さわやかな朝、女装癖のある男と
朝取りのケラケラ鳥の卵で作ったスクランブルエッグをつつくユーマとサラダをむしゃむしゃ食べるウェイトレス。
ケラケラ鳥というのは、いわゆる異世界の鶏枠らしい。
地上を最大時速120㎞で走り、50mほどなら飛行もする。
鶏では無いな、ユーマは白目をむいた。
「で、人探ししてんのね。ふーん」
ウェイトレスは仕事上がりだとかで何故か一緒に朝食を食べていた。
「オレじゃなく、途中出会った女の子が探してるんだ」
麦の味がするコッペパンを丸かじりしながら応じる。
「金髪の騎士風のイケメンと紺色のボブカットくらいの髪の女の子、あとは緑色っぽい痩せ型のローグみたいな男の3人だと聞いている」
リディアから聞いたパーティーメンバーの特徴を思い出す。
ローグみたいな男の髪の色だけは、目の前のウェイトレスと同じ色だった。
「・・・・・・そいつだけどよ、水色っぽいポニーテールの男勝りな女じゃねぇか?」
ウェイトレスはもはやオッサンのような喋り口調になっていた。
男勝り、かといわれると微妙だが、快活な少女ではある。そうだろうと思う。
「まあ近いかもしれない」
ユーマはペーパータオルを探すが店には常備されていなかった。
「リディア・ミリアル・シルフィ?」
何かマウスとのガールズトークの時漏れ聞こえたような気がする。
恐らくリディアの知り合いだろうと悟った。
服装などの特徴を告げるとウェイトレスは無言で立ち上がり、店のカウンター内に消えていった。
数分後、緑髪を後ろで縛った痩せ型の男がユーマの前に立っていた。
ノースリーブにチノパンのような姿でポシェットや小型ナイフなどを腰から下げている。
ローグ風の男だった。
「探し人はオレのことだな」
声はウェイトレスだった。
なるほど女装癖があるのか。ユーマは表情に出さないものの深くうなずいた。
「おめぇ、今こいつ女装癖があるのか、とか思っただろ!? 処世術だよ!!」
ローグ風の男リュオは鋭かった。
むしろ心を読むエスパーだった。
異世界はエスパーが多すぎる。
ユーマとリュオが連れ立って宿に戻ると部屋には誰もいなかった。
テーブルの上には、ユーマの書置きに加筆されたものが放置されている。
『遊、に行ってくr』
ミミズが這ったような文字が中途半端に踊っていた。
その下にやたら達筆な文字が書かれていた。
『遊びに行ってきます、マウスちゃんと』
どうやらユーマがしばらく戻らないと思ったらしい。
どこかに行ってしまったことだけは伝わった。
「連れとどこかに出掛けてしまったらしい」
何故か室内を物色しようとしていたリュオに声を掛ける。
「しゃあねぇべ」
謎オブジェの壺の中を覗きながらため息をつく。
「ま、現状急いでもいねぇしどうしようも無いからマッタリしようぜ」
何故かリュオとユーマは連れ立ってお風呂に行くことになった。
朝から露天風呂。
しかも女装趣味の男と。
何も起きないワケも、あった。
湯に浸かり、ホカホカしてきたら風に当たり涼み、また入浴する。
何の意味があるのか、と問われれば時間つぶしとか露天風呂を満喫するためとか言い訳ができるが、特に意味は無かった。
ただ昼を過ぎても帰ってくる気配の無い少女2人を延々と待っているだけだった。
今回出てきている異世界のキャラクターたちは昔々、書いていた読み物の登場人物たちになります。
あの頃はポニテの女の子とかチャライ兄ちゃんが好きだったのです。
今は幼女とかHENTAIシスター・・・・・・おっと(