カンザ一行、ワリムサエの町を摘み出される
本日2話目です
ワリムサエの町に到着し、この町の領主と言っても良いギルドマスターと面会しているカンザ一行。
しかし、わざわざ長い距離を時間をかけてやってきたにも拘わらず、目的である<剣神>と<槍神>の捜索すらさせずにこの町を出て行けと言っているのだ。
これで、ハイそうですか・・・・・・と言って出ていくバカはいないだろう。
当然カンザも反論する。
「良いか、その腐った頭でよく考えろ。俺達は選抜メンバーだ。そんな俺達が王命でこんな辺鄙な所まで来てやったんだぞ。調査すらさせないとはどういう事だ。場合によってはお前も反逆罪で奴隷落ちだぞ」
殺気立つカンザ一行。今にもギルドマスターに襲い掛かりそうな勢いだが、百戦錬磨のギルドマスターは微動だにしない。
「ハハハ、面白い事を言う。反逆罪。フハハハ。まあお前がそう言うならそうでも構わん。だが、お前達がこの町で活動できない事は決定事項だ。何をどう喚こうが覆らんからな。さあどうする?この場でごねて投獄されるか、素直に町を出ていくか」
「ふざけんな。なんで最強の選抜パーティーである俺達が投獄なんてされなきゃならないんだ。しかも、ここまで来たのは王命なんだぞ!わかるか?王命だ!!!」
騒ぎ立てるカンザの声を聞いて、騎士達がギルドマスターを守る位置に移動し、部屋の中にも新たな騎士達が入ってきた。
「何度も言わせんな。王命だか何だか知らねーが、対象の人物はここにはいないと言っているんだ。お前の空っぽの頭では理解できねーか?」
逆にカンザを煽り始めるギルドマスター。
正直、いくらギルドマスターが百戦錬磨だったとしても、以前のギルドマスターであれば上位スキル持ちであるカンザ一行を相手にしては勝つ事はできない。
この場にいるギルドマスター直属の騎士達も同じだ。
では何故ここまでギルドマスターは強気になれるのか・・・・・・
本人の胆力にもよるのだが、実はこの騎士の中には<剣神>と<槍神>が紛れ込んでいる。
全身鎧と兜なので、その存在を直接確認する事はできない。
この二人、自分達が手加減をして増長したカンザ一行にお灸を据えようと、ギルドマスターに頼んで面談の時には同席させるように頼んでいたのだ。
ただ、この二人がいなかったとしても、ギルドマスターの態度は変わらなかっただろう。
恩人に対して恩を返す為、悪に決して屈しない為・・・・・・その強い心は折れる事は無いのだ。
そして、更にはキグスタより聖武具を貰っている。
もちろん玩具ではなく、キグスタ一行、そして両親が持っている物と同等レベルの業物だ。
何度言っても町への滞在を認めないギルドマスターを前に、カンザは脅しのつもりで実力行使に出る事にした。
「ここまで言って理解できない田舎モンなら、体で理解してもらうしかないな」
殺気立つカンザ一行。手には国王より借りている武具がある。
もちろん聖武具ではない。
これで腰が引ければ、それで言う事を聞かせようと考えていたカンザ一行だが、ギルドマスターは徐に立ち上がり自らの武具を手にした。
「な、それは聖武具!いや最上級の聖武具!!」
カンザは目を見張る。
それはそうだ。目の前に以前見た事の有るキグスタの両親が持っていた物と同じようなレベルの武具があったのだ。
このギルドマスターは筋骨隆々で、肉体言語で語り合うようなタイプだ。
当然その武器も力任せの武器になる。
そう、斧だ。
「やけに威勢が良いじゃねーか。良いだろう。俺も体で語るのは好きな方でな。俺の治めるこの町でオイタをする奴は躾ける義務もあるしな・・・・・・」
獰猛な笑みを浮かべるギルドマスター。
逆に一気に萎むカンザ一行。
彼等は本能的にこの場の戦闘は負けると理解した。負ける戦いを、勝つために必死で戦うと言う心は持ち合わせていないのだ。
