カンザ一行、ワリムサエの町に着く
展開の遅さに少々感想欄が荒れてきてしまいました。
ちょっぴり凹んでます。
モヤモヤさせてすみません。
いくつもの町や村を経由して、王都からワリムサエの町に到着したカンザ一行。
この町に近づけば近づく程、<剣神>と<槍神>の噂は頻繁に聞くようになり、ワリムサエの町にいる事は間違いないと確信していた。
と同時に、碧目金髪の美しい女性・・・・・・これはどう考えてもナタシア王女なのだ。
しかし、あの王女がいくら<剣神>と<槍神>と共に行動しているとは言え、冒険者として活動できるとはカンザには思えなかった。
噂によると、相当高ランクの魔獣を毎日大量にギルドに持ち込んでいるらしい。
思い起こせば、王都でも、ある時を境に高ランクの魔獣の素材やら何やらが大量に入荷されて来るようになっていた。
その素材は、このワリムサエの町から来ていたらしいのだ。
そんなレベルの冒険を、あの王女ができるとはとても思えないのだ。
その事が、ワリムサエの町にナタシア王女がいると言う事に対して確信まで持てなかった原因だった。
「ようやく着いたか。全く、こんな辺鄙な所まで逃げやがって。<剣神>と<槍神>の名が泣くぞ」
カンザは呟きつつ、ワリムサエの町の入場の列に並ぶ。
一年近く前からこの町はかなり景気が良いので、多数の冒険者や商人、そして移住希望の面々でごった返している。
並ぶこと一時間、ようやく自分の番になったカンザ一行だったが、すんなりと入ることはできなかった。
あろうことか門番にギルドマスターとの面会をするように指示を受けたのだ。
カンザとしては、王命を執行しようとしているのだから、何か協力を申し出てくるのだろうと思い快諾した。
このワリムサエのギルドマスターは、最近の業績向上から、領主からの信頼を勝ち得ており、この町における領主のような位置付けになっていた。
そのギルドマスターから、厳命を受けている門番。
そう、カンザ一行がワリムサエの町に来た場合、そのまま入場させてはならないと言う事だ。
カンザ一行の人相は、知れ渡っている。
貴族出身の偽善者の皮を被ったカンザは、かなり前から有名になっているのだ。
その原因は、今まで決して壊れた事のない聖武具を破壊に至らしめた者としてだ。
ここだけ聞くと、聖武具を破壊できる程の力を持った者!と捉えられなくもないが、実際は以前の聖武具紛失の嫌味も込めて聖武具クラッシャーとして名を馳せている。
そんな有名なカンザ一行が、このままワリムサエの町にすんなり入れる訳もなく、門番は、ほぼ領主と言って良いギルドマスターからの命令を忠実に実行した。
もちろん、王都からワリムサエの町にカンザ一行が来ていると言う情報が伝わっていたので、警戒度合いを上げていたのだ。
そんな理由でギルドマスターとの面会を行うとは思ってもいないカンザ一行。
最上級とは言わないまでも、かなりの厚遇で迎えられるだろうと確信していた。
担当の門番が直接カンザ一行をギルドではない建屋に誘導する。
一方、他の門番の一部がギルドに走り、ギルドマスターを呼びに行っている。
ギルドで面会をしないのは、万が一キグスタ一行との鉢合わせを警戒したギルドマスターの配慮だ。
もちろん、門番が案内している道も、キグスタ一行が使わない道を選んで進んでいる。ここまで配慮できるギルドマスターであるから、領主を含む町中の信頼を勝ち得ているのだろう。
「おい、まだ着かないのか?こんな辺境なのに広さだけは一流だな」
長旅の末に到着したワリムサエの町の入口で一時間近く待たされた挙句、中々ギルドマスターとの面会の場所に辿り着けないのだ。
早々に<剣神>と<槍神>の情報を得たいカンザとしては、少々嫌味を言いたくなっていた。
いや、実際に言っているのだが、先導している門番は気にする様子もない。
「もう少しで到着します」
門番の言葉の通り、カンザの視界には近衛騎士が入口を固めている建物が目に入ってきた。
「あそこか。田舎にしてはそこそこの建物だな」
