カンザ一行、新たな聖武具を手にする
本日2話目の投稿になります。
実はキグスタの両親は、直接血が繋がっていないフラウの感情を考えて、キグスタの実の妹弟については一切考えていなかった。
だが、今回のフラウのとんでもない裏切りによってその辺りを心配する必要がなくなったのだ。
そして、お腹の中にいる子供・・・・・・普通は気が付く期間ではないが、ヨハンに教えてもらったのだ。
「そうか、そうだったのか。じゃあ軽い運動はするにしても、魔獣の対応はもうやめてくれな。その分俺が頑張るからさ」
「フフ、お父さん、無理しないでくださいね。でも、そんな訳でもっと環境の良い所に行きたいんですよ」
「そうだな。そう言う事なら確かに母さんの言う通りこの状態の村に固執しても仕方がないか。幸いキグスタがいるおかげで簡単に拠点を移せるし。よし、決めた。準備が整ったらナルバ村とはおさらばだ」
こうして、ナルバ村の最高戦力はこの村を去ることが決定した。
そうすると、キグスタに付き従っているクレース、ファミュ、ナタシア、そして超常の者達もこの村を去ることになるのだ。
キグスタの両親がこの決定をした同じ日に、リルーナの家に避難していたカンザ一行もある程度体調も戻ったので、キグスタ両親の捕縛を諦めて、ナルバ村から王都に<剣神>と<槍神>の裏切り行為を報告することにした。
最上位スキル持ちが二人ともキグスタ側に付いていたのだ。たとえカンザ一行が全員上位スキル持ちであったとしても、王命を完遂できずに帰還する事に対しての咎は無いはずだ、との思いから撤退を決めた。
「なんで俺がこんな村を何往復もしなくちゃならないんだ」
「でも、あのソレッド王国最強の二人を相手になんてできないわ」
カンザとリルーナが怒りを露わにしているが、ホールとフラウは大人しい。
実際に最強と言われている二人の攻撃を間近で見た恐怖から、未だに立ち直れていないのだ。
逆にカンザとリルーナは戦闘と言う戦闘をろくにしないまま気絶したので、幸か不幸か過大な恐怖を刷り込まれる事は無かったのだ。
ナルバ村に来る時と違い、聖武具を得るための寄り道など一切せずに急ぎ王都を目指すカンザ一行。
数日かけて王都に到着すると、早速国王に最上位スキル持ちの裏切り行為を報告する。
「国王陛下!我らが王命によりキグスタの両親を捕縛しようとしたところ、<槍神>クレースと<剣神>ファミュがキグスタの家におりました。何故かあいつらの手には見た事もない上位の聖武具があり、いくら我ら上位スキル持ちの一行でも勝てないと判断し、撤退した次第です」
「わかっておる。あの二人はお前の報告であるキグスタの奇行を信じることなく、このソレッド王都を離脱しよった。まさか本当にナルバ村に行っているとはな・・・・・・」
ファミュとクレースは、ソレッド王国に仕えているつもりは微塵もなかったので、迷いなく王都から出立することができたのだ。
「更に報告があります。当初我らは王命を遂行しようとしたため、あの二人と事を構えるに至りました。しかし、見た事もないような上位の聖武具により強化されている奴らは、突然我らに攻撃を仕掛けてきたのです。体勢を崩しつつも国王陛下からお借りしている武具で攻撃を防ぎましたが、武具は破壊されてしまったのです」
この辺りがカンザの性格が滲み出ている。
決して自らが負けたとは認めない。
そして、武具が破壊されたのも自分のせいではないのだ。
「そうか。だがお前達が無事であればこれからスキルを鍛え続ける事により、最上位スキルになれるかもしれん。いや、その可能性が最も高いのがお前達だ。その時にあのクズの両親とお前達に刃を向けた二人に罰を与えればいいのではないか?」
「寛大なお言葉、感謝いたします。これから一層鍛錬に励みます」
カンザの思惑通りに事が進む。
