マウスのおうち
「今後の方針はどうすればいい?! 神々(読者)たちよ。啓示を、啓示を授けてくれないか」
※ あとがきに参加方法を記載しています。
「さて、今後の方針はいかがいたす?」
肉をベロりと平らげ、骨を皿に置くと七味が切り出した。
つまりは、安全で牧歌的なクエストをメインで受注するか、血湧き肉躍る戦いに身を投じるか、という事らしい。
ユーマは渋い顔をしていた。
前者だと平穏だろうけれど何というかマンネリ感のある展開ばかりになりそうだ。
かといって後者だと命の危険がある。
(教えてくれ、天上の神々よ!! オレは、どうすれば良い?)
ユーマは心の中で天を仰ぎながら神々に呼びかけた。
きっと道を示してくれるに違いない。
体感、こちらの神々はすぐに応答が無いのは分かっている。
恐らくウンウン知恵を絞ってくれているのであろう。
ユーマは投げ掛けた答えが返ってくるまで待つことにした。
「そうだな。方針もそうだが早急に確認しないといけないことがある」
ちょっと待って、まだ神からの啓示が無い、などとのたまうワケにはいかない。
狡猾なユーマはしれっと話題の方向をずらした。
「みんなどこに住んでるんだ?」
カワセミ亭の一室を間借りしているユーマや教会に住んでいるウリウリは所在が分かっている。
しかしながらマウスと七味は郊外のどこか、という事しか分かっていない。
「我は立派な一軒家じゃ!」
桃のジュースを飲み干してご満悦のマウスがドヤった。
「某は気の向くまま、ですな」
どうやら定住しているところが無いらしい七味。
「みんなのお家を見に行くんですか?」
報告が終わり、報酬とホットドッグを咥えたウリウリが席につく。
「ああ、今後もこのメンバーで行動するなら所在が分かった方が良いと思って」
「なるほど。道理に合っている」
寝坊したマウスを探すのに2時間浪費した七味が激しく同意した。
「それではお宅訪問行きましょー!!」
何故かウキウキし出したウリウリはホットドッグを飲むように平らげると元気よく掛け声を発する。
昼下がりの大通りを南に向かって一行が歩く。
新市街のある北側は高台にあり、なだらかな南傾斜の土地に旧市街が軒を連ねていた。
ゆるやかな下り坂になっている大通りが街中を突っ切り、1つは外の街道に、もう1つは穀倉地帯へとつながっていた。
4車線くらいの幅があり、細かく砕いた石をコンクリートなような何かで固めた道が遥か彼方まで続く。
「こっちには露店が無いんだな」
新市街の路上には屋台や敷物上で色々売られているが、まったくそういった物が見当たらず、ユーマは首を捻った。
「旧市街は道の傾斜の加減で露店禁止なんですよ。留め具が外れて坂道を転げ落ちたら危ないですから」
ブレーキが外れ、坂道を転がり落ちていく屋台を想像し、ユーマは深くうなずいた。
「なるほど。新市街は傾斜がないしな」
路地や通りの端っこで近所の子ども達が遊んでいるのが見て取れた。
舗装された大通りから研磨した石板をはめ込んだだけの道路に変わり、やがて町の外縁の防壁が見えてくる。
高さは2mほどあるものの、城塞の防壁というより大きな石を積み上げただけの不格好なものだ。
道の左右に雑草が生えていて、道路は未舗装。茶色い道に轍が続く。
「我の一軒家は麦畑の近くにあるのじゃ!」
大手を振って先頭を歩くマウスの視線の先には、黄金色の波がうねる麦畑が広がっていた。
黄金の海原のような麦畑に農民らしき人々が見て取れる。
吹き抜ける風を受けて回る風車。
ユーマは、麦の収穫時期が6月~7月だったように記憶している。
つまりは、これから暑くなるのだ。
先頭を往くマウスが街道から外れ、あぜ道を往く。
その先には、どう見ても空き家もしくは倉庫だった木造家屋というか掘っ立て小屋が建っていた。
外観は経年劣化で焦げ茶色になった木の板が張り巡らされ、いくつかある窓には枠だけが残っている。
ドアは・・・・・・強力な力が加えられたのだろう。
蝶つがいだった何かの残骸がサビたままブラブラ風に揺れていた。
「我のおうちじゃ! なかなか風情があるじゃろう!?」
くるりとステップを踏みながらマウスがニッパリと笑う。
「風情・・・・・・」
廃墟だな、と思ったが口に出さないやさしさ。
ユーマは幼女の笑顔を大切にする男であった。
「そうですな。住居というよりは廃墟のようにも見えますな」
七味は、思ったことを率直に言う武人である。
素直な感想を遠慮のえの字もなく吐露。
ああ無情。
「マウスちゃん・・・・・・屋根、無いんですけど・・・・・・」
窓枠から中を覗き、青空がまぶしい室内に対し、ウリウリも素直な言葉を紡ぐ。
「まあ、もっとも先月の嵐で屋根もドアも吹き飛んでしもうたがの」
ケラケラと笑いながらドアだった場所をくぐると草原だった。
床板は?
いくつかの小さい部屋を区切る仕切り板・・・・・・申し訳程度に壁だけはそこに存在していた。
別に廃墟だとか言われてもマウスは気にしないようだ。
鋼のハートは砕けない。
「一体どこで寝てるんだ・・・・・・?」
女の子が廃墟に住んでいる時点でユーマの心はギシギシ痛む。
さらにその上、床板はないし、壊れた食器棚らしき残骸や足が折れたテーブルなどが転がる室内だ。
ベッドだけキレイというワケもなさそうである。
「我の寝床が見たいとな? 良かろう! 刮目せよ! 我の2段ベッドじゃ!!」
一番奥の部屋で僅かにくすんだ床板が残る区画に”それ”はあった。
床に直置きになったワラの山、その上にひっくり返った荷馬車の貨物スペース、そしてワラの山が積み重ねてあった。
「鳥の巣かよ!!!」
思わずユーマが叫んでいた。
「竜の巣じゃ!!!」
マウスも叫んでいた。
ワラで板を挟み、2段ということらしい。
意味、あるのか?
そして例のごとく天井は無く青空に白い雲が流れていた。
「ただちに引っ越そう!! これは家じゃない!!!」
「でも我は持ち合わせがないのじゃ!!!」
食費に消えるんですね、分かります。
読者の皆様こんにちは!
久々にやってまいりました。
読者さんたちの意見で今後のストーリーが変わる回。
ユーマ君たちは、今後どんな冒険をしたら良いでしょう。
特に記述形式はありません!!
コメントを!! コメントをお願いします!!!
※ あと3話はお家事情のお話が続きます。
【パーティの特徴】
・ユーマ
ゴッデスポイントがあれば色々な特殊能力を使えるが、本人はただの現代人。書記係。
・マウス
見た目がプリ●ュアになった武闘派幼女。徒手空拳で戦う以外にブレス攻撃もできる。やたら頑強。
・七味
腰みのに革ジャケットの半裸武闘派。徒手空拳で戦う。蛮刀は飾り。防御薄い。
・ウリウリ
超薄着のプリースト。巨大なハンマーをどこかに隠し持っている。ドM気質だが防御薄い。