第二話 夢でだけ会いたい人間
卯乃原叶は、とにかく体の大きな男だった。
例えば、もし俺が目の前に立ったとしたら、俺の目線はヤツの胸の少し上辺りに来るだろう。
そのまま話をしたとすると、声変わりをとっくに済ませた低い声ははるか上空から降ってきて、俺のか細い声なんて鳩尾にも跳ね返されてしまう。
ただ、目の前に立つとか、そんな事は現実にはまず起こりえない。
起こりえないはずだった。
なぜなら、彼は学校でも有名な、なんと言いますか、うん、やんちゃ坊主でして、俺はと言うと、鳥が羽ばたいただけで吐いた事もある(確かにタイミングもあった)、真性のヘタレ高校生だからだ。
普段同じ教室ですごしていても、立ってるラインが違う。
見てる視線の高さが違う、付き合ってる友達だって違う。
いわば住む世界が違うのだ。
……こう言ってしまうと、どことなく、今の状況に嫌なトッピングが加わったような気もするが、それはまあ良い。
とにかく、卯乃原はマカオタワーみたいに背が高くて、カラスみたいな真っ黒なボサボサの髪に、鷹のような鋭い目を光らせていて、恐ろしく喧嘩っ早く、その為腫れ物を扱うように扱われている、いわば問題児の鑑。本年度のヤンキーオブザイヤーを受賞しそうな男だった。
そんなヤツが、あろう事か告白をしてきたのだ。
思考が停止して、遥か宇宙を夢想したとて、俺を一体誰が責める事ができよう。
一人ポツンと残された俺は、イマイチ現実味のない自分の状況を、いささか古典的な方法で確認した。
「………………痛くない」
そりゃヘタレですから。
痛くなるまで頬っぺたを引っ張るなんてマネ、土台無理な話なわけで。
読んでくださって、ありがとうございます。
出来れば続きも読んでやってください。
それでは。




