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幼女とゴブリンとHENTAIシスターと

「さあ! 下水掃除に行こう!! かんたんな掃除をするだけで1人金貨10枚!」

「スク水一丁の幼女でも腰ミノだけのゴブリンでもできるカンタンなお仕事!」

 ユーマは爽やかに笑うと依頼書をテーブルの上に置く。


 異世界に来てから初めての依頼クエストである。

 ただ掃除するだけで1万円相当。

 ツヤツヤの黒髪が一段とツヤツヤしていた。


「いやじゃ!! 我は行かんのじゃ!!」

「マウスゥ!?」

 激しく首を横にブンブン振ると緑色のポニーテールが鞭のようにビュンビュン左右に振り回される。

 身長150㎝、年齢不明、見た目は良くて中学生。

 スパッツ型のスク水姿にヒラヒラフリルが付いているフレアスカート、古代ギリシャみたいなサンダル姿の幼女。

 名をマウス・トゥ・ヴェサ・エレクトロニカ28、通称マウスという。

 ネズミではない。

 エルダードラゴンとかいうドラゴン種で知見を広げるため人化して人里に降りてきているらしい。

 サファイアのような青い目に健康そうな小麦色の肌。

 典型的な“のじゃ""ロリ口調であるのはお約束なのか?

 なぜ幼女体型なのか?

 なぜユニタードタイプのスク水姿なのか?

 誰も聞かないし、本人も語らない。

 ただ出会った時からロリだったし、のじゃロリだった。

 尾てい骨の辺りは布に穴が開いており、鱗でおおわれた尻尾が出ていた。

 背中にも大穴。翼が出てくるらしい。


「某も遠慮したいですな」

「七味もなんで!?」

 眉間にシワを寄せて、顔の前で両手で×マークを作るのはゴブリンの七味だ。

 トウガラシでは無い。

 赤いのは目だけだ。

 正しくは、スゥジゥィヴィー・ロゴ・ヴォヴェルだったかと思うが、シチミィ・ロゴ・ボボルと空耳した結果が今だ。

 引き締まった肢体、六つに割れた腹筋、丸い顔の真ん中に人参のような鼻。

 ロマンあふれるエルフ耳、そしてハゲ。

 濃い緑色の肌に獣皮でできたジャケットを羽織る反面、下半身は腰蓑。

 最新のファッションらしいが、どこの最新なのかはよく分からない。

 本人曰くゴブリン族の闘士だそうで、理由は語らないが一応冒険者登録されているらしい。

 ひょんなことからパーティーを組むことになった。

 身長はマウスとあまり変わらないところを見ると150cm前後だろう。


「なにと戦うというのじゃ! ドブネズミかスライムくらいしかおらんじゃろうて!」

「右に同じ。某たちは戦士であるのであって清掃員ではありませんぞ」

 拒絶反応を示す2人とは別に興奮を覚えるHENTAIもいる。

「私は構いませんよ。ドロドロとした汚物、まとわりつく粘着物・・・・・・あぁ」

 女神官だとか女僧侶だとかを体現するようなテンプレじみた見た目の少女が鼻息を荒くする。

 さらさらで純金のようなロングヘアーを後ろでまとめ、白と金のラインが入った青い法衣姿の美少女。

 海原のような青い瞳が下水のように濁っているように見えるのは気のせいだろう。

 陶磁器のようなきめ細やかな白い肌に黒タイツに覆われたカモシカのような美脚が眩しい。

 年齢18歳、身長162cmくらい、目測Dカップくらいあるだろうか。見た目は完全なる美少女であった。


 アウスティリア正統中央教会という世界最大の宗教団体に所属するシスターだけあって慈愛に満ちている。

 ただし何故か薄い本みたいな展開を期待する傾向がある彼女の名は、マ・クワ・ウリウリという。

 育ての親のシスター長が付けたらしい。

 大変独創的だ。

 愛称はマーちゃんかウリウリが良いと本人談。

「聖職者とは思えないような不穏な発言・・・・・・!」

「ユーマ様、聖職者と穢れは切っても切れない関係なのです。そう、私は正気です!」

 ぐっと握りこぶしを作るとムンムンと変な掛け声を掛けた。

(いかん、シスターとは名ばかりでマ・クワ・ウリウリ・・・・・・こいつは重度のHENTAIだ・・・・・・)


