キノコおじさん達に絡まれる話
と、思っていたこともあったなぁとユーマは大衆食堂もとい酒場の天井のシミを数えながら現実逃避していた。
意味も無く徘徊するのは得策ではない、と思い、人が集まるような場所を探したところ、大衆食堂兼酒場があると聞きつけた。
治安が悪そうなことも無く、ショッピングモールのフードコートのようである。
とりあえずはここ最近、よそから来た旅人みたいなのはいないか聞きこもうとした時である。
「人探しかい? 僕たちこう見えて情報通なんだ」
ユーマは声を掛けてきた一団を振り返ると
キ ノ コ お じ さ ん が7人くらい佇んでいた。
全員が先日消し飛んだマドレーヌ・フォン何某と同じような顔をしている。
誰が誰とか区別がつかない。
ユーマは大きくため息をついた。
「つらいよね。想い人とはぐれたんだろ? 分かるよ」
キノコおじさんAが肩をポンポンと叩きながら語りかけてくる。
別に想い人とはぐれた、とは一言も言っていない。
むしろ何も言っていない。
「はぐれた想い人がアングラ系の施設でムリヤリ働かされているだって?! ひ、非道な」
キノコおじさんBが乗っかってくる。
「働けど働けど謎の借金が増えてゆき・・・・・・」
ゴクリ。
キノコおじさんCが続くとユーマ以外が身震いする。
「彼氏君が助けに来た頃には人身売買され、奴隷市場に・・・・・・」
キノコおじさんDがぽつぽつと語る。
ユーマは天井のシミを数えながら思った。
こいつらアホなのでは、と。
「あぁ? またお前ら来てんの?」
突如、やや男っぽい声色の絶世の美女ウェイトレスがキノコおじさんたちの前に現れた。
キノコおじさんたちが、ひえッと変な声をあげる。
「い、いやね、ここにいる彼が僕たちを誘ったんだ」
目が泳ぐキノコおじさんF。
視線の先にいたユーマはうんざりした声で否定した。
「こいつらに拉致されました」
「んだろうな」
絶世の美女ウェイトレスは後ろ手に持っていた棍棒を振りかざすとキノコおじを駆逐していく。
長い緑色の髪を風に舞い、立派な胸部装甲が揺れた。
「お、鬼女ー! もう二度と来てやんねぇぞ!!」
張り飛ばされたキノコおじたちは店外に逃げ出すと捨て台詞とともの朝日に向かって走り去っていった。
「おお、二度とくんなよ食い逃げども」
ジャバ神族の店員たち、お客たちから拍手を浴びる豪傑なウェイトレスがカラカラと笑った。
「あ、いらっしゃいませぇー」
ユーマの視線を感じたウェイトレスは急にかわいい声になったが、すでにゴリラだという事がバレている。
「あ、無理しなくていいですよ」
ユーマが淡々と話すとウェイトレスが大きくため息をついた。
勝手に話を捏造していくおじさんっていますよねぇ。
あんな感じのキノコたちです。