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国家と辺境

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 ソレッド王国とグリフィス辺境伯はまさに一触即発の状態になっていた。


 国王から領地没収と爵位剥奪の連絡を受けたグリフィス辺境伯が、その一切を無視したのだ。

 その瞬間から、魔獣の素材を王都に販売する事を停止し、隣接する国家に販売先を変えた。


 ソレッド王国内部の他の領地を治めている貴族達は、どちらにつくべきか見極めている最中だ。

 もう少し時間が経つと、国王からは招集命令が来るはずだ。


 その時に素直に招集に応じるか、グリフィス辺境伯につくかで、今後の自分の立場が決まってくる。


 負けた方についた貴族の行く末は説明するまでもないだろう。

 勝ちそうな方に如何に早く味方するかが難しい所なのだ。


 当然貴族達は情報収集に余念がない。


 国王サイドは、間もなく貴族の招集にかかるとの情報をほぼすべての貴族が掴んでいた。

 普通は、反逆罪に問われているグリフィス辺境伯は、慌てて味方の貴族を探すべく動くべきなのだが、グリフィス辺境伯がどこかの貴族に声をかけたと言う情報は入ってきていなかった。


 つまり、単独で戦闘する気満々と言う事だ。


 ドロドロした貴族社会の戦いを生き抜いてきている狡猾な貴族、特に高位貴族達は、グリフィス辺境伯の行動を訝しんだ。


 自分がその立場になれば、必ず強大な貴族から順に参戦の願いを必死で行うからだ。

 逆に、その様な行動を一切していないグリフィス辺境伯が不気味に映る。


 何かとてつもない奥の手を持っているのではないか・・・・・・と。

 自殺願望があるなら話は違ってくるが、領地経営が特にうまく行っている状態のグリフィス辺境伯が、そのような思いを持っているとは考えづらい。


 情報収集を行っている中で、最近はかなり状態の良い高ランクの魔獣の素材を大量に王都に卸していたと言う情報を得た。

 これこそがグリフィス辺境伯の領地繁栄の基盤であると言う事もわかった。


 流石に今は王都には卸していないようだが、かなり戦闘能力の高い面々がグリフィス辺境伯領に存在している事になる。


 この情報を得た貴族達は、それこそがグリフィス辺境伯の奥の手であると確信する。

 そして、その奥の手は、<剣神>ファミュと<槍神>クレースではないかと判断したのだ。


 これに関しては間違いではないのだが、彼らが思っている強さではない事だけは間違いない。


 しかし、高ランクの魔獣と人とでは戦い方が異なる。

 いくら魔獣相手で最強を誇ろうとも、相手が軍隊であれば話は別だ。


 そう考えた貴族達は、国王の招集前に我先にと王城に向かって忠誠を誓い始めたのだ。

 もちろん、王城が異常気象に見舞われた際に、自分達はさっさと王城から避難してしまった事を帳消しにして貰う為でもある。


 一方で、数少ない貴族・・・・・・民を思い領地を統治している貴族達は、悪魔の王顕現が確定しているにも関わらず、ある意味王族内の身内の争いに奔走する国王に嫌気がさし、招集には応じない決断をしていた。


 幸か不幸か、辺境にいるほど王都との繋がりは細くなる為、忠誠心もさほどない。

 そして、常に魔獣との戦闘、食料の確保等、民と一体になって領地を盛り立てる必要があるので、領主も傲慢な者はいない。


 かなりの力を有している辺境伯達は、当然王城に間者を紛れ込ませており、数多くの情報を得ている。


 得られた情報は、最近の国王は、民を大切にしない行動が多い事、キグスタと言う選抜メンバーとナタシア王女がパーティーを組んでいる事、ナタシア王女が国王に反旗を翻している事だ。


 この情報により、王族内での争いに民をも巻き込む戦いを起こしていると判断された。


 さらに、キグスタ一行・・・・・・つまりグリフィス辺境伯領には、ソレッド王国最強の<剣神>ファミュと<槍神>クレースもおり、その二人もキグスタとパーティーを組んでいる事がわかった。


 ある程度の地位がある者達は、流石に王国最強の二人の人柄位は知っている。


 実直、情に厚い・・・・・・等々、悪いイメージは一切無いのだ。


 ここまで条件が揃うと、たとえ自らの身が危険になろうとも国王の招集に応じるつもりが無くなったのだ。


 志を同じくした貴族。

 偶然かはわからないが、グリフィス辺境伯の領地と隣接する辺境伯二人がその人だ。


 当然三人の辺境伯は同盟を組み、国王と他全ての貴族に対して徹底的に抗う事を決意していた。


「それで、グリフィス卿、やはりあの愚王との戦闘には<剣神>ファミュと<槍神>クレースを矢面に立たせるおつもりか?」

「我が領地にはあれ程の強者はいないが、協力は惜しまない」


 グリフィス辺境伯の執務室にいるのは、残りの二人の辺境伯であるウィンタスとカルドナレルだ。


「当然あの二人には出てもらうが・・・・・・既に情報は掴んでいるとは思うが、あの二人は元王女であるナタシアと共に、今回の騒動の発端ともいえるキグスタとパーティーを組んでいる」

「それは知っておりますぞ。何でもあの愚王は選抜メンバーだったキグスタに元王女を取られたと思っているようですな」

「私の得た情報では、そのキグスタはダンジョン内で死亡の報告がされていたとか・・・・・・それに、大変申し上げにくいが、スライムを使役する最弱の選抜メンバーであったと聞いたのだが」


 キグスタの<統べる者>に対して正しい知識を持つ者はこの場にはいない。


「確かにカルドナレル卿のおっしゃる通り、キグスタはスライムを連れていますな。ですが、ご存じか?選抜メンバー最強と言われていたカンザをその手で叩き潰したらしいです」

「それならば、かなりの戦力になりますな」

「なるほど、ですがらしい(・・・・・・)と仰ると言う事は、その現場を見ていない・・・・・・と言う事で宜しいか?」


 もちろんグリフィス辺境伯の言っている事は事実であり、女子会三人娘が楽しそうにキグスタの雄姿をギルドで語っているのを、ギルドマスターであるガーグルが小耳にはさみ、グリフィスに報告していたのだ。


「ええ、ですが信頼できる筋からの情報であるので、間違いはありません」


 グリフィス辺境伯はいくら元は噂話と言えども、ガーグルは信憑性のない話はしてこないと思っている。

 そこまで信頼しているのだ。


 それに、ナタシアとクレース、そしてファミュ程の人間が嘘をつく訳がないとも思っているので、この場できっぱりと言い切ることができたのだ。


 その自信にあふれた言葉を聞いた二人の辺境伯は、安堵の息を漏らした。

 いくら自分達が正義と思っていても、国王側の戦力は強大だ。


 正義を唱えて抗ったとしても、力がなければ虚像の正義となってしまうのだ。


 そうならないように全力で対抗する意気込みではあったが、やはり戦力差の不安が否めなかった。


 そこに、自信満々のグリフィス辺境伯を見て、ようやく安堵する事ができたのだ。


 こうして、グリフィス辺境伯の指名依頼と言う特別なクエストを、キグスタ一行は受ける事になった。

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