気付いたら夕暮れ
かくして買い物ツアーで散在させられることも無く、目のやり場に困る女子2人の着替えが完了したのである。
満足してくれたのか、という点は分からぬ。
残ったものは無料5ポイントとリサイクル用にと押し付けられた破れた衣服2セットだった。
片方は腰ミノのようになっているし、もう片方も片袖がなかったり伝線したみたいになっていたり、どう見てもリサイクルショップで引き取ってくれなさそうな代物である。
そもそもリサイクルショップがあるのか、と問われれば分かりかねる、といったところだが。
「雑巾にするか・・・・・・」
用途を失った古着をくるくる丸めるとポケットに押し込む。
とにもかくにも任務完了である。
あとは森の祠から元の地下遺跡に戻れれば良い。
調査依頼には、異世界に続くゲートあり、と記載するか知らんぷりをするかだ。
元の世界が他国との情勢が分からぬ以上「何もなかった」と報告するが吉かもしれない。
「見よ! リディアがかわいいと言うておったぞ!! どうじゃ?!」
スカートを頭から被ろうとし、リディアに阻止され着替えさせられたマウスが部屋に戻ってくる。
イスの上に立つと腰に手を当て、無い胸を張ると放置されていたカーテンでスピリタスを包んでいたリュオが拍手する。
「おー、さっきより別嬪さんじゃんか」
「ぬしよ、見る目があるな? 褒めて遣わす」
幼女は偉そうだった。
「当ったりめぇだ。良いぞ、もっと褒めろ」
何故かふんぞり返るリュオ。
2人がケラケラ笑う中、そっと戻ってきたリディアは華やかだった。
白いハイネックノースリーブシャツの裾には青地のラインが走り、同じく白いミニスカート。
ご満悦なところを見ると後者だったか、とユーマはそっと思った。
おしゃれな服の文化が無いのだろう。
やむなし。
しかし、まずまずニコニコしているところを見る限り、満足してくれているのだろう。
しばし談笑を楽しんでいる間にオレンジ色の光が木々の間から差し込む。
ぬかった! ユーマは愕然とした。
夕方には祠に向かうはずが、もう夕方である。
今から旅支度をして飛び出したら恐らく夜になるだろう。
どうする?!
ユーマは思案した。
「今日はもう陽が落ちるので、明日祠に行こう」
決断は早かった。
「そうじゃな。我は美味しいものが食べたいのじゃ! 行くぞ! 我が友よ!!」
腹ペコドラゴン幼女は脊髄反射で返答。
「タダ飯か? ごっそさん」
リュオの目がキラリと輝いたように見れるが見間違いでは無さそうである。
言うが早いか宿の夕食券と友ことリディアの腕を引っ掴み、マウスが飛び出していった。
寒色系の長い髪が突風のように通り過ぎてゆく。
同じく夕食券を掴むともう1人も駆け出す。
「それはオレの食券・・・・・・」
そう、途中から合流したリュオは宿に泊まっていない。
つまりは宿泊客では無いので食券は配布されていないのである。
誰もいなくなった部屋にユーマの声が虚しく響く。
「仕方ない・・・・・・」
残った5ポイントを換金するとトボトボと食堂街へ旅立っていった。
「安いものがあればいいが・・・・・・」