<槍神>と<剣神>
誤字報告、ありがとうございます。
本当に助かっています。
ホントはしっかりしないといけないですよね・・・ごめんなさい。
謁見の間で、国王を前にしても畏まる事もないソレッド王国最強の二人。
「フフフ、ねえファミュ、私耳がおかしくなったのでしょうか?私の耳には、カンザ一行がキグスタ君の御両親を奴隷にする事に同意した・・・・・・って聞こえました」
「安心しろクレース。いや、安心はできないが・・・・・・私の耳にも同じように聞こえたぞ。なあ、国王!!」
最後に凄みを利かせて国王を睨む<剣神>のファミュ。
「あ、ああ。そう言ったのだ。だがこの決定は覆らんぞ。害を及ぼした行動には罰を与えなくてはならん。そこを曲げては国家としても何れは立ち行かなくなる」
怯える国王を無視して、ファミュとクレースは互いに自分の思ったことをぶつけている。
「なるほどな。あくまで国王はキグ坊が異常な行動を取ったと疑っていないわけだ。目が腐っているとしか言いようがないな。いや、この場合は頭か」
「まったくおかしな話です。特にパーティーメンバーのフラウとか言ったかしら?その娘はキグスタ君の御両親に引き取られた娘と言うではありませんか。恩こそあれそのような提言を行うとは信じられないのですが」
この二人は、報告を受けたような行動をキグスタがとる訳がないと信じ切っていた。
ソレッド王国最強の二人は、人を見る目もそこそこ有ったのだ。
「そうだ、そこだぞクレース。私も違和感を感じていたんだ。だとすると、直接あいつらに真偽を確認する必要があるな。ひょっとすると何かしらの異常状態で操作されているかもしれない。早く正確な情報を得て、キグ坊を助け出す必要がある」
「そうしましょう。国王、カンザ一行は先行してナルバ村にいると言う事で良いですね?」
ようやく二人の会話を終えたと思ったら、勝手に今後の行動が決まっていた。
だが、そんな二人に文句を言える強さを持つ者はこの謁見の間にはいなかった。
「ああ、そうだ。カンザ一行にはキグスタの両親捕縛の命を与えている」
「そして、失敗して逃げた・・・・・・と」
「フフフ、良いじゃないですか。万が一、本当に万が一ですけれど、キグスタ君の御両親を捕縛などしていたら、カンザ達の命はなかったのですから。ついでに国王、貴方もね」
国王の命令には一切従うつもりはない、と言っているのも同然なのだ。
更には国王すらその手にかける・・・・・・と平気で言ってのけた。
「まて、貴様らキグスタの両親捕縛の命を無視すると言う事か?王命だぞ」
「面白い事を仰いますね。私はソレッド王国に仕えてはいませんよ。あなた方が貴族っぽく勝手に祭り上げているだけです。多少のお手伝いはするつもりでしたが、この件に関しましては私の好きなようにさせて頂きます」
「同感だ。文句があるなら力ずくで来い!」
そんな事を言われても、返り討ちにあうのは目に見えている。
なので、国王は別の手段を取ることにした。
「そうか、ならば貴様らに貸与している聖武具を返してもらおうか。最上位スキル持ちだけに、貴様らには二つ与えていたはずだ」
本当は、国王の安全を確実にするために二つの聖武具を与えていただけなのだが、この場では余計な事は言わない。
だが、国王としては手綱を握れない最上位スキル持ちは自らの身に危険が伴うので放逐すると共に、聖武具を回収すれば二人の戦力ダウンになる上にカンザ一行に渡せば戦力アップになるという算段もあった。
「お望みとあらば、こんな剣と杖は返しますよ」
「私もだ」
カンザ一行に渡せる剣、槍、杖、ガントレットが床に投げ捨てられる。
「それでは、ごきげんよう」
クレースは優雅に一礼し、ファミュは国王を完全に無視した状態で謁見の間を出る。
その後、即ナルバ村に向かい始めた二人。
彼女達にしてみれば、ソレッド王国の王都からナルバ村に向かう程度では、大した準備は必要ない。
もちろん今は何の武具も持っていないが、基礎能力が高すぎるのでたとえ素手でも彼女達の行く手を阻める者はいないのだ。
流石の彼女達でも、即日に到着すると言うわけにはいかないので途中で野宿の準備を始めた。
食料は・・・・・・道中適当に狩った魔獣だ。
火は、生活用の小さい炎ならば二人共魔法で生み出せるので問題ない。
もちろん水も同様だ。
そうして食事を終えると、そのまま二人とも寝てしまった。当然見張りなどはいない。
もちろん寝ている状態でも、身に危険が迫ったり何らかの異常があれば即座に起きられる自信があるからだ。
