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カンザ一行、選抜メンバーを外れる

本日2話目です

 王都に商人と共に帰還したカンザ一行。


 いや、帰還したと言うよりも、させて貰ったという表現が正しいが、カンザ達はそれどころではなかった。


 次こそは!と意気込んで<剣神>と<槍神>の捕縛に向かったが、敢え無く返り討ちに会った挙句、行動不能になった所を商人の一行に救って貰ったのだ。


 商人は情報が命。

 つまり、カンザ一行の無様な姿はこの王都だけではなく、ありとあらゆる所に広まると考えて間違いないのだ。


 カンザとしては、なるべく速くこの情報を握りつぶす必要がある。

 最悪、あの商隊丸ごと亡き者にしてもいい位の勢いだ。


 早速王城に赴き、謁見の間にて国王と謁見する。

 パーティーの他のメンバーであるフラウ、リルーナ、ホールは道中のギルドで待たせており、単独で国王と謁見している。


 表情や態度から、余計な情報を国王に与える懸念があるので、カンザが置いてきたのだ。


「国王陛下、ワリムサエの町に<剣神>と<槍神>を捕縛しに向かいましたが、やはり奴らの聖武具(・・・・・・)の性能が規格外で、今回も残念ながら手ぶらで帰還してしまいました」


 自分の実力不足を認める訳がないカンザ。

 <槍神>クレースと<剣神>ファミュは、聖武具を手にしてさえいなかったのだが、流石にそこまでの情報は漏れていないと判断し、武具の性能のせいにする事にしたのだ。


 カンザの報告に沈黙を返す国王。


 ようやく口を開いたが、その内容はカンザには受け入れられない物だった。


「カンザよ、お前は・・・・・・お前達のパーティー全員は、ワリムサエの町の森の中で瀕死の状態で発見されたようだな。ここのところ失態が続きすぎている。しかも、お前達に武具を渡すと全てが無くなる。良いかカンザよ、お前の行いのせいで、このソレッド王国の評判が落ちているのだ。キグスタの件でも伝えたように、信賞必罰。度重なる失態の責を負って、お前達を選抜メンバーから除外する」

「お、お待ちください国王陛下。我らは選抜メンバーの中でも最強パーティー。その我らを選抜から外してしまって、悪魔の王との戦いに勝てるのですか?」


 選抜メンバーから外れると、聖武具の没収・・・・・・これは既に破壊しつくしているので持っていないが・・・・・・王国からの援助が打ち切りとなる。


 この援助と言うのがかなりメリットがあるのだ。

 ある程度の修行の義務は有るのだが、毎月の給金の他に、修行の為に行う全ての行為・・・・・・移動、宿泊、武具の整備、食事・・・・・・全てが無料になるのだ。


 更に、他国に入国した場合でも、ソレッド王国と同等の扱いが受けられる。

 給金は所属の王国から出るのは変わらないが・・・・・・


 それだけ、人類として、悪魔の王に対する戦力を重要視している表れである。

 どの場所に言ってもある意味特別扱いされ、優遇されるのだ。


 貴族出身のプライドの塊であるカンザが、その地位を剥奪されるなど許容できるはずがなかった。


 だが、国王の回答はそっけない物だった。


「今までの成果がこれではな。だが、お前達に未だ期待しているのも事実だ。確実な戦果を挙げれば、再び選抜メンバーに戻れるようには配慮しよう」


 唖然とするカンザをよそに、国王はさっさと謁見の間を後にしてしまった。


「クッ、何故最強パーティーリーダーのこの俺が、こんな屈辱を・・・・・・」


 当然この原因は、自分以外の誰かになる。

 カンザの頭の中では、自分以外の原因になり得る人物・行いが高速で思い出されている。


「やはり・・・・・・高貴な俺に平民は合わなかったのが全てだな」


 結局カンザとしては、唯一誇れる貴族出身と言う何の意味もない名声に縋るしかないのだ。


「だが・・・・・・このまま俺単独では大した戦果は得られそうにもない。今のこの俺では、パーティーを組める奴もいないだろうな。そうすると・・・・・・暫くはあの平民共で我慢するしかないか。戦果を叩き出したら、即平民を捨てれば問題ないな。そうするか」