実際はかなり潤っているワリムサエの町なので、王都にも引けを取らない造りになっているが、プライドの高いカンザは認める事はしなかった。
案内をしてきた門番から引き継がれた騎士の一人が、カンザ一行を建屋の中に案内する。
そこには、椅子に座ってカンザ一行を睨むように見つめるギルドマスターがいた。
「良く来られた。そこに座ってくれ」
座ったまま、カンザ一行に対面の椅子に座るように促すギルドマスター。
かなりの不敬であるが、事実を知っているギルドマスターにとっては、この程度の不敬な態度は当たり前と思っている。
当然カンザ一行が下座だ。
厚遇されると信じて疑わなかったカンザ一行。特に貴族出身のカンザは何が起こっているか理解できない状態となり、言われるままに椅子に座る。
「ここに来た理由、ある程度は情報として得ているが、実際に本人達から確認したくてな」
当然飲み物や軽食など出てくる訳もない。
我に返ったカンザは、所詮は冒険者と言う野蛮な連中の元締め・・・・・・と諦めて理由をそのまま話すことにした。
「知っているならわざわざ説明する必要はないと思うが・・・・・・辺鄙な所だから情報に齟齬があるとまずいだろうな。俺達は王命により<剣神>と<槍神>の捕縛に来た。ついでに、キグスタ・・・・・・言ってもわからんだろうが、俺達のパーティーにいた荷物持ちで聖武具を持ち逃げしたクズの両親の捕縛、更にはナタシア王女の探索も請け負っている」
辺鄙と言う嫌味に顔色一つ変えなかったギルドマスターだが、大恩人である前ギルドマスターの孫であるキグスタの名前、そして両親の名前が出た時は、表情が歪んだ。
だが、カンザ一行がそんな表情の動きに気が付く訳はなかったが・・・・・・
カンザ一行としては、この町に来た理由は<剣神>と<槍神>の捕縛。
そして、その後はキグスタの両親とナタシア王女の探索も行う予定でいるのだ。
ただし、キグスタの両親がこの町にいるとは思っていないし、ナタシア王女にしても、噂の確認をする程度の気持ちだ。
「そうか、それならばこの町には対象の人物はいない。即刻出て行ってもらおうか」
ギルドマスターは事も無げに言い放った。
「あん?王命だぞ!!俺達が直接調べる必要がある。それにな、田舎モンにはわからんだろうが、既に<剣神>と<槍神>の二人がここにいると言う情報は掴んでいるんだ。お前のそのセリフ、反逆罪になるんだぞ!わかってんのか?」
だが、脅しをかけられているギルドマスターは微動だにしない。
「フン、そんなチンケな脅しが効くと思ってんのか?聖武具クラッシャーが良く言うぜ。いいか、もう一度言う。お前たちが探している者はこのワリムサエの町にはいない。即刻出て行かんのであれば、領主の名においてお前らを投獄する」
ギルドマスターの言い分としては、カンザの聖武具を持ち逃げしたキグスタなど存在しない。
何故ならば、キグスタは聖武具を持ち逃げなどしていないからだ。
その為、その責を負うその両親も存在しない。
<剣神>と<槍神>にしても、国王に仕えている訳ではないので、捕縛されるような人としては存在していない。
実はこのワリムサエの町の領主は、ギルドマスターからある程度の真実を聞いて国王への信頼がなくなってきていた。
裏切者を最大戦力と称え、自分の尻ぬぐいを他人にさせる・・・・・・
そこに、王城のみに大厄災と言っていい気候変動。
自分がこのまま国王の下にいると、この町を含めた領土まで被害を受けかねないと思い、キグスタ一行については保護する事を決めていた。
この領主は、自らの領民を大切にしている領主であり、以前のワリムサエの町の出来事、前ギルドマスターの件も知っている。
その為、国王の命令に背く決断を下すまでには大した時間を必要としなかった。
既に書かせて頂いておりますが、諸事情により投稿できなくなる期間があります。
書き溜め分を数日に分けて投稿します。
およそ70話程度でカンザに対する本格的な制裁が始まる予定です。
(情報先出し申し訳ありませんが、展開の遅さの指摘が多かったもので、予告的に出させていただきました)
 




