カンザ一行ナルバ村に到着する
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聖武具を得ることができずに悪感情が増加して、キグスタの両親にその捌け口を向けるため、カンザ一行はナルバ村に急ぎ移動していた。
そして、到着した時にギルドで聞いた情報は、ナタシア王女が王族離脱宣言の手紙を残して失踪したので、捜索願が出ていると言った物だ。
カンザは一瞬何のことか理解することができなかった。
カンザにとってはフラウも良いが、フラウはあくまで平民。その点ナタシアは自分にふさわしい王族の血を持ち、美しい美貌、そして柔らかな性格。
全てが全能の自分にふさわしいと疑っていなかったのだ。
初めてフラウを見た時は相当気に入っていたのだが、飽きが来たこと、そして邪魔者のキグスタも殺した(と思っている)ので、あんなクズと仲良くしていた平民はいつかは捨てる気だった。カンザ自身としては、平民をかまってあげている選ばれた者……と言う気持ちなのだ。
その自分に最もふさわしい相手であると思っていたナタシアの失踪。しかも、王族を離脱して……。
全く理解することができなかった。
カンザはナタシアの事を考えるが、思い出されるのは、選抜メンバーの中であのゴミであるキグスタにしょっちゅう話しかけている姿。
イライラが募りキグスタに八つ当たりをしようと思っても、キグスタは既にいない。
だが、キグスタの両親はこれからボコボコにした上で奴隷落ちだ。
その奴隷も、先兵と言う死亡率が極めて高い奴隷にするよう国王に進言して採用されている。
虹金貨10枚を支払えなければ……だが、こんな村に住んでいる村民が払える額ではない。
当然、王都に居を構える貴族でも出せる額ではないのだ。
少々落ち着きを取り戻すカンザ。
「おい、ナタシア王女が失踪したらしい。さっさと俺達の用事を済ませて捜索に乗り出すぞ」
驚く選抜メンバーをよそに、速足でギルドを出てキグスタの家に向かう。
慌てて後を追うようにフラウ、リルーナ、ホールも続く。
キグスタの家には、その失踪したと言われているナタシア、死亡したと思われているキグスタ、そして<剣神>と<魔神>を持っているキグスタの両親、更には超常の者の内の一体、獣神ソレイユ、そしてキグスタの執事である主神であり魔神であるヨハンが控えている。
因みに、ヨハンは人族から魔神と呼ばれているが、当然スキルの<魔神>とは別物だ。
スキルの<魔神>は、<魔術>の上位スキルだ。
キグスタ達は、皆でヨハンの入れたお茶を美味しく飲んでいる。
「ヨハンさんの淹れてくださったお茶はとっても美味しいわね~」
「本当です。王城でもここまでの味は経験がありません!」
キグスタの母とナタシアが褒めちぎるので、ヨハンとしても嬉しいのだろう。少々表情が緩んでいる。
しかし、即その表情は険しいものになる。
「皆さま、お寛ぎの所申し訳ありませんが、カンザ一行がこちらに向かっております。道中で仕留めますか?」
「我が主を裏切り、あまつさえ殺害しようとしたのです。許すことはできませんね。道中目につかないように始末しておきましょうか?いえ、目につくようにでも良いですね。フフフ」
至高の主であるキグスタに対する行いを知っているヨハンとソレイユは容赦がない。
もちろんこの場に顕現していない超常の者達も、もしキグスタがこの場でヨハンやソレイユの提言に許可を出したら、我先にとカンザ一行を細切れにしに行く気満々だ。
「フフフ、お二人共大丈夫ですよ。フラウ達は私達に用事があるのでしょう?それならば私たちがキチンと対応しますよ。ねえ、お父さん?」
「その通りだな母さん。と言う訳で、皆さんはどうぞこのまま寛いでいてください」
キグスタも、両親は最上位スキルを得ているのであまり心配はしていないが、やはり万が一は無くしておきたいと思っている。
「ヨハン、ソラリスの武具は出来上がったのかな?」
「少々お待ちくださいませ」
以前アクトがキグスタの両親に武具を作らせる……と言ってどうなったのかを確認していなかったのを思い出したキグスタは、ヨハンに進捗を確認した。
