ナルバ村への帰還
お読みいただきありがとうございます。
ナタシア王女にはああ言ったが、一応俺達も父さんと母さんの所に帰っておけば一安心だ。
あの村は辺境なので、冒険者ギルドも存在する。
そこで冒険者登録をして活動を始めるのもいいかもしれないな。
それに、カンザ一行がナルバ村に到着するまでは結構な時間がかかるはずだ。
それまでに冒険者としての活動を始めておきたい。
そうと決まれば即行動だ。
といっても、ヨハンにお願いするだけだが……
何とも情けないが、俺自身には何の力もないので仕方がないだろ??
「ただいま!!」
「「お帰り(なさい)」」
「お疲れ様でございました。我が主」
父さん、母さん、そして獣神のソレイユだ。
もちろんカンザ一行はこんなに早くここにたどり着ける訳がないので、何の問題も起こっていない。
だが、王都とナルバ村にはギルドがあり、魔道具の通信が行われているので、父さん母さんの捕縛については情報が洩れているかもしれない。
「あ!!俺ここで冒険者登録できないんじゃ??」
肝心な事を思い出してしまった。
きっとナルバ村のギルドでは、俺は最悪の行動を取った使えない選抜メンバーと言う事が知れ渡ってしまっている。
つまり、国宝である聖武具を持ち逃げしたような形になっているのだ。
う~ん、この村から改めてスタートしたかったんだけどな。
「我が君、冒険者登録はソレッド王国でなくても可能でございます」
そうだ。ヨハン達がいれば瞬間に遠く離れた国にも行ける。
だとすると冒険者登録は問題ないが、ナルバ村のギルドに素材の売却はできないな。俺の存在がばれてしまうから。
村民が俺を信じてくれていれば問題ないのだが、ヨハンの情報によればカンザ一行の発言を鵜呑みにしているので、俺の味方は父さん母さんだけらしい。
だが、それは仕方がないのかもしれない。村の仲間と思っていたリルーナとホール、そして妹として一緒に生活してきたフラウまで同じ事を言っているのだから、死人に口なし。俺の評判は地下にめり込んでいるくらい悪くなっている。
この村のギルドに素材を売却できれば、村の経済も良くなるはずだったんだが……
そうなると、素材自体も他の国やソレッド王国の中でも王都やナルバ村から離れた辺境で処理する必要が出てきそうだ。
だが、重ねて言うがヨハン達の力があればナルバ村で売却するのと手間は同じだ。なんて言ったって、どこに行くのも一瞬だしね。
そうと決まれば早速冒険者登録でもするか!!
「父さん、母さん、俺ちょっとアルバ帝国に行って冒険者登録してくるよ」
いくら隣国とは言え、ここからアルバ帝国に行くとなると一か月は必要になる。
だが、超常の存在を目の当たりにしている父さんと母さんは俺の意図を理解しているようだ。
その証拠に、母さんがヨハンにお礼を言っている。
「ヨハンさん、ごめんなさいね。キグスタが我がまま言って」
「いえ、我が君の為に働けることが至上の喜びでございます故、お気になさらぬよう」
一方父さんは、自分の冒険者カードを出して冒険者について教えてくれる。
一応何回も聞いた話だけど、おさらいだ。
・冒険者カードに魔獣の種類や討伐数が記録される。
・魔獣のランクや数によってポイントがあり、一定のポイントになると冒険者レベルが上がる。
・冒険者レベルが上がるとカードの材質が変わるが、ギルドに行かないと変更はできない。
・冒険者カードはどの国でも使える。
と言ったところだ。そして、冒険者のレベルは、
0~20:初心者 鉄のカード
21~40:中 級 銅のカード
41~60:上 級 銀のカード
61~80:極 級 金のカード
81~ :神 級 黒のカード
と言った所で、極級になると一国家に数人しかいないらしく、極級の冒険者が存在していない国家もあるらしい。神級は存在を知らないと言う事だった。
因みに父さんの冒険者カードは銅だ。
選抜メンバーに関しては、冒険者登録をしているわけではないので誰もカードを持っていないと思う。
そもそも登録する暇も自由もなかったのだ。
……俺だけかもしれないが……
で、俺はヨハンにお願いして隣国であるアルバ帝国のギルドに来ている。
所要時間はおよそ三十分。
帝国の中で人目のない場所に転移して、そこから歩いてギルドにたどり着くまでの時間だ。
転移は一瞬、その後歩いての移動に三十分かかっている。
さすがにこの国まで俺の情報は流れていないようで、何の問題もなく冒険者登録は行え、冒険者カードを貰う事ができた。
もちろん栄えある鉄のカードで、冒険者レベルは0!!
