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裏庭大爆発事件

「もうすぐでー」

ザクッザクッ

「お湯が出る出る」

ザクッザクッ

「ほいほいさー」

ザクッザクッ


 清楚系巫女改め借金系巫女ミズホがやってきた翌日、朝っぱらから裏庭を掘りまくるユーマ達の姿があった。

 うず高く積まれた土の山。

 麦わら帽子に白いワンピース姿の女性2名が見つめる先には、マウス、七味、ユーマの3人の姿があった。

 町の鍛冶屋から貢がれたスコップを振るいつつ、歌う姿は奇怪であった。

 スコップには、見習い鍛冶師ダンジュウロウの銘が彫られている。

 通称ダンジュウロウスコップ1号~3号だ。

 これから勇名を轟かす予定の鍛冶師が、ドゲザしてユーマに頼み込み納品した逸品である。

 ユーマには力(金)があった。


「お湯、沸きませんね」

ユーマにタカり手に入れた白いワンピース姿のウリウリが嘆息する。

「源泉があるんですか?」

ユーマから貰った白いワンピース姿のミズホが首を傾げる。


 さすがにコスプレっぽい格好で、しかも薄汚れた衣服で室内をウロウロされたくないユーマは、交換ポイントがやたら安かったワンピースをミズホに押し付けたのだ。

 ミズホ曰く“巫女服”は洗濯の後、庭の木の枝で柔らかな風に揺れているころだろう。

 ユーマは割とキレイ好きだった。


「何でも夢と希望が詰まってるんだと。お湯が沸くかもってさ」

汗をぬぐい、小休止を入れに来たユーマが答える。


「あたしも掘りますよ! お代を体でお支払いしなきゃですし!」

ウリウリが顔を赤らめるのが視界に入る。


 いや、キミが考えてるような不埒な事はないからね?

 とてつもない堕神職である。


「言い方をもう少し、なんとか・・・・・・」

体でお支払いという勘違いを生み出すワードを何とかしたい。


 そういうニュアンスでミズホを見やると、ハッとした顔になった。

(やはりニュー〇イプかもしれん・・・・・・)