「くっ、今回はお前らの提言を受け入れてやろう。だが次はない」
負け惜しみのセリフを吐いて建屋から逃げるように出ていくカンザ。
その後を慌てて追うパーティーメンバー一行。
「おい、あいつらが余計な所に行かない様に見張っておけ!」
ギルドマスターは騎士達に命じ、ギルドに戻る。
命令を受けた騎士達は、カンザ一行を囲うように位置して門まで誘導した。
その中には、<剣神>と<槍神>もいるのだが、カンザ一行は気が付かない。
やがて門の外に出されたカンザ一行。
騎士達からは罵声を浴びせられており、当然入場待ちの多数の冒険者や商人達に見られている。
「二度と来んなよ、このゴミ!」
屈辱の表情を浮かべて騎士を睨みつけるが、手で追い払うような仕草をされて止む無くワリムサエの町から離れていく。
「畜生、あんな連中にコケにされるとは・・・・・・」
「どうするのカンザ?きっとあの様子だと、間違いなく<剣神>と<槍神>はあの町にいるよ?」
「俺もそう思うぜ」
「夜に魔法を使って侵入しますか?」
既に森の中に移動しているカンザ一行。このまま引き下がる訳にはいかないので、次の動きを相談している。
「フフ、バカだなこいつら。未だに自分が特別な存在だと疑っていないんだな」
「まあそう言わないであげましょうよ。これからさんざん躾けるんですからまともになりますよ?」
目の前に突然現れてカンザ一行を見下ろす<剣神>ファミュと<槍神>クレース。
「やはりあの町にいたのか?あのギルドマスター・・・・・・反逆罪で殺してやる!」
「おかしいと思った」
「前のように行くとは思うなよ!」
「私の修行の成果を見せてあげますよ。泣いても許しませんから」
一方のファミュとクレース。
「あちゃー、これは調教を失敗したな。やっぱりもう少し厳しくしておくんだったな」
「本当そうですね。せっかく楽しく生活していたのに、とんだ邪魔が入りました。早くクリスタちゃんと遊びたいのに!」
「何を言っていやがる、俺の拳で叩き潰してやるぜ!」
「援護するわよホール」
「俺達も行くぞフラウ」
「わかったわカンザ」
ホールとリルーナがクレースに向かい、フラウとカンザがファミュに向かって行く。
迫って来るカンザ一行を前にしても笑みを消す事のない<剣神>と<槍神>。
カンザ一行も、長きに渡るダンジョンの生活と高ランクの魔獣討伐の成果があるので、決して最上位スキル持ちにも引けを取らないと思っている。
だが、勝敗は明らかだ。
必死で攻撃をするカンザ一行だが、笑顔のまま躱され、そのついでとばかりに攻撃を受けている。
そうそう時間がかからずに、カンザ一行は動けなくなって地面に這いつくばっている。
「あれ?もう終わりか?私達はまだ武器を使っていないんだがな・・・・・・」
「本当、自分達の力をなんであれ程過大評価できるのでしょうか?」
「だが、前回の反省を生かしてこの程度で済ますわけにはいかないな」
「まったくです。クリスタちゃんとの至高の時間の邪魔をしたのですから、もっと罰を受ける必要がありますね」
笑顔のまま地面に這いつくばっているカンザ一行に近寄るクレースとファミュ。
「く、来るな」
「来ないで。何をするの?」
「待て、落ち着け・・・・・・」
「やめろ!!」
四人は当然逃げようとするのだが、碌に動けない上に、もし動けたとしても、当然クレースとファミュの方が動きが圧倒的に速い。
笑顔の二人に、道端の石を蹴るように蹴り飛ばされ、森の木をなぎ倒しながら吹き飛ぶカンザ一行。
その行為が小一時間程繰り返され、瀕死のカンザ一行が森の中にいるのを商人が発見したのは翌日だった。
72話まで予約投稿完了しました。
その後の投稿は暫く空いてしまう予定ですが、必ず完結しますので、よろしくお願いいたします。
また、沢山の励みになる応援ありがとうございました。
 