そんな旅程を繰り返し、偶然道中にいる魔獣達や、寝込みを襲おうとした不届きな魔獣は根こそぎ討伐された。
彼女達は異常な速度で進んだので数日でナルバ村に到着したのだが、その間はカンザ達がキグスタの家にちょっかいをかけることは無かった。
もちろん森の中で武具を探し続けていたからだ。
ナルバ村に到着したクレースとファミュ。
道行く人にキグスタの家の場所を聞くが、キグスタの名前を出した瞬間に愛想が悪くなると言う経験をしていた。
「ファミュ、この村の民はキグスタ君のあの噂話を信じてしまっているようですね」
「まったく、浅はかな連中だ」
悲しそうに歩を進め、キグスタの家にたどり着く。
深呼吸をして意を決したように玄関をノックする。
「は~い」
少々間延びした返事が聞こえ、扉が開く。
「どちら様でしょうか?」
もちろんこれはキグスタの母だ。
「私達は、<槍神>クレースと<剣神>ファミュです」
そう言った瞬間に、おっとりとした母親の気配が一気に殺気立つ。
「お待ちください。私達はあなた方に危害を加えるつもりはありません。むしろキグスタ君の味方です」
「そうだぞ。あの国王からふざけた命令を受けたので、それを蹴って事情を確認しに来たんだ。もちろん私達はキグ坊が乱心したなどとは思っていない」
最上位スキル持ち二人に最大の警戒を取らせるこの母親。
ただ者ではないと瞬時に理解したが、今はキグスタに関する情報収集が最優先だ。
「少しここでお待ちいただけますか?」
キグスタの母親は、クレースとファミュの件をキグスタに伝えるために一旦扉を閉めて二階に上がる。
が、当然そんな事情は超常の者達から教えてもらっているキグスタは、階段の途中まで降りてきていた。
「母さん、あの二人は俺の仲間?いや、姉さんみたいな人なんだ。ヨハン達も問題ないと言っているので、二階に上げてくれない?」
「ヨハンさん達がそう言うのならば問題ないわね。わかったわ」
こうして、ソレッド王国最強の二人はキグスタと再会することになる。
「キグ坊、無事だったか。心配したぞ」
「キグスタ君、ファミュの言う通り心配したんですから。でも無事でよかったです」
「ご心配をおかけしました。でも俺はこの通りピンピンしてますから大丈夫ですよ」
そんな話をしながら本当の状況を説明する。
怒りでどうにかなりそうな彼女達だったが、話が進むにつれて怒りよりも驚きを隠せなくなってきた。
そう、ヨハン達の話と<統べる者>の話だ。
その途中で、異空間からナタシアも現れる。話に益々現実味が帯びてきたが、彼女達はナタシアの出現で驚きの感情よりも羨ましさが先行したようだ。
「ナタシア王女?行方不明と聞いたが、ここにいたのか。先見の明があるな。いや、先を越されたと言うべきか・・・・・・」
「流石は王女ですね。キグスタ君の近くにいたなんて・・・・・・羨ましい」
キグスタは全ての話を明らかにした。両親の最上位スキルと武神ソラリスが作った武具の事、魔王や魔神は存在しない事。
もちろんヨハン達の意見も聞いて、問題ない事を確認した上でだ。
「そういえば、二人は武器はどうしたんですか?」
「国王が返せと言うから返してやった」
「そもそも無理やり押し付けてきたくせに、勝手ですよね?」
となると、この二人には良い感情しか持っていないキグスタと超常の者達がとる行動は決まっている。
「ソラリス!」
「主、ここに」
目の前に自分達に気配を悟られないまま現れたソラリスを見て、クレースとファミュはキグスタが話してくれた超常の者達の存在を確信した。
「この二人に父さん母さんと同じレベルの武器を作れるか?」
「もちろんだ。お任せを主。明日には仕上げよう」
「と言う事で、楽しみにしてくださいね。今までのお礼ですから!!」
そのまま二人は両親とも打ち解け、キグスタの部屋の中の別の異空間で生活を始めることになった。
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愚作ではありますが、他の作品も一読いただけると嬉しいです。
伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す。異母兄よ、国王よ、そして防壁に守られている貴族の連中よ、最早お前達は赤の他人だ。自分の身は自分で守れよ!!
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