カンザと三人の決別(3)
夕方にもう一話、投稿させて頂く予定です
どれほど必死で、極度の緊張を強いられつつ戦闘を行ったか理解できるわけも、理解する気もないカンザは、三人が帰ってくるなりこう言った。
「やっと帰ってきたか。本当にグズだな。当然獲物は有るんだろうな?」
いつもの調子で三人に話すカンザ。
だが、当然三人はカンザの言葉には耳を貸さない。
家の中から外の様子に注意を払い、魔獣が接近していないかを再度確認している。
魔獣のレベルアップに伴い、キグスタの家自体も危険になっている可能性があるからだ。
実際は、キグスタの家を破壊するような行動自体を、ソレイユが魔獣に許可するわけがないので、引き続き安全ではあるのだが……
もちろん彼等にはわからない。
「おい、無視するな。早く獲物を出せ。全く、使えない奴らだ」
三人は、今の時点でこの家が安全である事を確認すると、カンザと向き合う。
もちろん三人がカンザ一人と対面する位置だ。
そして代表してホールがカンザに容赦のない一言を告げる。
「カンザ、お前の横暴さにはホトホト呆れた。しかも、キグスタのあれ程の力を見せられた後でも、悪魔を召喚して攻撃しようとするその頭の悪さ。最終的には召喚した悪魔に脅されるんだからつける薬がない。この際はっきり言っておく。もう俺達はキグスタに一切逆らわない」
「なんだとホール!お前、何様だ!!」
カンザにしてみれば、飼い犬に手を噛まれた気分になっている。
キグスタ相手に対して、自分と同様に惨く見下し、そして下級悪魔の生贄にする事を喜々として実行した同じ穴の狢。
そんな面々が、高貴な血筋で英雄と呼ばれるにふさわしいと思っているカンザに対して反旗を翻しているのだ。
「お前ら、どれ程この俺の世話になったと思っているんだ。それに、忘れているようだがな、お前らもキグスタを散々見下し、命を取ろうとしたんだ。それも最悪の状況でな。俺なんかより同郷と言う立場を考えると、お前らの方が余程つける薬がないだろうが!」
痛い所を付かれた三人は一瞬怯むが、このままではキグスタの逆鱗に触れてしまう恐れがあるので、引き下がる訳にはいかなかった。
「そんな事はわかっているわよ。でもこれからはキグスタには絶対に手出しはしない」
「フラウの言う通りよ。あんなのを相手にしていたら、命がいくらあっても足りないわ」
「そう言う訳だ。俺達は今後一切キグスタに関する事から手を引く。どうしてもやりたきゃ自分一人でやるんだな」
話はこれで終わりとばかりに、三人は部屋から出て、異なる部屋に移動してしまった。
「く……がぁ~!」
怒りが収まらないカンザは叫びまわるが、抑える者も、同意する者も一切いない孤独な状態が続くだけだった。
そして……落ち着きを取り戻した頃に、ようやく食料が分け与えられていない事に気が付いたカンザ。
三人がいる部屋の前まで移動し、ドアを開ける。
隻腕であるが故、どうしてもぎこちない開け方になってしまうのだが、カンザとしては、欠損を治せる魔法がある事は実体験で理解しているので、何れは元に戻るだろうという、何故かこの部分だけは楽観的に考えていた。
「おい、お前ら食料はどうしたんだ。狩りに行って来たんだろうが?」
すると、三人は呆れたような、そして疲れたような表情を見せる。
「今回の狩りで分かった事がある。キグスタ達が言っていた魔獣のレベルアップは事実だと言う事だ。つまり俺達は……今後食料入手の為に魔獣を狩るのも命がけになると言う事だ。そんな貴重な食糧を、お前如きに分けるわけがないだろう?」
「そうよ、今までさんざん威張り散らしていたんだから、自分の分くらい自分で準備しなさいよ」
「ホールとフラウの意見に大賛成です。誰かのせいで万が一の時に使えるはずだった最後のポーションも使ってしまったのですから、自分の分くらいは自分で準備してください」