言葉を交わさなくても意図が伝わる。

 異世界ってすげえ、と思ったユーマは数秒で幻想を打ち砕かれた。


「ああ、申し訳ございません! ええっと、旦那様か主様、どちらでお呼びしましょう?」


 ユーマは膝から崩れ落ちた。

 土が温かい。

 ウリウリの好奇の視線が痛い。


「お、ユーマよ。ギックリ腰か?! 仕方ないヤツじゃのうー」

小休止に来たマウスが汗をぬぐいながら茶化す。


 絶対こいつ分かって言ってるだろ。

 最初の頃と違い、最近のマウスは分かって茶化すことが多くなった。


「そうじゃなー、ユーマはパーティーのリーダーじゃからなー、我もダンナさまとかあるじ様って呼ぼうかのー?」

目が笑っているマウスの棒読み。


「ふむ。ユーマ殿の新しい呼び名ですかな? 某としては“主殿”。これがしっくりきますな」

ゴブリン闘士の七味も汗をぬぐいにやってくると大真面目な顔で会話に乱入してくる。


 こちらは至ってまじめだ。

 茶化しているわけでは無い。

 余計にややこしいのだが・・・・・・。


「よしてくれ。オレはユーマ・トワイライト。それ以上でもそれ以下でもない」

便利な先人の言葉を丸っと使うユーマは狡猾だった。

 これ以上にシンプルな言葉は無い。

 この言い回しを創った人は素晴らしい。


「クヒヒヒ」

マウスがいたずらっぽく笑う。

 やっぱり分かって茶化しているじゃないか! そんな気はしたけど。

「さて、続きを掘らないと」

ユーマはすくっと立ち上がると温泉掘りに戻ろうと踵を返した。

「待ってください! ええっとトワ君!! じゃなくて、ええと、ユーちゃんくん?」

バグったミズホさんが呼び止めようとする。


「よせやい。そんなカワイイ呼び名、合わないぜ」

半身を捻り、振り返るとユーマはカッコいい顔で言い放った。

「そうじゃな。ユーマはユーマのままがしっくりくるのじゃ」

マウスもすくっと立ち上がると青空を見上げながら言い放つ。

「主殿も悪くありませんが、な」

あとに続く七味がダンジュウロウスコップを支えに立ち上がる。


 まるで映画の最終決戦に向かう主人公たちのような絵面であった。

 何のことは無い、裏庭を掘るだけのことであったが。


 ぶっちゃけクエストでは無いのでお金にならない。

 だがしかし、家にお風呂が出来れば、好きな時に入浴できるし、わざわざ大衆浴場にお金を払って入りに行く手間も省けるのだ。

 故に毎日1時間、みんなで裏庭を掘りまくっているのだ。


「あたしも頑張らないと」

ハッと我に返ったミズホが3人の後を追いかける。


「ここは、あたしに任せてください!!」

スッとユーマの脇を通り前に出るといたずらっぽく笑う。

 ヒマワリのような笑顔だった。

「んん、ああ。馬車馬のごとく働いてもらわないと」

ユーマは言い訳がましく言葉を紡ぐとスコップを手渡す。


「お任せください!!」

よく通る凛とした声、スラリとした細身の体に程よい肉付きの手足。

 麦わら帽子を取り、ユーマに手渡すや否や少女が跳躍する。


 黒髪が風に舞い、何もないはずの空中で数回ステップを踏んだミズホが空中5mほどの高さにふわりと浮いた。

 そのまま数秒空中で静止する様はもはや人外のそれである。


 きっと〇空術とか神〇力とかそういうものなのだろう。

 さすがは異世界である。


「ほほう? 小娘やるではないか」

マウスが何か知らないが対抗意識を燃やしていた。

 腕組みをしながら見上げる。

 ユーマと七味もつられて見上げ、愕然とするハメになる。


 そう、ミズホがワンピース姿であることを失念していた。


 それを見上げたのだ。

 ホワイトホール白い明日がそこにあった。


「参ります!!」

スコップを斜めに構え、錬気を練り始める。

 謎の紫色のオーラというか靄みたいなものが少女の全身を包んでゆく。

「はぁあッ!!」

掘り返している地点目掛けて少女が突撃していった。


 ドバァーーーーン!!


 大爆発。

 轟音が響き、吹き飛んだ土くれが辺り一面に飛び散る。

 地面がグラグラ揺れたような気がした。

「おお・・・・・・」

七味とマウスがあんぐり口を開けて感嘆の声を挙げる。


 なるほど。自らにエネルギー的なものを纏い対象を爆殺する技なのか。

 ユーマは爆心地を見つめながら推察する。

 ところで大爆発したんだけど無事なのか? まさか貴重な馬車馬が一回ぽっきりで・・・・・・。


「ひゃぁぁぁぁーーーー!!」

杞憂であった。


 大きくえぐれた裏庭からお湯と共にミズホが噴き出したのだ。

 白いワンピースは見るも無残なボロボロの残骸と化し、白いお肌が露わになっていた。

 とはいえスッポンポンでは無いのが救いである。


「や、やりました!! あたしはできる子です!!」

ドボドボ湧くお湯に流されながらミズホがVサインを決める。

「さすがです! ミズホちゃん!!」

後方でウリウリがパチパチ拍手を送る。


 とりあえず今は喜ぼう。

 そして考えるのは後にしよう。


 服がボロボロになった少女とぐしゃぐしゃに捻じ曲がったスコップ、そこら中に降り注いだ土砂、轟音で集まってきたご近所さん。

 ユーマは眉間にシワが寄っていた。


中の人のお目目がム〇カ大佐状態になってしまったため(眼精疲労と思われる)来週の更新はお休みさせていただきます。


とか言いながらハロウィン用の原稿作ってたりしますけれど!!


いつもご覧くださり感謝感激!!

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