カンザ一行
アクセスが増えて嬉しいのでもう一話!
俺は上位スキル<槍聖>持ちで貴族でもあるカンザだ。
更に付け加えるならば、魔族の王を滅することができる選抜メンバーのトップパーティーを率いる英雄だ。
その俺が……あんなスライムしか使役することができなかったクズ中のクズである<統べる者>などと言うスキル持ちのゴミクズ両親に手も足も出なかった。
フラウ達の話だと、あいつらは<剣術>と<魔術>しか持っていないはずだ。
そんなチンケなスキルでこの俺様達にかなうはずがないんだ。
人族最強パーティーの俺達が、たった一人に手も足も出ない……
こんな事はあってはならない。
だが、この腹の痛みは現実だ。俺と同じく腹に痛みを抱えつつ一先ずギルドに向かっているパーティーメンバー。
「なんでキグスタの両親があんなに強くなっているんだ?」
「三年前までは私に手も足も出なかったのに……」
「私の<魔聖>でも何もできませんでした。それに、いまだ<精霊術>も使えませんし……」
ナルバ村出身の平民どもが何やらブツブツ言っていやがるが、俺には全ての答えが出ている。
「そんな物、武具の性能差に決まっているだろうが!俺達が持っている武具は所詮人族が作った物。対してあいつらが持っていた物は明らかに異質だった。聖武具の中でも相当上位に位置するだろう。そうでなければ俺達上位スキル持ちに反撃できるわけがない!!」
「やっぱりそうか。武具に頼るなど汚い奴らだ」
「でも、どうやってそんな物を手にいれたの?」
「私も見た事がないわ」
そう、そこだ。いつどうやって手に入れたかが重要なんだ。
二つも聖武具がある場所……あの雑魚が三年程度で入手できたんだ。俺達が同じ場所に行けば相当上質な聖武具が即手に入るに違いない。
これで聖武具の問題は解決できるかもしれない。しかも相当な戦力増強と言うおまけつきだ。
とすると……王都でふんぞり返っていやがる<槍神><剣神>にも十分対抗できると言う事だ。
なんと言っても<剣術>如きがこの俺様達上位スキル持ち四人を相手取って無傷だったんだ。
それほど力を与えられる聖武具をこの俺様が持てば……フフフ、夢が広がる。
一番手っ取り早いのは、あいつらから聖武具を奪うのが良いが、あの強さ、そして持っていた武具は剣と杖だ。槍ではない。
結果、リルーナとフラウの戦力増強にはなるのだが、一時的とはいえ俺よりも遥かに強くなるのだけは許せない。
聖武具を手に入れる順番は槍が一番目が理想なのだ。
「良し、決めたぞ。あの聖武具をクズの親玉がどうやって手に入れたのかを調べる。そうすれば俺達も最上級と言っていい聖武具持ちになれるはずだ」
「そうね、でもどうやって調べるの?」
「正直あいつら強かったからな。直接聞いてもダメだろうな」
「じゃあギルドで最近の行動を聞けばいいんじゃないかしら」
ほんとにこのバカ平民どもは……今さっきまともにやりあった相手に聞くなんてできるわけがないだろうが。
最後のリルーナだけは真面な事を言っている。
……フラウの次はリルーナでも良いかもしれないな。所詮は平民。本当はナタシアがいれば最高だったんだが、次を見つける繋ぎにするか?