「下水掃除、安全だと思うんだけどね」

 いわゆるギルドのクエスト的な依頼書をテーブルに置くとマウスと七味が嘆息する。

「むう・・・・・・」

「ユーマ殿も戦士であろう? 汚物と戦うなど本望ではなかろうて」

「いつからぬしは配管工になったのじゃ・・・・・・」

 ユーマは戦士でもなければ配管工でもない。

 言うなれば、ただの一般ピーポー。

 現代から何の因果があってか異世界アラドにすっ飛ばされた。

 自宅のトイレごと。


 ショートヘアーの頭をポリポリかきながらそれっぽい言い訳を探す。

 イケメンでもないし、ブサメンでもない。

 身長179cmほどはあるが特にムキムキマッチョマンでもない。

 THE 普通。

 そんなユーマは非戦闘員であり、神々(読者)を喜ばせる物語を書かないと金銭的に詰む状況にある。

 武闘派のマウスと七味は防御をかなぐり捨てたような格好だ。

 シスターに至ってはインナーにタイツ、法衣以外、たぶんパンツすら履いていないペラ紙だ。


 戦闘系のクエストなんてやったら死ぬじゃん。

 などと言ってみようか、と逡巡するが“やってみないと分からない”とか言いそうだ。

「う、ん・・・・・・そのね・・・・・・」

 返答に困り、適当な相槌を打つ。

 そうだ。

 トイレが詰まった時の悲劇を語ろう。

「そう、だなぁ・・・・・・便所が詰まるとするだろう?」

「ええ。お花畑が」

「お花畑・・・・・・」

 ウリウリ曰くトイレはお花畑らしい。


「すると汚物が溢れるワケだ。どばーっと」

「なんと!」

「下水も同じで一見無関係そうな掃除も怠ると汚物が溢れるワケ」

 トイレも下水道と似たようなもんだろ。

 ユーマは割といい加減であった。

「ど、どぱーっと?」

「そう。みんなが楽しく暮らしている町中が阿鼻叫喚。汚物地獄に生まれ変わる」

「ばっちいのじゃ!!」

「そうだろう? 俺たちが受けようとしているクエスト、依頼はみんなの平穏を守るためにあるんだ」

 いかにも詐欺を働きそうな口ぶりである。

 しかしユーマは至ってまじめであった。

「・・・・・・!」

「戦士とはなんだ? 武器を振り回して戦う事だけが戦士か? 間違っているぞ! 戦士とはみんなの平穏を守るために武器を手に立ち向かう者だ!!」

「!!!」

「さあホウキとチリ取り、金バサミを手にし、いざ行かん! 地下下水道!!」

 手ぶり身振りを交えて力説。

 やや早口でまくし立てたあとには静寂が広がっていた。

 しばしの沈黙をもって、マウスが驚きに満ちた表情を向ける。

「ユ、ユーマよ・・・・・・おぬし、カッコいいの・・・・・・」

「ユーマ殿、よもやそこまで悟りを開かれていようとは・・・・・・! このスゥジゥィヴィー・ロゴ・ヴォヴェル、お供いたしますぞ!」

(シィジィミィー・・・・・・くッ・・・・・・いつ聞いても聞き取り辛い)

「分かってくれたか! シヂミィ!」

 何が分かったのかよく分からなかった。

 分からなかったが、勢いで納得した感じがしないでもない。


「はいはーい。私も行きますねー」

「む。むむむ・・・・・・みなが往くというのであれば仕方ないのー。このマウス・トゥ・ヴェサ・エレクトロニカ28ちゃん様も付いていってあげるのじゃ!」

「助かる。では、みんな。町の平穏を守るため行こうか!」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  のじゃ系ヒロイン好きです。 [気になる点]  スパッツ型のスク水ってなんだよ(哲学 [一言]  頑張って下さい。
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