王城とカンザ一行
おはようございます。
書き溜めが・・・
ソレッド王国の王城のみに、極寒と灼熱の気候が訪れるようになってから半年近くが経つ。
実際に王城の領域から一歩外に出ると、普通の気候になるのだから不思議でならない。
その中で生活をしているのは、王族とカンザ一行のみになっている。
他の貴族や選抜メンバー達は、王都にある自らの邸宅に避難し、用事がある時だけ嫌々王城に赴くのだ。
逆に王族達は、一旦王城から退避して他の場所に居を移そうと試みたのだが、建設を始めた瞬間に、その場所にも異常気象が訪れたのであきらめたと言う経緯がある。
ここまで来ると、ソレッド王国の者達が噂をしている”神の怒り”についても信憑性が増してくる。
カンザ一行が帰還した翌日に、国王が<槍神>と<剣神>から回収してカンザ一行に渡していた聖武具が粉々に破壊されたのだ。
そして始まった異常気象。
流石の王でも、自らの行いを省みる必要がある・・・程度の思いは芽生えていた。
しかし、何をどう考えても神の怒りを買うような事をしたつもりはなく、甘んじて今の環境を受け入れていたのだ。
もちろん、カンザ一行も一切身に覚えがないと言う思いだった。
この面々に焦りが無いのは、もし、この異常気象が悪魔の王の仕業であれば、王城だけではなく王都全体を覆うだろうし、これ程の力があるのであれば、自分達の命など容易く刈り取る事ができるはず。
そうしないのは、この現象を引き起こしているのが悪魔の王ではないからだ、と判断していたからなのだ。
つまり、悪魔の王の仕業ではないので命の危険はない。ひょっとしたら噂通り神の怒りかもしれないが、半年近くもこのままであり、こちらも命の危険はないと判断したのだ。
人族とは恐ろしいもので、このような劣悪な環境に長い間身を置いていると、慣れてくるのだ。
そして、この異常気象を引き起こしている側にも大きな変化があった。
そう、キグスタに妹ができたのだ。
名前はクリスタ。
キグスタの両親は当然だが、キグスタと女子会の面々、そして”キグスタ様を想う会”の面々も、それはそれはクリスタにメロメロになっている。
超常の者達に関して言えば、至高の主の妹である為にこれ程の溺愛になっていると言っても過言ではない。
そうするとどうなるか。
カンザ一行や王城の事など重要ではなくなってくる。
もちろんキグスタがカンザ一行について何も言っていないからでもある。
キグスタがカンザ一行に対して何か行動をする意思があれば、喜んで全力で力を行使するつもりでいるのだ。
しかし、至高の主であるキグスタも妹にメロメロで、いちいちあんな連中の為に、力の一端でも使うのがバカバカしくなってくるのだ。
精霊神のハルムは、異常気象を引き起こす程の力を持つ精霊を引き上げさせ、その分クリスタの護衛に充てた。
超常の者達”キグスタ様を想う会”の面々は、いつもの通り影から至高の主を守護している。
一方の”女子会”の面々は、キグスタと共に生活をしており、当然クリスタに構い続けている。
そうすると、当然いつかは自分も・・・と言う気持ちになるために、久しぶりに女子会が開催される運びになった。
「本当にクリスタちゃん可愛いです。ほっぺもプニプニしてるし・・・はぁ~私もキグスタ様との赤ちゃん、早く欲しくなっちゃった」
「本当にその通りだ。プヨプヨのお手て、たまらない。きっと私とキグ坊との子供もあんな感じで可愛いに違いない」
「フフフ、フニャフニャ泣いている所も可愛いですよね。私とキグスタ君の子供も・・・フフフ」
どんどんと怪しいオーラを纏う、最上位スキル持ちの三人。
キグスタの母であるクララの家は大きな家であり、ナルバ村の時と違って、わざわざ異空間の中に入る必要がない。
その為、不穏なオーラが外部に漏れないよう、ヨハンが気を使って結界を作成している始末だ。
