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超常の者(1)

 ワリムサエの町にあるキグスタの部屋で、キグスタとその妻たちは寛いでいたが、その顔は少々険しい。


 というのも、カンザが悪魔を召喚してキグスタへの復讐を行おうとした事を、キグスタが全員に説明したからだ。


「まったく、あのカンザという者はどうしようもありませんね。少しは大人しくしていられないのでしょうか?」


 ナタシアの呆れたような声に、ファミュとクレースも同意する。


「まったくだ。あの無駄な根性を違う方向に向けていれば今頃大成していただろうに」

「ファミュの言う通りですね。でも、カンザにしてみれば最後の一手すら発動する前に消し飛ばされたわけですから、絶望は与えられたのではないでしょうか?」


 確かにこの世界では、悪魔を召喚し、何かを犠牲にして強大な力を得る人が存在したことは、周知の事実になっている。

 もちろん得られる力によって、犠牲も比例して大きくなる事も知られている。


 しかし、その悪魔召喚は、あまりに危険な力であるために秘匿されており、国家中枢の一部の面々にしか情報は伝えられていなかった。

 そんな力を使ってまでキグスタへの復讐を実行しようとしたカンザだが、力を得る以前にその企みは失敗に終わったのだ。


「ま、あいつができる事はこんな所が限界かな?罰としてもう少し魔獣の力を強くするのはどうだろう?」

「キグ坊の好きなようにすればいいさ」

「そうですね。でも、原因はカンザのふざけた行動である事を知らせる必要はありますよ?キグスタ君?」


 キグスタの問いかけに、ファミュとクレースが同意している。


 ナタシアはと言うと、丁度ヨハンから何か話を聞いているので、キグスタの問いかけに返事はしていなかったが、ヨハンからの話が終わった直後に、得られた情報を話し始めた。


「キグスタ様、実はグリフィス王国の独立と、私たちが公開した神託がどのような影響を他国に与えているか、ヨハン様に情報収集をお願いしていたのです。その結果、ある国家の動きが少々怪しいとの事でした」


 キグスタは、三人の妻達を自分と同じ扱いにするように超常の者達に命じている。

 もちろん超常の者達はキグスタの命令に反するわけもなく、更には三人の妻達がキグスタに絶対の信頼を寄せているために、彼らにとっても非常に好感度が高く、彼女達から依頼があれば嬉々として達成している状況だ。


「私がソレッド王国にいた時からそうでしたが、何かと言いがかりをつけてくる国家があったのです。ここからは少々離れていますが、ワウチ帝国……ナルバ村の先にある国家ですが、どちらかというと軍事国家ですね。それだけに諜報についても重要視しているようで、きっと今回のソレッド王国の衰退でしょうか……、軍が壊滅的な被害を受けた事も知られているようですよ」

「でも、このグリフィス王国には関係ないでしょ?」


「ええ、今の所は。そもそも、ソレッド王国の軍壊滅についても、あまりにも信じられない情報であるために、再度確認をしているようなのです。ですが、軍の壊滅的な状況が確認でき次第、きっとあの国はソレッド王国に攻め込むでしょう。そして、元はソレッド王国の一部であったグリフィス王国も、戦闘の対象になる可能性が高いのです」


 キグスタはソレッド王国に対して良い思いを抱いていない。

 当然ナタシアも、父であるソレッド王国の国王を見限ってここにいる。


 しかし、キグスタとしては本当にソレッド王国を完全に見限ってよいかの判断がつかなかったのだ。

 いくら縁を切ったとはいえ、ナタシアにとっては血のつながった父親。


 しかし、さすがはナタシア。キグスタが迷っている事を察して、あっさりとソレッド王国を切って見せた。


「キグスタ様、ひょっとして、私の元父親の事を気にされているのですか?私はすでにあの者とは全ての関係を切っております。今私が守るべきは、夫であるキグスタ様、そして同じ夫を持つ皆さん、そしてお義父様お義母様、クリスタちゃんです。そこの所はお間違えの無いようにお願いします」


 何の迷いもなく、実の父親をあっさりと、そしてきっぱりと切って見せた。

 自分の夫であるキグスタを劣悪な環境に置き続けた者にかける慈悲はない……と言う覚悟が見て取れた。

 その為、キグスタとしてソレッド王国を完全に見限る事を決心できたのだ。


「ナタシア……わかった。ありがとう。そうだな。あんな国がどうなろうと知った事ではないな。俺は俺の家族、そしてこの国を守る事に集中する事にするよ。とは言え、まだワウチ帝国だっけ?そこがソレッド王国を攻めてくるか確定しているわけではないし、万が一攻めてきたとしても、ソレッド王国の後に継続してグリフィス王国を攻撃するとは決まったわけではないから、焦らず行動しよう。俺達の力があれば、それくらいの余裕を持ってもいいはずだ」


 キグスタはそう言いつつヨハンを見ると、ヨハンは自分達の力を信じてくれている至高の主に感動しつつも、美しい所作で一礼して、問題ない旨の意思を伝える。


「じゃあ、とりあえずはあのカンザの罰だ。今回は他の三人は関与していないのだろう?」


 問いかけられたヨハンは頷く。


「じゃあ、ヨハンとソレイユ、一緒に来てくれるか?」


 カンザがいるナルバ村周辺の魔獣を制御している獣神のソレイユと、執事であるヨハンと共にナルバ村に向かうキグスタ。


 既に超常の者達の力、そしてキグスタの直接の盾であり鉾でもあるスライムの強さを知っている三人の妻は、全く心配する様子もなくキグスタを送り出した。

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