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一方のナルバ村

今日も複数話、投稿させていただきます。

 キグスタ一行が不在となったナルバ村。


 キグスタ自身が不在であった時は三年近くあったが、その間はキグスタの両親が全力で辺りの魔獣討伐を行っていた。


 これはキグスタも知らない事だが、超常の者達の中の一人・・・・・・獣神のソレイユが辺境であるナルバ村にいる至高の主の存在を認識してから、危険がない様に魔獣を制御していた。


 かなりの戦闘経験があるキグスタの両親。実際冒険者登録をしており、その冒険者レベルは父であるレイダスがLv27、母であるクララがLv25で中級と言われるレベルになっていた。


 辺境と言われる村で、中級クラスの冒険者が周りの魔獣を討伐する・・・・・・


 本来は不可能であり、実際に<統べる者>としてのスキルを超常の者達に認知されていない時点では、村の冒険者の死亡率も高かった。

 その中にはフラウの両親も含まれる。


 だが、ある時を境に村の冒険者の魔獣との戦闘による死亡率はゼロになったのだ。


 しかし、キグスタの両親は慢心することなく村民の安全、そして生活の糧とするために魔獣を狩り続けた。


 そんなキグスタ一行がいなくなったナルバ村。

 魔獣を制御する必要もなくなったので、全ての制御が外れている魔獣に囲われているナルバ村・・・・・・

 村民の為に必死で魔獣を討伐する人材がいなくなったナルバ村・・・・・・


 村のギルドに登録している冒険者達は、自分の食い扶持分の魔獣を適当に狩るだけで、危険な魔獣の存在を注視したり、魔獣が群れを作らないように計画的に討伐したり等と言う事はできない。


 ギルドマスターも、数年間魔獣による人的被害が報告されなくなってから、その辺りに気を配ることは無くなっていたのだ。


 今まで大丈夫だったのだから、キグスタの両親がいなくなった位では問題ないと全員が思っていたのだ。


 確かにキグスタの両親がいなくなっても、村を守るために超常の者達が動いていれば問題はなかった。

 しかし、キグスタと共にこの場を去り、更にはキグスタに対する仕打ちに怒りを覚えている超常の者達がこの村の為に何かをするなど言う事は有り得ない。


 つまり、本来の辺境の村と言う姿に戻るのだ。


 長きに渡り、ぬるま湯につかり続けた冒険者ギルドも含むナルバ村の面々。


 異常を察知する力も衰えていたので、キグスタ一行がナルバ村を去った二日後に、適当に魔獣を狩ろうとした冒険者が重症を負ってギルドに戻ってきてようやく何かがおかしい、と気が付き始めた。


 重症を負った冒険者にポーションで治療しつつ、ギルドマスターは事情を聞く。

 正直、ここ数年ポーションを使う機会など訪れなかったので、在庫はふんだんにある。


 傷を癒すことに成功した冒険者は、一呼吸すると事情を話し始める。


「俺はいつも行っている泉の近くに、魔獣討伐に行ったんだ。あそこはラビンが良く出る場所だからな。逆に言うと、ラビン以外はあまり見ることがない。せいぜい見たとしても、ここ数年はファラー程度だ」


 ギルドマスターは、もちろんその情報は知っているので同意する。


 ラビンは兎型の魔獣、ファラーはネズミ型の魔獣で、どちらも冒険者レベルが中級であればたとえ囲まれてしまうような事態になったとしても、今までは難なく討伐できていたはずだ。


 この冒険者レベルは22であり、十分安全に狩れる魔獣の狩場に向かっている事になる。


「そこに別の魔獣が現れたのですか?」

「いや、そうじゃねー。いつも通りラビンを仕留めようとしたんだが、変異種か何だか知らんが動きが今までと違っていやがった。速さが桁違いなんだ。身の危険を感じた俺はすぐさま撤退しようとしたんだが、そこにファラーも現れてな。こいつも今までとは全く違った動きだった」


