カンザ一行とクレースとファミュ
沢山の方に読んでいただけると、やる気が出てきます。
ありがとうございます。
誤字報告もありがとうございました。
ソレッド王国最強の二人であるクレースとファミュがキグスタの家に住むようになってから数日が経つ。
この二人も隣国であるアルバ帝国で冒険者登録をして、冒険者レベル0と書かれた鉄で作られたカードの表記を見て楽しそうにしている。
もちろんキグスタと同じだからだ。
そこには、元王女であるナタシアも含まれる。
実は本気を出せばあっという間に上位のレベルに行ける最上位スキル持ちの二人だが、そんな勿体ない事はしない。
キグスタと一緒!と言う所が重要なのだ。
そんなある日、森での聖武具取得を諦めたカンザ一行が、再びキグスタの家に来た。
実は、前回の大敗から何の対策もできていないのだが、ギルドを含めて村民から一切相手にされなくなっているので、精神的なダメージを負っているだろうと言う期待があったのだ。
実際は若い女性三人とキグスタ、仲睦ましい両親、更には所々超常の者達・・・・・・と言った面々で面白おかしく生活しているのだ。
食料や娯楽品は隣国のアルバ帝国で調達し、時々別の国にいって観光までしている始末だ。
ドンドンと扉を殴りながら大声で叫ぶカンザ。
毎度になるが、すでに超常の者達による情報展開があり、この家にいる面々はカンザが来る事は知っていた。
「おい、いい加減に罪を認めて王都までこい!フラウやホール、リルーナの恩情すら無視しているのがわからんか?」
カンザの訳の分からない暴言を初めて聞いたクレースとファミュ。
真実を知っているからこそ許しがたい暴言なのだ。
青筋を浮かべて、武神ソラリスから貰った黄金の剣と黄金の槍を手に立ち上がる。
「ここは私達に任せてくださいな。丁度この槍の感覚を試してみたかったんですよ」
「偶然だなクレース。私もこの剣を試したくてな。ウズウズしていたんだ。間違ってあの世に送ってしまっても問題ないだろう?」
全員がキグスタを見つめる。いや、二階にはいない両親を除いてだが。
「いや、勢い余ってだったら・・・・・・仕方がないのかな?でも、二人が本気でやったら生き残る可能性なんてゼロだし・・・・・・いくら殺されそうになったとは言え、この場所で死なれるのもちょっとイヤですね」
「キグ坊は優しいな。わかった。ギリギリ死なないようにしておいてやる」
「フフフ、キグスタ君は甘いのですね。でもその甘さも好きですよ」
スキップするように一階におりて、キグスタの両親に軽く事情を話して玄関の扉を勢いよく開ける二人。
その姿をみたカンザは、扉を叩く拳を握った姿勢で動きを止めてしまった。
「カンザ!お前、私が御厄介になっている家に騒がしくも突撃してくるとはいい根性してるじゃないか。少し調教してやろう」
「他の面々も同じ穴の狢ですね。少々オイタが過ぎるようなので、私が躾てあげますね」
「何故、<剣神>と<槍神>がここにいる!!」
カンザは扉から距離を取り、他の面々も武器を構えて臨戦態勢となる。
だが、最強の二人は余裕の態度を崩さない。
「私達がどこにいようと勝手ではないですか?逆に聞きたいですね。なんであなた達はここにいるのですか?」
「俺達は王命でここにきているんだ。俺達の邪魔をすると言う事は、王命に逆らうと言う事だぞ」
カンザ達は、ある意味国家を背負っていることになる。
つまり、国に対して反抗する気があるのか・・・・・・と聞いているのだ。
だが、既に国王に唾を吐いたような状態になっている二人には脅しにすらなっていない。
「おいカンザ!お前はバカだな。私達にそんな脅しが通じると思っているのか?これは調教のレベルを上げる必要があるな」
最上位スキルである<剣神>を持つファミュが獰猛な笑みでカンザを見つめる。
「クッ、こうなったら仕方が・・・・・・その武具は!!!」
万が一が起こって勝てるかもしれないと戦闘を開始しようとした時に、ファミュの手に納まっている黄金の剣を見てカンザは驚愕する。
同じくクレースも黄金の槍を持っているのを確認したカンザ一行。