すると、至高の主であるキグスタの声を確認したソラリスは即現れた。
「主、待たせてすまなかったぜ。御両親にはこの私の最高傑作を持っていただこうと思う。あのカンザとその一行に目に物見せてくれ」
見た目は麗しいが、少々言葉が荒い武神ソラリスが黄金に輝く剣と、同じく黄金に輝く杖をキグスタの両親に渡した。
「こんな素晴らしい物を頂けるのですか?」
「これは……手になじむ」
「最上位スキルの<剣神>と<魔神>の力を完全に受け止めることができる武具だぜ。もちろんご両親以外が使う事はできないようになっているから安心してくれ」
「ソラリス、せかしたようで悪かったね。ありがとう」
「ふぇ、主、私はそんな……」
キグスタからお礼を言われたソラリスは、とろけるような笑顔を見せてモジモジしている。
あまりの嬉しさにどうして良いのかわからなくなっているのだ。
当然ヨハンから指導が入る。
「ソラリス、もう下がりなさい」
残念そうな目をしながら、その場から消えるソラリス。
「それじゃあお父さん、こんなに素晴らしい武具も頂いたのでフラウ達を待っていましょうか?」
「ん?ああそうだな」
剣に見惚れているキグスタの父は、母から話しかけられて慌てて返事をし、二人で一階に降りていく。
ヨハンの時間調整が入っていたのか、キグスタの両親が一階に降りてあまり時間が経たない内に玄関を激しく叩く音と大声が聞こえる。
「おい、ゴミの生みの親、いるのはわかっているんだ。さっさと出てこい!」
ゆっくりと開く扉。そして中からキグスタの両親が出てくる。
両親の目には、この村出身の良く知った顔、ホールとリルーナ、そして自分の子供として育て上げたフラウが見える。
最後に視界に入ったのは、一際騒がしいカンザだ。
「まったく楽しく寛いでいたのに何かしら。それにゴミとは何のこと?育ちの悪い者は言葉使いもわからないのかしらね?」
「ふざけないで!クズと言えばキグスタの事しかありえないでしょ?そもそもあいつは私たちの聖武具をダメにしたのよ。その責任をとって虹金貨10枚徴収してくるように国王陛下から言われたのよ」
母親の軽い煽りに反応したのはカンザではなくフラウだった。
フラウの反論に少し残念そうな顔をしたキグスタの両親だが、もう何を言ってもダメだと判断したのか深く息を吐きだした。
その態度を見て、虹金貨10枚と聞いて絶望したと勘違いしたフラウは続ける。
「虹金貨なんて払えるわけないわよね。なので、私が今までの恩を返して完全にあんた達と縁を切れるように、最後に国王陛下に掛け合ってあげたわ。二人が奴隷になれば虹金貨は免除してくれるそうよ。感謝してよね」
「そうだぞ。同じ村民として最後の情けだ」
「そうよ、私達に感謝してほしいわね」
同じ村出身のホールとリルーナもここぞとばかりに怒鳴っている。
だが、キグスタの両親は動揺することは無い。
「あなた達、本気で言っているのかしら?なぜ奴隷に落とされる事を感謝しなくてはいけないの?親友の子供だからって甘やかしたつもりはないのだけど。お父さん、ここまで育てたのだからもう赤の他人と言う事でいいわよね?」
「ああ、残念だが仕方がないな。まさかあいつらの娘がこんなに恩知らずだったとはな」
キグスタの両親の会話に怒り心頭のカンザ一行。
特にフラウの怒りは激しい。
「赤の他人、望むところよ。これであんた達を容赦なく奴隷に落とせるわ」
「そうだぜ、同じ村出身だからって手加減してもらえると思うなよ」
「フフフ、魔術の実験台になってもらいましょうか?」
村出身の三人は、キグスタの両親に負けるなどとは露程も思っていない。
もちろん、この三人を率いているカンザもだ。
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完結済みのお話もあります。
もしよければ読んでみてください。
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