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王都での日々

まだ続きます!!

……そして、王都に来て修行を開始してから三年後……


 相変わらず修行の日々を送っている。

 より実践に近いダンジョンの攻略を行うことで、連携技術を上げる事を目的としているようだ。


 こんな状況に三年も置かれれば、()のおどおどした性格も少しは改善される。

 これが俺にとっての唯一の収穫と言っていいだろう。


 もちろんこの三年の間、王都の研究者達が必死になって<統べる者>の情報を集めたり俺自身を調査した。

 その結果、<統べる者>を持っていた人物の情報が少しだけ集まったが、そのスキルはスライムを扱うことができると言ったレベルの事しかわからなかったのだ。


 今俺達のパーティーに所属しているのは、


  近距離攻撃 :<剣 聖>フラウ

  中距離攻撃 :<槍 聖>カンザ

  遠距離攻撃 :<魔 聖>リルーナ

  超近距離攻撃:<拳 聖>ホール

  運   搬 :<統べる者>キグスタ(俺)


 だ。村から一緒に王都に来たフラウ、ホール、リルーナと一緒のパーティーを組めると知った時は嬉しかったのを思い出す。


 こう改めて確認すると、かなり浮いているな・・・俺。

 しかし、あれほどの才能があるフラウでさえも、この厳しい三年の修行でも最上位スキルを得ることはできていなかった。

 そう簡単になれるもんじゃないと、改めて思い知らされた。


 そうして、ダンジョン内での修行もひと段落して、いよいよ俺達パーティーも他のパーティーと同じように魔族の王を倒す旅に出ることになった。


 実は、俺以外のパーティーメンバーにはこのソレッド王国より聖武具を与えられている。

 その聖武具が数年前に光り輝いたらしいのだ。


 何もない状態で聖武具が光る・・・これは、魔王や魔神が今世に顕現したことの証明であるらしいのだ。


 なので、今の選抜メンバーは、魔王か魔神または両方・・・顕現しているとされる魔族の王を倒す必要がある。


 正直俺は、父さんと母さんの話から、いきなり討伐するのではなくお互いに分かり合える点を探すべきではないか・・・とパーティー内で言ったことがある。


 その時は、魔族は悪と言う凝り固まった考えからか、全員(・・)から激しく反発されたのを覚えている。

 もちろんその中に、フラウもいたぞ。


 最近俺は、フラウと少し距離をとっている。いや、取られていると言った方が正解か。

 何だか修行をしていく中で、<槍聖>であるカンザと中々いい関係になっているようで、そこで色々吹き込まれているようだ。


 別にそれ自体は俺も反対はしない。色々な考えがあるだろう。

 だが、父さんと母さんから教えてもらった情報に対して、真っ向から激しく(・・・)反対するのは少々気に障った。


 そんな状態が続けば、他のパーティーメンバーからも煙たがられてくるわけだ。なんと言っても、スキルからして非常に怪しい俺が浮いているのは事実だからな。スライムが常に肩にいるし。


 それでも俺達は使命があるので、旅を続ける。とはいえ、常に移動しているわけではない。ある程度の期間、町を拠点として、近場のダンジョンの攻略や近隣の魔獣の討伐を行っている。


 ダンジョンを攻略すれば、人々の安全が確保されるし魔族側の戦力を削ぐことができる。

 一方、冒険者の生活の糧を潰すことになるので、ある程度危険なダンジョンのみをターゲットにして攻略している。


 そんな旅を続けていると、攻撃を一切しない(できない)俺への当たりは強くなる一方で、拠点としている町のギルドへの報告や攻略物資、ダンジョンの情報収集等の雑務は全て俺一人で行う事になっていった。


 とあるダンジョン攻略後なんかは、討伐時のドロップや魔獣の素材を運ぶのも全て俺、ギルドに報告するのも全て俺、そのおかげで他のメンバーよりも宿に帰還するのが相当遅れたが、あいつらは既に飯食い終わって夢の中。


 俺はそこから飯、風呂、そして翌日の準備、日課の鍛錬で睡眠時間が相当削られているので、翌朝少々遅れたら怒涛の叱責、そして朝飯抜きと来た。


 俺はお前らが楽をしているときに必死で仕事してるんだよ。役割分担があるだろうが!!と大声で叫びたくなったが、抑えておく。

 悔しいが戦闘ではこいつらにはかなわないし、なぜか報酬もこいつらが握っているので、歯向かえないんだ。


 そんな悶々とした日々を過ごしているある日、ダンジョンの最下層のボスの部屋に全員が入り、部屋の入口の扉が閉まって表れた魔獣が下級悪魔だった。


 俺以外の全員が必死で攻撃をするが、その悪魔は全ての攻撃を受けても一切のダメージを受けなかった。

 このままでは全滅だな・・・と後ろから状況を確認できる俺は思ったのだが、その悪魔、何を思っているのか一切こちらに攻撃をする素振りを見せないのだ。


「これはまずいわよ。一度撤退よ!!」


 <魔聖>を持つリルーナが叫ぶ。

 普通はボス部屋からは、ボスか冒険者が死ぬまで出ることができないが、万が一の時のために帰還の魔道具を人数分購入して渡しておいたのだ。


 この魔道具、これまで攻略した全報酬の半分という、とてつもない大金が必要になるのだが、安全には代えられない。

 渋るメンバーに必死でお願いして金を出して貰った。

 あの時はいつも以上にさんざん罵倒されたな・・・


 そう思いながら、俺も帰還の魔道具に魔力を送って起動させる。

 これは一回こっきりの魔道具なので、また土下座の勢いで購入を頼まなくちゃいけないのか?と暗雲たる気持ちでふと悪魔を見ると、こちらに向かって頭を下げているように見えた。

 いや、きっと何か足元を確認しているんだろう。


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[一言] とあるダンジョン攻略後なんかは、討伐時のドロップや魔獣の素材を運ぶのも全て俺、ギルドに報告するのも全て俺、そのおかげで他のメンバーよりも宿に帰還するのが相当遅れたが、あいつらは既に飯食い終わ…
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