そんな幸せな生活をしている時期、当然王城の異常気象も収まっているので、カンザ一行も息を吹き返した形になっていた。
「良いかお前達、今までの異常気象は俺達に試練を与えていたんだ。だが俺達は乗り越えた。何と言ってもあの上位の魔獣をあの極限状態で討伐する実力があるんだ。聖武具は失ったが、俺達の真の実力があれば全く問題ない」
「そうだな。それにダンジョン攻略中に聖武具があるかもしれないしな」
「流石はカンザね。それで、こんな状態だったから放っておいたけど、クレースとファミュの件、どうするの?」
「そうですね、今までは自分の生活に精一杯でしたから放っておきましたが、王命を無視するような反逆者は、私たちの手で始末した方が良いのではないでしょうか?」
<槍神>クレースと<剣神>ファミュは、王命に反して、ソレッド王国内全てのギルドで捕縛命令を出されている。
しかし、この一年近く捕縛完了の情報は得ていない。
もちろん出国の形跡もないので、未だ国内で過ごしているのだ。
フラウとリルーナは、自分達最強パーティーの復活の狼煙を上げるには丁度良い相手であると判断していた。
その自信は何処から来るか・・・カンザの言っていた通り、長きに渡るダンジョン最下層での経験、そして高位魔獣を決して万全の体勢とは言えない状況で難なく討伐できた事だ。
言うまでもないが、ソレイユが魔獣達を調整していたために可能であった成果なのだが、本人たちにはわからない。
「なるほど、最強パーティーである俺達の再起に相応しい案件だな」
ニヤリと笑うカンザ。
「だが、今どこにいるのかわかるのか?」
「当たり前でしょホール。いつ捕縛依頼が出たと思ってるの?あいつ等ワリムサエにいるみたいよ」
やはり<槍神>と<剣神>は有名なので、ワリムサエ以外の冒険者達がワリムサエの町で活動している時に目撃され、それを冒険者達が他の町で噂を流し、既に王都のギルドにも噂程度だがその所在が明らかになっていた。
一方、キグスタとその両親は決して有名ではないので噂になるはずもなく、ナタシアは有名ではあるが、顔を知っている冒険者が殆どいないので、噂にならなかった。
当然、噂をしているワリムサエの町に外部から来ていた冒険者達は、<槍神>と<剣神>に捕縛命令が出ている事は知っている。
しかし、実力的に大きな開きがあり、更にはワリムサエの町での彼らの評判が良いので、捕縛を行おうとする者はいなかった。
彼等の行い・・・高ランクの魔獣を毎日大量に狩って、ギルドに多大な寄付をしており、そのおかげでワリムサエの町は景気が良い状態が続いていると言う事も知られていた。
「あいつ等、自分がお尋ね者であると言う意識がないのか。それとも町ごと餌付けして守ってもらおうと言う魂胆か?」
「浅ましい人達が考えそうですね。それに、いつの間にかキグスタの両親はナルバ村からいなくなっているみたいですよ」
「あいつ等も捕縛命令が出ているだろう。どこに行ったか分かるのか?フラウは何か知っているか?」
「そっちは全然わからないわね」
こうしてカンザ一行の行動はワリムサエの町にいる<剣神>と<槍神>の捕縛を行う事に決定した。
即日準備を整え、王都を出発する。
国王の護衛は、聖武具を持つ他の選抜メンバーが行っているので問題はない。
自分達の力は、既に<剣神>と<槍神>を超えていると疑っていないカンザ一行。
その根拠も、あの高位魔獣を討伐した一回のみだ。
極限状態からの帰還の実績が、無駄に自分の評価を上げている。
カンザ一行としては、難なく二人を捕縛して王都に帰還し、ソレッド王国最強の座を確固たるものにできると疑っていなかった。
お読みいただきましてありがとうございました。
中々執筆の時間が取れなくなってきました。
どうなるかは分かりませんが、二月程で元に戻れると思っています。
宜しくお願いします。




