ウイド将軍とカンザ、蹂躙される(1)
古いパソコンで投稿してみました
「フハハハ、素晴らしい戦果だ。この大英雄たる俺様を裏切り、捨てた神罰が下ったのだ。そう、神罰。そうだ、この俺が神との契約ができないわけがない。思い出したぞ。ひょっとすると、宝物庫に何かあるかもしれないな」
既に主を亡くした王城。実はカンザにとってみれば、隠し部屋のありかさえ知っている庭の様な物だ。
これは、いつかはナタシアを娶った時の為、そして自らが王となった時の為に、こっそりと情報収集をしていた結果だ。こういう所だけは抜け目がない。
迷う事なく宝物庫に辿り着き、中に入る。
もちろん解錠の方法も既に入手している。
この場所は、いまだワウチ帝国の面々に荒らされていないので、奇麗なままだ。
中に入ったカンザは、邪魔が入る可能性を排除するために、一旦扉を閉めて、じっくりと宝物庫の中身を調べる事にした。
解錠の方法を知っていても、通常時は常に衛兵が警護している。
その為、実際に解錠して中に入るのはこれが初めてのカンザ。
すでに聖武具は全てなくなっているが、準ずる武器は多数ある。
しかし、今必要なのはそんな物ではない。
神との契約を行える魔導書なり、秘術を書き留めた書物なりをひたすら探している。
やがて、一つのスクロールを見つけたカンザ。
隻腕故に、地面に置いてゆっくりと広げると、幾つかの注意書きが目に留まる。
要約すると、
・これは一度のみ発動できるスクロールである
・神との契約を行うためのスクロールである
・神の召喚が成功しても、契約できる保証はない
とある。
実は、このスクロールだが、ヨハンが現世に召喚された後に、超常の者達が集結して作った物だったりする。
超常の者達は、自らの力で地上に顕現した際には、その力の影響で世界が滅亡しかかった。
その為に、常に異空間で生活をしていたのだが、<統べる者>によって召喚された時には、地上に一切の影響を与える事は無かったのだ。
この結果をもとに、地上の者達からの呼びかけに応じれば、超常の者達の力が地上に影響しないのではないかと考え、超常の者達を呼ぶ事ができるスクロールを造ったのだ。
だが、長きに渡り試行錯誤し、ようやく一つできたのだが、どのように地上にスクロールを届けるかで悩んでいたところ、アクトが召喚されたので、出来上がっている一つのスクロールを持たせた。
そのスクロールが、ソレッド王国の宝物庫の奥深くに眠っていたのをカンザが執念で見つけたのだ。
おそらく、既に亡き者になっている国王すら、このスクロールの存在に気が付いていなかっただろう。
「やはり俺は神に愛されているんだ。これさえあればこの腕も治る。そして、フフフ、ワウチ帝国も俺の手に入れる事もできるのだ。ハハハハハ」
そう言いつつ、スクロールを広げるカンザ。
やがて全てのスクロールが開くと、見た事もない立体の魔法陣が描かれているのが理解できる。
魔法陣があると理解はできるが、あまりに複雑で精密なため、中身までは一切理解する事はできない状況だが、カンザはそこに迷うことなく魔力を込める。
そして、目が開けられない程の光を発した後に現われたのは……
「うが~!!キグスタ、なぜ貴様がここにいる!!!」
そう、ヨハンを従えたキグスタが現れたのだ。
もちろん、このスクロールではキグスタを召喚する事は無い。
実際には超常の者の誰でも良いのだが、カンザが強く願ったのは、最強の神だ。
とすると、ヨハンが召喚される事になるのだが、すでに虫型魔獣で全ての情報を得ているキグスタ一行が先手を打った。
ヨハンは召喚を拒否したが、そのままキグスタに命じられた通り、自分とキグスタをカンザの前に転移させたのだ。
「ご挨拶だなカンザ。俺はお前に何度も忠告したよな?既にお前にかける情けはない。覚悟するんだな」
「ま、まて、待ってくれキグスタ。俺はお前達に手出しはしていないぞ」
実際にカンザはキグスタに対して攻撃を仕掛けていないので、必死で言い訳をするカンザ。
「お前、本当にその頭には脳みそ入ってんのか?それとも俺達の力をバカにしてるのか?お前程度の行動は、全て筒抜けなんだよ」
「く、だが、何故神の召喚スクロールでお前程度が出てくるんだ!ぐぎゃ…」
いつの間にかカンザの後ろに現われている、まるで付き人のような下級悪魔が、カンザの頭を無造作につかんで地面に叩きつけた。
「は~、本当にバカだな。ここにいるヨハンが神なんだよ」
「ば、お前程度が神を従えているだと?ふざけ…ぐあ~」
下級悪魔の前で暴言を吐いたので、次は、以前と同じように顎を握りつぶされたカンザ。
既にこれ程の傷を癒せるポーションは、この宝物庫には存在しない。
以前であればこの宝物庫に潤沢にあったのだが、さんざん、この馬鹿が使ったからだ。
そして、少しだけ残っている少々質の落ちるポーションに関しては、ヨハンによって、ただの水に変えられている。
キグスタとしては、まあ、喉を潤す事ができるから、喜んでもらいたいものだと思っている。
「おみゃへなんへ、へいほふのひからへつふしへやう」
カンザが何を言っているのかわからないが、ヨハンが通訳してくれた
「我が君、どうやら帝国の力でつぶしてやる、と言っているようです」
キグスタはカンザの呻きをようやく理解することができた。
と同時にこの言葉を聞いて、ここに来ているワウチ帝国の面々が、グリフィス王国に攻め込むつもりである事への対処も、同時にしようと思い立ったのだ。
「ヨハン、ここにワウチ帝国の…ごめん、名前を忘れたけど、将軍を連れてきてくれるか?ここでカンザと共に裁こうと思うんだ」
「素晴らしいです。流石は我が君。承知いたしました」
ヨハンが笑顔で了承した瞬間、
「なんだ?ここはどこだ?宝物庫か??無意識に何か条件を満たして転移でもされたか?フム、なかなか豪勢な宝の山だな」
ウイド将軍がキグスタ達の前に転移させられてきたが、残念ながらキグスタ達と逆の方向が見える位置に立っているので、キグスタ達の存在に気が付くことなく、宝物庫の中身に釘付けになっている。
「ふひほほの」
カンザが、必死で助けを求めるように話す。
「我が君、今回は、ウイド殿と言っています」
さすがのキグスタも、この状況でカンザが言うセリフ程度は予想できていたのか、ヨハンの通訳に笑顔を向けるだけだった。
「カンザ殿、どうなされた?貴様は悪魔か?なるほど、その悪魔の手によってそのような状況になっているのですか。しかし、なぜこんな場所に悪魔が?」
下級悪魔程度であれば恐れる必要はないとばかりに、余裕を見せつけるウイド将軍。
実際、休む間もなく多数の国に戦闘を仕掛けている国家に所属している将軍だけあって、戦闘能力は極めて高く、下級悪魔でも討伐することは可能な実力を持っている。
副ギルドマスター補佐心得
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