 ギルドマスターは不安な表情をし始めた。

 悪魔の王による影響が、この辺境であるナルバ村まで来ているかもしれないと思ったのだ。


「他には何かありますか?」

「いや、とにかく逃げることに精いっぱいだったからな。まさかあんな雑魚相手に逃げる羽目になるとは思いもしなかったぜ」


 雑魚二体の魔獣だけでは判断できないが、仮に他の魔獣全てが悪魔の王による影響を受けているとしたら、この村の脆弱な防衛体制では身を守ることはできない。


 そこで、他の大きな町のギルドに対して調査依頼のクエストを発行することにした。


 比較的簡単な依頼であったので、すぐに依頼を受注した冒険者がナルバ村に到着し、大怪我を負った冒険者と共に泉に向かった。


 もちろんこの調査が終わるまでは全てのクエストを中止しており、村民の食料はギルドの保管品を放出する羽目になっている。


 その日のうちに、調査依頼に向かった冒険者達はナルバ村のギルドに帰還した。


「ギルドマスター、戻ったぜ。あの泉の周りにいるラビンとファラーだが、別に変異種なんかじゃなかったな。ホレこの通りだ」


 数体のラビンとファラーを素材換金の場に置くと、冒険者は依頼結果を報告する。

 この冒険者は、冒険者レベル27であり、大怪我を負った冒険者と大きな違いはない。


「すると、貴方が会ったラビンとファラーはいなかったと言う事ですか?」


 ギルドマスターは、同行させていたナルバ村の冒険者に尋ねる。

 そうであれば、依頼は未達成と言う事になり再度泉周辺を調査してもらう必要があるからだ。


「いや、あのラビンで間違いない。俺がつけた傷も残っている。動きもかなり良かったが・・・・・・」

「よし、そんじゃ依頼達成で良いな?毎度あり」


 そう言い、依頼を受けた冒険者はナルバ村のギルドを後にした。


 残された冒険者とギルドマスター。


「ギルドマスター、俺達は弱くなったのかもしれない」

「どういうことですか?」


「ラビンだが、あいつらにしてみれば普通の動きみたいだ」

「とすると、今までのラビンが弱くなっていたと言う事ですか?」


 真実に近づくギルドマスター達。

 だが、本当の真実に辿り着けることは無い。


「ああ、そうだと思う。原因はなぜだかはわからないがな。だが、クエストを今のままのレベルで依頼を出すと、死人が出るぞ」

「確かにその通りですね。依頼に対する冒険者レベルは再考しましょう。ですが、何故今までは魔獣が弱体化していたのでしょうか?」


 それがわかれば苦労はしない。

 それに、この村民は上位スキルへの進化は決して望めない。


 つまり、今まで狩れていた魔獣を狩ることもできないので、生活レベルが大幅に下がることになる。

 ひょっとすると、自身の生活の安全すら脅かされるかもしれないのだ。


「その辺りも調査できるレベルの冒険者に依頼を出しておこう」


 だが、このクエストを達成した者が現れることは無かった。


 しかし、ナルバ村の現状・・・・・・冒険者レベルに対して強さが見合っていないことが知れ渡り、何故かナルバ村にいると冒険者の力が下がると噂され、一層の辺境と化したナルバ村。


 ギルドマスターも異動することはできずに、過疎化した辺境で、楽しみもなく、日々カツカツの生活を強いられることになる。


 以前のように魔獣討伐は命がけ。もちろん実際に命を落としてしまう冒険者も出てくる始末。


 この状態が普通の状態なのだが、今まで楽に討伐できた魔獣を命がけで狩ろうとする強者は中々現れない。


 数人はこの辺境の村を出る決意をしたが、道中の危険を考えると実行に移すことができていなかった。

 もちろん他の町にいる冒険者に護衛依頼を出せばいいのだが、報酬が合わずに全て断られているので、この村から出ることもできない。


 冒険者にとってナルバ村は、原因不明のレベルが下がる領域と認識されているので、通常の護衛依頼程度の金額ではだれも依頼を受けてくれないのだ。


 当然商人などが来ることもなくなり、まさに命がけの自給自足の村となった。


 こうなると、彼等自身が生活の中でレベルアップするしか方法がないのだが、そんな積極的な面々がいるわけもなく・・・・・・


「なんでこんな事になっているんだ」


 ギルドマスターの呟きが解決されることは無い。

お読みいただきましてありがとうございました。

残念ながら、日間ハイファン表紙から落ちてしまいました。


返り咲けるように頑張りますので、ブグマや評価で、応援いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり、ざまぁとは言いたくない。 本当の罪人の所業を明らかにしてほしい。 どれほど、村人達のこと出そうと、ただ胸糞悪い。 ざまぁとも思えない。 いい加減に、カンザを真に断罪してほしい。 あの…
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