物理的にてんくうの湯
「予想外である」
ユーマが満天の夜空を仰ぎながら唸った。
「なんじゃ、特に気にすることもあるまい」
マウスが掌水鉄砲で浴槽のお湯をピュッピュッと飛ばしながら応じる。
「気にしたら負け・・・なのよね、きっと」
仰向けにプカプカ浮いているのはリディアだった。
マウス以外はへとへとのグタグタだったので、もはや深くは追及しないし、現実逃避しつつあった。
男女3人が仲良く(?)25mプールの3分の1くらいの浴槽に浸かっていたのだ。
洗体を済ませたら水着に着替えてください、という謎の看板に首を捻ったのが約5分前。
男女別の洗体スペースから続く、たった一つの露天風呂は混浴だった。
ユーマとリディアは、声にならない声を上げかけたが、お互い水着である。
大人の落ち着きを見せるとそっと入浴タイムへとしゃれ込んだ。
心の中では台風直撃、風速30mの暴風が吹き荒れていた。
最初にユーマに会った時もよくよく思い出してみればパンツ一丁だった。
何をいまさら、リディアの心は静寂を取り戻した。
スク水幼女を日常的に見ているが、妙齢の女子の水着姿は刺激がきつかった。
素数を数えよう。ユーマの心から台風が去っていった。
「穏やかな気分だ。まるで天国・・・・・・」
ユーマはトランスしていた。
「自然が多いとこって気持ちいいよね!」
巨木が何の木なのかは分からないが、お湯に混じって木の香りがした。
だだっ広いお風呂を幼女が泳ぐ。
他の客は見当たらず、誰も止めないのでマウスはホワホワしながら満喫していた。
「目標達成。次はどうしよう?」
頭の上に水色の饅頭が乗っているように見えるが髪の毛である。
リディアが夜空を眺めながら呟く。
「オレはあいつと森の祠を目指そうと思う」
同じく夜空を見上げたままユーマが返す。
「そっか。あたしも迷子の仲間たちを探さなきゃだね」
一呼吸おいてから呟き返す。
よくよく考えたらユーマ達が祠から元の世界に帰れたら、彼女は1人でさ迷うことになる。
また変なキノコおじさんに襲われる可能性もあるわけだ。
ユーマは返事をせずに考えた。
うんと考えた。
熱さで頭がオーバーヒートしそうになったが、ひたすら考えた。
そして、
「一緒に行かないか?」
まるでナンパだった。
「ナンパ? うーん、まあ、そーだなー」
きょとんとした後、リディアは考えた。
悪くはないけど仲間たちに悪いなぁ、と。
「ああ、すまない。一緒に探しに行かないか。その、キミの仲間たちを」
ユーマは慌てて言い直した。
色々と文章を端折りすぎた。
「なあマウス。人探しに寄ってもいいだろ?」
リディアの返事を待たずにお風呂でシンクロナイズドスイミングをキメるマウスに声を掛ける。
マウスはカッコいいポーズのまま、カッコよく返答。
「ふふ、仲間の頼みとあれば尽力せぬわけにもいくまい!! 我に任せるのじゃ!!!」
「ということになった」
ユーマは強引な男だった。
「いいの?」
リディアは複雑な表情だった。
「そういう事になったのじゃ」
マウスがカッコいいポーズのまま水平移動してくる。
原理は不明だが、幼女も大概強引な性格だった。
「ありがと」
その後、心ゆくまで露天風呂を楽しみ、そして全員が茹でダコのようになった。
すっぽんぽんも見慣れてしまうと普通に思えてくるものです。
逆にはだけている方がero(以下略