心機一転頑張る気持ちの俺には丁度いい。
そして、帰りは人気のない場所に移動するのに十分、転移は一瞬で帰ってきた。
「ただいま。全く問題なく冒険者登録できたよ。見てくれ!栄光の冒険者レベル0!!!これから上がるだけだ!!」
「フフ、そうね。でもキグスタ、無理だけはしちゃだめよ」
母さんに軽く注意を受けるが、俺の事を本当に心配してくれている優しさからのアドバイスだ。ありがたく受け取っておこう。
「ありがとう母さん。それに父さんも。これから頑張るよ」
父さんと母さんは、千年前と五千年前の魔王と魔神の馴初め?いや、真実を既に理解してるので、魔王や魔神が攻めてくる事に関しては一切警戒はしていない。
だが、生活の糧にしている魔獣討伐については万が一があると命を落とす可能性もあるので油断することはないけれど、最上位スキルまで得ているので、かなり色々なことに余裕ができるだろう。
万が一魔王や魔神が攻めてきた時の対策等は考える必要が無くなったのだから。
だけど、その真実を村民を含めて他人に伝えるつもりは無い。
父さん母さんもそこの所は了解してくれている。
なので、直近で問題となるのは……カンザ一行の対応と、ここのギルドが父さんと母さんが討伐した魔獣や魔石を取引してくれるかどうかだ。
もしダメだったとしても、ヨハン達に頼んで他の国のギルドで取引すればいいのだが……いくら一瞬とは言え、一々他の国に行くのは精神的に疲れるかもしれない。
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一方のカンザ一行。
ダンジョンの中で失った聖武具の代わりの聖武具を得ようと躍起になっている。
一応上位スキルを持っており、国王から聖武具とまではいかないが、かなりの武具を借りているので、ダンジョンを難なく進んでいく。
だが、どれだけ魔獣を倒そうが、どれだけ階層を進もうが一向に聖武具は出てこない。
もちろん普通の状態でも聖武具は簡単に手に入れることなどできはしないのだが、焦っている彼らにはその辺りは理解することはできなかった。
そして、今は普通の状態ではない。超常の存在達が聖武具を全て回収している状態なのだ。
どこのダンジョンに行こうが、どこの階層を踏破しようが、決して望みの物が得られる事はない。
「くそっ、ここもハズレか。俺達はその辺にいる選抜メンバーとは違い、最も優れている。そんな俺達が聖武具を持てないなどあってはならない」
「カンザの言う通りよ。でもナルバ村の途中にはもうダンジョンはないわよ」
「カンザ、仕方がない。一旦キグスタの両親を捕縛しに行くか」
「そうね、気晴らしにもなるんじゃないかしら?」
カンザ、フラウ、ホール、リルーナが怒りの捌け口を見つけ、とても人族の希望とは言えない笑みを浮かべる。
カンザ一行は、キグスタの両親が抵抗せずに王都に向かうとしても、攻撃をするつもりなのだ。
そう、カンザ一行からしてみれば、エリートである自分達の聖武具を失った原因はキグスタ、そしてその両親にあるのだから……
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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す。異母兄よ、国王よ、そして防壁に守られている貴族の連中よ、最早お前達は赤の他人だ。自分の身は自分で守れよ!!
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