国王は、自分の身を守る最強の存在が王都を去ってしまったため、カンザ一行をその立場につけようと考えているので、このような物言いになっているのだ。
「あの二人からは、カンザからの報告を受け入れなかったので聖武具を没収した。最上位スキル持ちであるが故、あの二人には二つの聖武具を与えていたのだ。丁度お前達が探し求めている聖武具になるだろう」
散々探し求めていた聖武具が再度手に入ると分かったカンザ一行は、喜びを隠しきれていない。
クレースとファミュの攻撃を目の当たりにして恐怖を植え付けられてしまったホールとフラウも、再度聖武具が手に入る喜びにより持ち直すことができていた。
その聖武具は、最上位スキル持ちに与えていた物にふさわしく、以前カンザ一行が持っていた物よりも上等な物だったからだ。
とは言え、繰り返しになるが、所詮は玩具なのだが・・・・・・
「この新たな聖武具と共に、我ら選抜メンバーは最上位スキルの開眼を目指します!」
カンザの高らかな宣言に、国王も満足げだ。
だが、最上位スキルの開眼などは一生かかってもできない事を、この場にいる面々は知らない。
「国王陛下、それでは早速聖武具に慣れる為、近場のダンジョンに向かわせて頂きます」
「うむ、必ずや最上位スキル持ちになるのだ。励むがよい」
気合十分のカンザ一行は、王都に程近いダンジョンに入り込む。
浅層では、やはり上位スキルと聖武具があるので全く魔獣を寄せ付けない。
しかし、中層辺りからは雲行きが怪しくなってきた。
「やはり魔王か魔神の顕現のせいか・・・・・・魔獣達が強くなっているな」
「それでも私達の力であれば、今の所は大丈夫よ」
「近接は俺に任せておけ」
「私の魔力もまだ余力は十分です」
怪我もなく進むことはできているのだが、進行速度が大幅に減少している。
実はこのダンジョン、キグスタがいる頃に王都での鍛錬の一環として既に最下層まで行った事のあるダンジョンだったりする。
その時にこのダンジョンは、既に超常の者達に制圧されていたので、キグスタと共に行動していたカンザ一行に対しても、魔獣の動きは悪くなっていたのだ。
カンザ一行は、魔獣が強くなったのは魔王か魔神の顕現によって魔獣達が活性化したせいだと思っている。
決して、今まで魔獣達が制約を受けていたとは思えない。
更に歩を進めると、いよいよ先に進めない程に魔獣達との戦力が拮抗してきた。
「まだ中層だぞ。やはり悪魔の王の影響だ。こんな雑魚がこれほど強くなるとは」
「カンザ、このままだとまずいわよ」
近接戦闘のホールと遠距離型のリルーナは、既に会話をする余裕すら無くなっている。
「くそ、ここは一旦撤退だ」
最後尾に位置していたリルーナは、一応退路を確保していたので問題なくこの場は切り抜けることができた。
もちろんカンザの掛け声と共に、我先にと撤退を始めるパーティー一行。
スキルの力に物を言わせて、全力で上層階を目指す。
こうなると、拙い連携もとれるわけもなく、怪我を負いつつ何とかダンジョンから脱出することに成功した。
国王から改めて支給されているポーションにより傷を癒しつつ、カンザは今日の鍛錬を終了することにした。
「今日はこれ位にしておこう。一応新しい聖武具にも慣れただろう?」
カンザは、最近続いた長距離の移動や、急な武具の変更のせいでうまく動けない状態になっている所に、魔族の王による魔獣達の活性化が重なって、以前は踏破できていたダンジョンの中層で撤退する羽目になったと思っている。
魔獣の活性化はある意味正解だが、抑制された力が解放されたに過ぎない。
その事を知ることになるのは、別のパーティーと合同で再度ダンジョンに挑んだ時に分かる事になる。
皆様の応援のおかげで、3月28日ハイファン4位になることができました。
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