ストーンドラゴンが再ポップ
長らく人の手が入っていないらしい。
草はボウボウ、ツタが絡まる古木に奇妙な鳥の声。
所々ぬかるんだ茶色い道がうっそうとした森の奥に続いている。
住民たちが住む区画は、レンガで舗装された道があったが忘れ去られた祠なんて、もはや誰も通らないのだろうか。
「そこの倒木を右に曲がったところが祠なのじゃ」
先頭を往くのは魔法少女もとい衣装がおニューになったマウスだった。
機嫌が良いのだろう。
鼻歌混じりに軽快な足取りだった。
それに草刈りをしたい衝動に駆られるユーマが続き、リディア、リュオと縦隊で進む。
一応、宿でリディアたちとお別れの挨拶を済ませたユーマとマウスだったが、気が良いのか最後まで見送ってくれることになった。
ありがたく申し出を受ける。
「そこに祠が・・・・・・あっ!」
先に右折したマウスが素っ頓狂な声をあげた。
「どうしたんだ?」
ユーマも右折し、そして絶句した。
「なになに? どうしたのよ? ・・・・・・えぇ?」
「ストーンドラゴンじゃん」
先日、女子2人が衣服と引き換えに粉砕した石のドラゴンが復活し元気に闊歩していた。
ズムン、ズムンという足音が低く響き、4足歩行のストーンドラゴンが目的も無く徘徊する。
ドラゴンというより体高が高くなったワニだった。
ドラゴンか、と言われればそうかもしれないが、ワニかと聞かれればワニだろう。
アメジストのような紫色の両目がぎょろぎょろする。
「お、宝石じゃん? 赤子の頭くらいあんな。売れるぜ、アレ」
結構な距離がある中、ストーンドラゴンの目玉がアメジストの塊であることを看破する女装癖アニキ。
「なんじゃと!? 天蓋付きのフカフカベッドが買えるくらいか?!」
意外にも食いついたのはマウスだった。
「アメジストはそこまで売れない」
見て取るように落胆する幼女。
天蓋付きのフカフカベッドが欲しかったらしい。
「どうする?」
「やるか?」
よからぬことを考えているらしい女装癖アニキもといリュオが声を潜める。
呼応するのは戦闘モンキーならぬドラゴン幼女マウスだった。
こちらもよからぬことを考えている顔をしていた。
「え? あたし? え、えぇーと?」
視線の先のリディアは困惑していた。
ゴブリン闘士の七味がいなくて良かったと思う。
いたらいたで、やあやあ我こそはゴブリン族が闘士、なんたらかんたらと名乗りを上げ躍りかかる事だろう。
「やめておこう。中止、ステイ。違う。キャンセル」
ユーマがキリリっとした顔で宣言した。