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キノコに襲われる話

「ここは・・・・・・?」

 夕陽が辺り一面をオレンジ色に染めていくころ、少女が目を覚ました。

 隣でうたた寝をしているユーマを見上げ、辺りを見渡し一言。

 浅い眠りから呼び戻されたユーマが隣を見る。

 若草色の瞳の少女がいた。

「ここは・・・・・・」

 ユーマは首を捻る。

 どこだろう? 遺跡の床が抜けた先だったと思うが少なくとも南国の島だ。

 少女がじっと見つめる中、ユーマははたと手を打つ。

「わからん!」

 シンプルイズベスト。これ以上ない最適な答えだった。

 しばし沈黙の後、少女が笑った。

「一緒に迷子ってことね。アンタが助けてくれたの? あたしはリディア。ありがとね」

 勝ち気な性格だ。ユーマは思った。

 リディアと名乗った少女が握手を求める。

「オレはユーマだ。ユーマ・トワイライト。大したことはしていない」

 ロマンチックな夕陽に照らされたユーマは人生で一番カッコいい顔をしていた。

 ただしパンツ一丁だという点を除けば完璧だった。


 完全に日が落ちる前に2人は草原を島の中央に向けて歩いていた。

 というのもサイズのおかしい木々が生えているあたりを気球みたいなものがゆっくりと飛んでいたからだ。

 木の枝から隣の枝にド派手な赤い気球が見え隠れする。

 少なくとも人工物だ。

「行こう」

「行こう」

 そういう事になった。

 近付けば近付くほどサイズ感がおかしくなってくる。

 まるで東京タワーみたいなサイズの木が生えているのだ。

 側面にらせん状の外階段が付いていたり、はしごが掛かっていたり。

 枝と枝の間を気球やロープウェイみたいなものが走っている。

 ファンタジーだな。ユーマは唖然とした。

「ツリーフォーク? 初めて見た・・・・・・」

 樹上を仰ぎ見るリディアが感嘆の声をあげる。

 ユーマの脳裏にドラ●エの世界樹が浮かんだ。

 きっと中にダンジョンがあるんだろうなと思いを馳せる。

 大木の根元にはキノコ型の家? 祠? が数軒立って・・・・・・いや、生えていた。

 真ん中がくり抜かれて、木製のドアが付いているのだ。

「キノコの家ね。素敵」

 リディアがあちこちきょろきょろ見渡しながら感嘆の声をあげる。

 家らしい。


 ガチャ


 そんなキノコハウスのドアが開き、中から服を着たキノコが現れ、ユーマ達を凝視する。

 キノコが手に持っていた鍋が地面に落ちる。

 傘の下、柄の部分にゴマみたいな目が二つ、軽くとがり、途中から歪んだ鼻、半開きのアヒル口が付いていた。

 バケモノだ!?

 瞬間的に身構える。

 もちろん身構えるだけだ。次に取れる最善手は右後ろにいるリディアの腰を引っ掴んで全速力で遁走するのみだ。

 ユーマは戦闘民族では無かった。

「あああッ!!?」

 キノコが吠えた。

「スゴイ! 普通の人間だ! エルフじゃない!? スゴイ!!」

 立て続けに吠えた。

 そして脇に抱えていたキノコの束を取り落とす。

 極度に興奮したキノコマンがぴょんぴょん飛び跳ねた。

 胞子が傘からバサバサと降り注ぐ。

 若干、黄色い胞子が風に乗って辺りに広がっていく。

「スモークだ!!」

 ユーマは反射的に飛びのくとリディアの腰を掴み、逃走を試みた。

 ダメだった。

 驚くべき俊足で興奮したキノコマンが飛び掛かってきて、圧し潰された。

「ぐえー」

 ユーマはカエルが潰れたような声をあげ、胞子を吸い込むと意識が朦朧としていった。

 薄れゆく意識の中、リディアが悲鳴をあげ、華麗な回し蹴りをルパ●ダイブを仕掛けるキノコマンに放つ絵面が見えた。

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