 違う? 些細な問題だ。殴り合って分かり合うか殴り合わないかの違いだ。


『有償ゴッデスポイントが500付与されました!』

ピ●チュウの声が脳裏に響くが慣れたものである。

 スルー。


 ユーマとマウスが衝立の前に仁王立ちし、依頼ボードを睨んでいた。


 少し後ろでシスターが落ち着かない様子で眺めている。

「ゴブリンか」

「ゴブリンじゃな」

こういう世界でお馴染みのセリフだ。

 ユーマはただ言ってみたかっただけだ。

 体育館裏でたばこを吸っている不良、ゲーセンでたむろするチョイ悪集団、ふと気付くとそこにいる。

 そういう連中みたいなのがゴブリンらしい。


「ゴブリンだが何か?」

ほら、気付くと横にいる。

「いや、言ってみたかっただけで・・・・・・うおぉ!?」

予想しないところにゴブリン。

 ユーマは驚き、後ずさる。


 その驚きには容姿も含まれていた。

 下腹が出ていて、歯はガチャガチャ。醜悪な見た目に子どものような体躯、臭そう汚そうというイメージとは真逆だったのだ。

 K1選手みたいな引き締まった肢体と六つに割れた腹筋、白い並びの良い歯、微かに漂うお香のような香り。

 丸い顔の真ん中に人参のような鼻はツヤツヤしてるし、ロマンあふれるエルフ耳には金色のオシャレなピアス、そして清潔感溢れるハゲ。

 濃い緑色の肌、上半身は裸体だが下は腰蓑を身に着け、腰には蛮刀とショートソード、小物が入っているように見えるポシェット。

 木製の脛当てを包帯で巻き付けている戦士の姿があったからだ。


「某はゴブリン族が闘士、スゥジゥィヴィー・ロゴ・ヴォヴェルという」


え、なんだって? とか聞き返すのはアレだと考えたユーマは分かったフリをしてうなずく。

「失礼した。オレはユーマだ。ユーマ・トワイライト。よろしくな、七味」

ユーマにはシチミィ・ロゴ・ボボルと聞こえていた。よくある事だ。

 握手を求めてきたからには応じるべきだろう。

 なぜ、よろしくなのかは兎も角として、ユーマは割とマナーを気にする方だった。

「人族の闘士か。職人の手だ」

仕事で重い荷物を運んだりするから手のツラが厚いだけだが訂正はしない。

 何故なら何者か、と問われると答えに困るからだ。

「ほほう? パーティというヤツを組むのじゃな? 我も入れてもらおうかの」

どうやら依頼書の前で、名乗って握手するとパーティを組むという意味らしい。


 ユーマは少し賢くなった!


「我はマウス・トゥ・ヴェサ・エレクトロニカ28じゃ! よろしくの、七味」

にじゅうはち? 変な番号が付いている。製品番号かシリーズ番号か? ユーマは握手を交わす小さな巨人たちを見つめながら首をひねる。

「ヴェサ・エレクトロニカ? 雷峰の古代竜? なるほど覇気を感じるわけだな。28番目の姫君よ」

ゴブリン闘士が疑問を解決してくれる。

 中2病ブフーッとか吹き出しそうになるのを堪えながらユーマは真剣な面持ちで事の成り行きを見つめる。


「あ、私も! 私も仲間に入れてください!!」

みんなの後ろでマゴマゴしていたシスターが激しく主張しだす。

 先の幼女との引っ叩きあいを仲裁し、沁みますよとか言って痺れる薬を塗ってくれたシスターだ。


 いつか泣かしてやる。


「ふむ? その法衣はアウスティリア正統中央教会のシスターか。よろしく頼む」

ゴブリン闘士は博識だった。

「マ・クワ・ウリウリと言います。孤児で、名付け親はシスター長 カミュレス・ミハイルニィニィです! よろしくお願いします!」

ブッ! ユーマは思わず噴き出した。

 ヒドイ名前のオンパレードに我慢が限界を迎えたのだ。


 当然、3人の不思議そうな視線が注がれる。

「悪い。いや、パーティメンバーがこんなに簡単に集まるんだな、って思ったら笑えてきて」

息を吸うようにウソを吐く。


 ユーマは器用な男だった。そしてネタにちょうど良いやとも考える狡猾な男でもあった。


イロモノパーティにしようとした結果、変な奴らが集まりました。

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