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カンザと三人の決別(2)

 キグスタの声を聞き、呆然とするカンザ一行。


 カンザ一行は、今までのキグスタの甘い性格を知っているので、どこかで自分達は許される……と思っている部分があったのだ。

 しかし、そんな甘い考えは脆くも崩れ去った。


「我が君の仰る通りですな」

 

 ヨハンが同意すると、音もなくカンザの右腕は肩口から消失した。

 アクトによる回復を無効にしたのだが、やはり若干甘いのか、痛みもなければ出血もない状態ではある。


「我が主、魔獣のレベル上昇完了いたしました」


 すかさず、この場に同行してきている獣神ソレイユが、魔獣の強さを変えた事をキグスタに伝える。


「そ、そんな事が……」


 簡単に魔獣の強さを変えたと言ってのけたソレイユに驚愕するカンザ一行。   

 しかし、今までの隔絶した力を見せつけられては信じざるを得ない。


「これで一応の罰は終わりかな。おい、カンザ。何かしたければすれば良いぞ。だが、俺達に直接害を与えるような行動であれば、更なる罰がある事だけは肝に銘じておけよ」


 最後にダメ押しをしてこの場を去るキグスタ一行。


 そして、キグスタの家に残された隻腕のカンザとメンバー達。

 キグスタ一行がこの場から消え、かなりの時間が経過してから、ようやく我に返ったカンザ一行。


「クソが……」


 涙を浮かべて悔しがるカンザだが、既に自分がキグスタに直接手出しする事は諦めている。

 ここまでされないと理解できない残念なカンザではあったが、本当にようやくキグスタの力を嫌でも理解する事が出来たのだ。


「どうすんだよ。魔獣を強くしたって言ってたよな」

「そうよ、今でさえかなり危険な状態で狩りをしていたんだから……」

「一度逃げ道を確保しつつ戦闘し、状況を確認するしかないでしょうね」


 カンザを完全に無視した状態で会話を進めるホール、フラウ、リルーナ。

 今回、彼らの目の前で行われたカンザの処罰を見て、この三人はこのままカンザの傍で活動をしていると、わが身が危険に晒されるとようやく気が付いた。


 何やらブツブツ言っている隻腕のカンザを放っておき、恐る恐る貴重な武具を手に持って外に出る三人。


 この武具が壊れてしまえば、もう武具はない。

 仮に武具が無くなった場合、辛うじて戦闘できるのは<拳聖>のホール、そして魔法の威力が大幅に落ちてしまうが、<魔聖>のリルーナの二人となり、フラウは何の力にもなれないだろう。

 いや、身体能力を生かした陽動は可能だが、攻撃されてしまえば反撃する術を持たない。


 そんな事は百も承知の三人、ホールを先頭にして慎重に歩を進めると、今まではある程度余裕をもって戦闘する事ができていた魔獣を探し続け、ようやく発見する。


 馬のように見えるが、尻尾が二本あるれっきとした魔獣、ホルトス。

 上位スキルがあり、聖武具で戦闘を行えば油断していても問題ない相手ではある。

 しかし、今は聖武具が無いうえに、キグスタにより魔獣のレベルが上がっているはずなので、まずは辺りの状況を再確認している三人。


 もちろん他の魔獣がいないか、逃げ道は確保できているか……選抜メンバー初期のころに散々叩き込まれた事を実行しているのだ。


 ようやく全ての確認が終わり、覚悟を決めて戦闘を開始する。

 先ずはホールが一気にホルトスとの距離を詰めて、最大の一撃をお見舞いする。


 しかし、ホルトスも素早く反応して体を捻り、致命傷は回避していた。

 しかも、お返しとばかりに捻った体の勢いのままホールを蹴り飛ばした。


 この時点で、今までのホルトスとは大きく異なる力を持っている事を理解した三人。


 辛うじてガードしたホールだが、少なくないダメージを受けている。


 だが、ホールは一人ではなく三人で攻撃をしている。

 残りのリルーナとフラウも、体勢の崩れているホルトスに向かって遠距離からの魔術と、連携を取るように隙を見て剣撃を加えている。


 ホールも痛む体に鞭を入れて攻撃に参加する事で、ようやく討伐に成功した。


「これは……ホルトス一匹でこれほど苦戦するのか」

「本当に魔獣のレベルが上がっているのですね」


 ホールとリルーナの呟きに、フラウは無言だった。

 しかし、彼女も魔獣の脅威度が格段に上がった事は肌で感じており……つまり、今後の生活を考えると、絶望感からか、何も話す事ができなくなってしまっているのかもしれない。


 とは言え、必死で狩った獲物である為、リルーナの収納魔法でキグスタの家に持ち帰る。

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