いや、だが今はこのメンバーの中での不協和音はまずいな。少しの我慢だ。槍の聖武具さえ手に入ってしまえば、リルーナに手を出してホールが何か言ってこようが、瞬殺してやれる。
そう考えていると、怒りに打ち震えていた心も落ち着き、ギルドに到着する。
本当にしけたギルドだ。流石は辺境。小さいし汚いし……本当は俺のような高貴な出の英雄が足を踏み入れていい場所ではない。
「カンザ様、如何しましたでしょうか?」
こいつはこのギルドの長だ。
俺達の到着を知って即出迎えるその態度は合格と言ってもいいだろう。
だが、むさくるしい男であるところはマイナスだ。
「ギルドマスター、知っての通り聖武具損失の原因であるキグスタの責任を取らせるために、その両親が奴隷になった。その為に王都に連行するように国王陛下から王命を受けたのだが……あいつらはいつの間にか最高傑作と言っても過言ではない聖武具を手に入れていた。対して俺達は人族の作った武具だ。残念ながら大きな武具の性能差で連行することはかなわなかったのだ」
「カンザ様一行が……そうであれば、王都から<槍神>や<剣神>持ちの方々を招集する必要が出てきてしまうと言う事でしょうか?」
やはりド田舎のギルドマスターだ。その程度の対策しか取れないか……
「そうではない。良いか、あいつらは<剣術>と<魔術>しか持っていないはずだ」
頷くギルドマスター。もちろんあのクズ両親もこのギルドに登録していたはずなので、スキルの情報は持っているだろう。
逆に言うと、ギルドマスターがここで反論していないと言う事は、やはり持っているスキルに間違いはないと言う事だ。
「そんな奴らが得られることができる聖武具。どこでどう手に入れたかがわかれば、選抜メンバーである俺達も容易に最高級の聖武具を手に入れることができるのだ」
「そうか、そうですな。それでは早速調査致しましょう。おい、キグスタの所の二人……最近のクエストを調査しろ。それと村長の所に行って、何か情報がないか聞いてこい!」
初めからそうすれば良い物を、全く平民は愚鈍だな。
きっと調査も時間がかかるのだろう。
「報告が来たら、暫くリルーナの家にいるから教えてくれ」
「承知いたしました」
こんな辺鄙な場所には滞在したくないが、王命や聖武具の事を考えると留まる以外の選択肢はない。
「お父さん、お母さん、ただいま~。ホールとフラウ、パーティーリーダーであるカンザも一緒よ!」
「おお、久しぶりだな。三年ぶりか。活躍しているみたいだな」
「おかえりなさい。カンザさんも初めまして。それにしても大変だったのね、まさかキグスタがあんなことになるなんて」
久しぶりの両親との再会か……俺は三年以上実家には帰っていないが、聖武具を手に入れて魔族の親玉を始末すれば……あの家の当主になってやっても良いな。
栄えある未来に想像を膨らませている間も、田舎者達の会話は続いている。
「王都のギルドからこっちのギルドに話が合ったみたいで、キグスタの事色々聞いたのよ。本当に大変だったわね」
「そうだな。まさかそんなに足を引っ張るやつだったなんてな。だが安心しろ。もうキグスタはいないんだろ?それに、その罰と言うわけではないが、キグスタの所はもうこの村のギルドでは取引できない。それに村民も相手にしないので、生活することは厳しいだろう。お前達に要らぬ苦労をさせた罰だな」
成程な。そこまでの対策が打てているのか。
ギルドで取引ができないとなると……かなり損をするが商人と売買をする方法もあるけど、所詮はド田舎。商人等殆ど来ることは無い。
とすると、あいつらは自給自足以外に生活をする方法が一切ないと言う事だ。
この村から出ようにも、あいつらレベルのスキルではある程度の物資が必要になる。その物資を手に入れる方法がないのだから八方塞がりだな。
……いや、待て。あの聖武具があるのでひょっとするとこの村から容易に出ていけるかもしれない。
「ホール、あいつら聖武具の力に物を言わせてこの村を脱走する可能性がある。ギルド長に監視をつけるように言っておけ」
危なかった。流石は俺だ。これで抜け穴は何もない。
……だが、いくら監視をつけても余裕で逃亡しようと思えばできる。何の意味もない事をカンザは理解できていなかった。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
ブクマや評価を頂けると嬉しいです。
完結済みの 前世も今世も裏切られるが、信頼できる仲間と共に理想の世界を作り上げる
https://ncode.syosetu.com/n8270gl/
も一読いただけると嬉しいです。