 商人達からカンザ一行の噂が流れるのは間違いない。いや、国王がある程度の情報を得ていた事から、既に噂は流れていると見て良いだろう。


 そして、その噂を止める術が無くなったカンザは、国王の言う戦果について考える為、パーティーメンバーの待つギルドに向かった。


「おいお前ら。俺達は任務失敗の責を負わされ、選抜メンバーから外された」

「な!!」

「それってどう言う事?」

「そんな事があるのですか?」


 当然、今までの待遇が無くなる事を知っている一行も驚く。


「まあ落ち着け。お前らの気持ちもわかる。当然俺も陛下に食い下がったさ。再び戦果をあげれば、また問題なく選抜に選定される事は確約されている」

「よし、じゃあその辺のダンジョンに行って高ランクの魔獣を狩れば一発だろ?」

「そんなんで良いの?」

「普段と変わりないですね?」


 今も尚、ソレイユによって閉じ込められていたダンジョン最下層での戦果を自慢としているカンザ一行。

 ソレイユの配慮?によって討伐する事が可能になっていた高ランクの魔獣だったのだが・・・・・・


 もう一度同じ事をすれば容易に選抜メンバーに戻れると信じて疑っていないカンザ一行。

 確かに、前回討伐することができた高ランクの魔獣を討伐できれば、選抜メンバー復帰も可能だろう。


 しかし、実際にカンザ一行があの魔獣を討伐できるかは別の話だ。


 そこに、近くに座って酒を飲んでいる三人組の冒険者の話が耳に入る。


「おい、聞いたか?最近この辺りで売っている魔獣の素材、ワリムサエの町から入荷してるんだってな。前は・・・・・・たしかナルバ村だったか?その辺からの入荷が多かったと思うんだがな」

「ああ、知ってるぜ。一年位前からワリムサエの町は高品質の素材が大量に入手できるようになって景気が良いらしい」

「逆にナルバ村は今殆ど魔獣を狩れていないらしいな。村民もナルバ村を出て行きたいみたいで、護衛のクエストが出てたぜ。だが、あの村の周囲の魔獣は高レベルの魔獣が多いらしく、割に合わないクエストになってるぞ。いつ見ても依頼のボードに依頼書が張りっぱなしだからな」

「それに、あそこは原因不明のランクが下がる呪いがあるみたいだからな。リスクばっかり高くて、誰もあんなクエスト受けないだろ」

「「ちげーねー」」


 カンザ一行は、お互いに目を見る。


「カンザ、俺達一旦ナルバ村に向えば良いんじゃないか?」

「ホールの意見に賛成。高ランクの魔獣がいるんだったら、何もダンジョンに行く必要ないし、村を助けることにもなるしね」

「私の両親も心配ですから、一旦戻る事には賛成です」


 カンザとしても、高ランクの魔獣を狩れればダンジョンに限定するつもりはなかった。


 そして、冒険者の間でここまで噂になっているナルバ村の現状。

 これを解決すれば魔獣の素材も手に入るし、ナルバ村を救った英雄となる事もできる。

 もちろんホール、リルーナ、フラウは、自分達の出身の村の状況を自分の目で確認したい思いもある。


 カンザ一行は、冒険者として登録しているわけではないので、冒険者レベルの減少と言われても良く意味が解っていない。

 なので、その部分を気にする事なく、ナルバ村に向かう事を決めていた。


「早速向かうか?」


 カンザの一言で、カンザパーティー一行の次なる目的地は再びナルバ村に決定した。


 そこで、近隣に生息している高ランクの魔獣を討伐して戦果とし、ついでにナルバ村の村民の希望である移住の護衛までしておけば、村民から英雄として扱われるかもしれない・・・・・・と言う未来を信じていた。

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