悪魔召喚
悪魔召喚……カンザの仲間になるかは別の話です
カンザの考えた逆転の一手とは……
「そうだ。あいつのスキル<統べる者>がどうとか言っていたが、あんなクズスキルに力があるはずがない。とすると……あいつは悪魔との契約によりあれ程強大な力を得たんだ。それ以外に考えられない。とすると……たしか家にあった魔導書に悪魔召喚の術があったな。フフフ、俺も同じように悪魔と契約してやる。あのクズを倒せるのであれば、魂だろうが何だろうが、好きにすれば良い。だが、キグスタ……あいつだけは絶対に許さん」
そう言って、新たな力を得るために即行動をおこすカンザ。
キグスタの家の床に、仕留めた魔獣の血を使って魔法陣を書き始めた。
カンザの家は貴族であり、普通の人では見る事もできないような情報や、魔道具も数多く保管していた。
そして、残念な事に、カンザは自らの力になり得る事についての記憶力はずば抜けていたのだ。
「フフ、やはり俺は選ばれた人間だ。この程度の魔法陣であれば難なく発動させることができる。フフフ」
当然他の三人はカンザと距離を取っており、静観の構え……いや、巻き込まれないように更に距離を取っている。
「さあ、いざ英雄であるこの俺の呼びかけに応じ、顕現せよ!悪魔よ!!」
魔法陣が黒光りし、怪しい魔力を吹き出している。
魔法陣の動きから、確実に悪魔が召喚される事を確信したカンザ。
「いいぞ、さあ来い。俺の願いを叶えれば、魂だろうが何だろうがくれてやる!」
狂気のカンザは、新たな力を得てキグスタをボコボコにできる事を想像して愉悦の表情だ。
残りの三人は、一層カンザと魔法陣から距離を取る。
本当はこの場から逃走したいが、キグスタの家を一歩出てしまうと、その瞬間に魔獣が襲ってくる可能性が高いので、逃げ出す事もできずにいるのだ。
やがて、魔法陣から噴き出している漆黒の魔力が形をなし、明らかに悪魔の風貌をした者がカンザの前に現われた。
だが、未だ魔法陣から魔力は噴出し続けており、悪魔の顔を認識できるまでには至っていない。つまり、目の前の悪魔は未だに力を増強し続けているのだ。
悪魔召喚が成功したと確信したカンザは喜びを爆発させる。召喚自体の成功と、カンザの望みが叶うかは別問題なのだが……。
「さあ、早く俺にあのクズを滅する力を与えてくれ。その後は、この国……いや大陸中がどうなっても構わない。どうだ、願ってもない好条件だろう?」
悪魔はカンザの目の前に現れつつある状況だが、力を増強させている最中であり、未だ何の動きも見せない。
「フハハハハ、やはりあのクズもこうやって力を得たに違いない。どうやって魔法陣の知識を得たのかはわからんが、どう見てもこの英雄である俺の方が、より強大な力を持つ悪魔を召喚できているはずだ。ハハハハハ、待ってろクズが!クズを滅した後はあの国王だ。俺様をこき使った挙句裏切り者だと糾弾しやがって……」
カンザの狂気はとどまる事を知らない。
目の前に現れている悪魔の影響もあるのかもしれないが、カンザはすでに猫を被るのを一切やめにして、攻撃的な一面が表に出てきている。
そんなに簡単に、カンザのような人間が強大な力を得られるわけもないのだが、プライドが高く、自分の力を過剰に評価しているカンザにはその事実はわからない。
もちろん、カンザが実家にいる時にこの魔法陣を起動していれば、おそらく生贄の多さに比例して、難しい望みも叶えてくれた事だろう。
それが幸せに続くかどうかは別の話だが。
だが、カンザの現実は非常に厳しい。
目の前の悪魔が、たとえあのダンジョン最下層にいたフロアボスの下級悪魔よりも上位の存在だったとしても・・・・・・
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