明らかにキグスタの両親が持っていた武器とは違うが、同じような力を感じるのだ。
最上位スキル持ち、そして更には破格の性能を持つ武具を手にしている。
この状態を理解してしまったカンザ一行は、ポッキリと心が折れる。
その場に震えながら膝をつくが、クレースとファミュはそんな相手を見て情けをかけてくれるほど甘くはない。
先ずはカンザ。
ファミュが片手で強引に持ち上げると、以前フラウが住んでいた家に向かって放り投げた。
轟音と共に家に突っ込むカンザ。
「「「ひぃ・・・・・・」」」
怯える残りのパーティーメンバー達。
ファミュはカンザの反撃を待つために、崩れた家の方向を睨みつけている。
クレースは残りの三人をどのように料理しようか思案している所だ。
中々良い調理方法が浮かばずに、悩んでいる時間だけが過ぎていく。
そこに、轟音を聞いて驚いた村民が駆け付ける。
当然ギルドマスターや村長もその場に来た。
「何をしているんだ。お前、いやあなた方は・・・・・・なぜカンザ様のパーティーに向かって攻撃をしているんですか?」
ギルドマスターは<剣神>と<槍神>の二人を知っている。
そして、王命によってキグスタの両親を捉えるためにナルバ村に来たと思っているのだ。
だが、その二人が武器を持ってカンザ一行と対峙している。
カンザはこの場では確認できないが、<剣神>が睨んでいる崩れた家の辺りにいるのだろうと判断した。
「お前がギルドマスターか」
<剣神>の声に縮みあがるギルドマスター。
「お前もキグ坊の御両親に面白い事をしているらしいな。冒険者ギルドとして特定の冒険者のみ取引をしない。中々のクズっぷりだ。お前にも調教が必要のようだな」
「「「うわ~」」」
何故かこの場に集まってきた村長を含む村民も、全員ファミュの声を聴いた瞬間に蜘蛛の子を散らすように逃げ出してしまった。
そのそばで、ナルバ村出身の三人は<槍神>であるクレースに国王から借りている武具を全て破壊されていた。
「お、その手があったか」
嬉しそうにファミュもカンザの手にかろうじて残っていた武具を粉々にした。
「お前ら、あまりにも弱すぎるからこの辺で勘弁しておいてやる。文句があるならいつでも来い」
「本当、がっかりしました。何の試しもできませんでしたね」
まるで虫けらを見るような目でカンザ一行を見ると、踵を返してキグスタの家に帰っていった。
残されたのは、家族と住んだ記憶がかろうじてある家を粉砕されたフラウ、その家を身をもって粉砕し、泡を吹いているカンザ、未だに震えて立ち上がる事ができないホール、気迫だけで白目をむいて気絶させられたリルーナだった。
キグスタの家に戻った二人は消化不良だった。
「キグ坊、あいつらはダメだ。弱すぎる。それに仲間を助けようとする動きすら見せない」
「本当ですよキグスタ君。私なんかあんまりにも弱すぎるので、何もできなかったんですから」
とそんな感じだったのだ。
屈辱の敗戦を喫したカンザ一行。かろうじてまともに動けるようになったホールとフラウが、カンザとリルーナを背負ってリルーナの家に戻る。
こうなると、村民たちはキグスタの家に一切ちょっかいをかけようとはしなかった。
次はわが身である・・・・・・と知ったからだ。
キグスタの両親が視界に入ると、一目散に逃げだすのだ。
「お父さん、これじゃあもうここに住めないかもしれませんね」
「だが、俺達がいなくなったら村は魔獣に飲まれるぞ?」
一応、村では一番の戦績をたたき出していたキグスタの両親だったのだ。
このような扱いを受けても、他の村民の心配ができる心があった。
「そうは言っても、キグスタを信用してくれませんでしたし、ギルドもあんな状態ですよ?自業自得じゃないですか?」
「そうかもしれないな・・・・・・」
「もう、お父さん!!実はもう一つ理由があるんです。フラウの件があって諦めていたキグスタの兄弟。もうここにいるんですよ?」
そう言って、慈愛の笑みでお腹をさするキグスタの母親だった。
ハイファンの4位になることができました。
嬉しいです。ありがとうございました!!
 




