表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

第十二話 カバーの下

 屋上の扉を開くと、強い風が吹き込んできて、俺は軽く目を瞑った。

 煽られる髪を押さえながら、視線を目の前にやる。

「よう」

 風の音に消されるくらいに小さな声で、卯乃原は言った。

「ども」

 俺も返したけど、これは本当に風に吹かれたかもしれない。

 昼休み。

 俺は川添の昼の誘いを断り、直ぐに屋上へと向った。

 卯乃原は、いつものように昼休みに入ったとたんに教室から姿を消した。

 今朝、どこで待ち合わせという事もしてなかったけど、なにか考える前に足が屋上へと向っていた。

 そして、卯乃原はいた。

 昨日と同じ、金網にもたれかかるように座って、何か音楽を聴きながら、本を読んでた。

 卯乃原はイヤホンを外しながら立ち上がった。

 一つ頷いて、それを見て俺も頷く。

 扉を閉めて、足を進めた。

 金網の前まで来て、隣に並ぶ。

 そこからは学校の外の景色がよく見えた。

 山、海、家、工場、煙突。

 金網を掴んで背伸びをすると、更に向こう側が見える。

 踵をつけると、煙突から伸びる雲の根っこが見えた。

 前置きの必要は感じなかった。

 それでも、俺は一つ気になっていた事を口にした。

「それさ、何読んでんの?」

 卯乃原がいつも読んでいる文庫本には、カバーがついていた。

 近くの書店の名前が書いてあり、白地に青色で植物のツルみたいな模様が描かれている。

 隣でガサガサ音がして、カバーの外された本がすっと差し出された。

 それを受け取って、タイトルに目を通す。

 ――蟹工船。

 言わずと知れた、小林多喜二の名作。

 確か日本のプロレタリア文学の代表作とか言われてるらしい。

 現代の若者の共感を得たとかで、一時凄く売れたそうだ。

「意外とミーハー」

「うっせ」

 ポツリと呟いた俺の手から、蟹工船が消えた。

 卯乃原は素早くカバーを掛けなおし、それをポケットに入れる。

「……」

 心なしかそっぽを向いた卯乃原の顔が赤い気がする。

 もしかして、照れてる?

 前置きは必要ないと思ってたけど。

 でも、聞いておいて良かったのかもしれない。

 そんな風に思いながら、深く空気を吸った。

 金網から手を外して、足元を確かめる。

 灰色のコンクリートが確かな硬さで足の下にあった。

 顔を上げる。

 いや、卯乃原の顔を見上げた。

 噛み付いてくるみたいな、真っ直ぐな視線が返ってくる。

 視線を受け止めながら、俺は自分でも不思議なくらい落ち着いていた。

 口を、開く。

「なあ…………今どっちなわけ?」

進捗状況。

現在十五話まで書き上げています。

最終的な展開で少し悩んでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