ナタシア王女に真実を伝える
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当然俺とヨハンは部屋の中にいる。
う~ん、どうするか。ここで突然姿を現してもナタシア王女が驚いて声を上げてしまう可能性がある。
そうすると近衛騎士達がなだれ込んでくるので、落ち着いて話はできない。
場合によっては俺は捕縛されて投獄される可能性すらある。
もちろんヨハンが力を使えばその辺りは解決するのだろうが……あんなに俺の両親の事を庇ってくれたナタシア王女を驚かせたくない。
「どうするか……」
俺の呟きに全てを理解し、即反応してくれるのはやはりヨハン。
本当に俺の執事らしくなってきたと思う。
「我が君。手紙を机に置くのはいかがでしょうか。つまり、軽く事情を説明し、これから目の前に現れるので決して声を出さないように書き綴るのです」
「流石はヨハン。そうしよう」
表情は冷静だが、<統べる者>のおかげで喜んでいる気持ちが丸わかりだが、そこは気が付かないふりをして、ヨハンが準備してくれた紙に軽く事情を書き、最後にアドバイスの通り突然現れても驚かないように書き添える。
ナタシア王女が向かっている机に、手紙を置いておく。
「あら?何かしらこのお手紙」
当然手紙に気が付いたナタシア王女は、不思議そうにしつつも開封し手紙を読み進める。
裏切り行為についても説明しているので、温和な表情しか見た事のないナタシア王女の表情が険しくなってきた。
やがて最後の部分を読むと、突然辺りをキョロキョロしだした。
俺が現れるのを探しているのだ。
ヨハンに魔法を解除してもらい、少々離れたところに姿を現すと本当に嬉しそうな表情で駆け寄り、目に涙を浮かべつつ抱き着いてきた。
こ、これは何という役得だろうか。
甘い香りと柔らかい肌が今俺の胸の中でモゾモゾ動いているのだ。
一応不敬になるといけないので、抱きしめると言う事はしないでおいた俺を褒めてもらいたい。
「キグスタ様、もう二度とお逢いすることができないと思っておりました。こうしてまたお逢いできて本当に嬉しいです」
事情を理解してくれているナタシア王女は、小声で俺に話かけてくれた。
「そうでした!キグスタ様の御両親に危険が迫っています。情けないことにわが父がお二人を奴隷にすると言い、あの選抜メンバー一行が捕縛に向かってしまったのです。早くお助けしなくては」
この行動は、国王の意見を真っ向から否定するもので、たとえ王族であっても不敬罪に問われかねない物だ。
しかし、そんな事を気にする様子は見えない。
ナタシア王女は、なぜここまで俺の味方になってくれるのか不思議でしょうがない。
「ナタシア王女、ご心配頂きましてありがとうございます。ですが全く問題ございません。私の両親はカンザ一行が束になっても傷一つつくことはありません。実力に大きな開きがありますから」
「え、でもご両親は<剣術>と<魔術>をお持ちと聞いています。対してあの一行は上級スキル持ち四人です。現実は厳しいのではないでしょうか?」
普通ならばナタシア王女の言う通りなのだが、何度も言うが既に俺の両親は最上位スキル持ちになっている。
「ナタシア王女、実は私の両親は<剣神>と<魔神>を持っているんです。なので、あんな奴らに遅れを取る訳がありません」
「そうだったんですか?でもあの一行の報告では確かに<魔術>と<剣術>と話していたような……」
最上位スキルを持っている人族は極めて少ない。
それを両親が共に持っていると言っているのだから、すんなりと信じることは難しいのは理解している。
不思議そうな顔をしているナタシア王女にもう少し説明をする。
「少し前までは確かにその通りですが、クラスが変わったんですよ」
「ごめんなさい。疑うわけではないのですが……上位スキルを通り越して最上位スキルになったのですか?」
「はい。その通りです」
俺の答えを聞いても、未だ半信半疑と言ったところだ。
これは身をもって体感してもらわないと理解してもらえないかもしれない。
『我が君、このお方がお持ちなのは<回復術>です。上位スキルでもスキルの名称は<回復術>で、最上位になりますと<聖女>となります』
こっそり教えてくれるヨハン。
つまり、この場でナタシア王女に上位スキルを持ってもらったとしても、名称が変わらないから実感がわかないかもしれない。
こうなってしまうと、最上位スキルを与えるしかなくなる。
以前ヨハン達が俺に教えてくれたので、スキルを与えると決して剥奪はできないと言う事は理解している。
とすると、そうポンポン気軽に最上位スキルを与えるのは問題があるかもしれない。
最上級スキルを得た人が俺達の元を離れて何かした時、対象の人数が多くなってしまうと止めることができない場合があるかもしれない。
それに、この王都でさえ最上位スキル持ちは二人しか存在していない。
<槍神><剣神>だ。もちろんこれはヨハンからの情報。
俺がどう行動するか悩んで少々考え込んでいると、
「キグスタ様、私はあなたを信じます。ですが、いくらスキルに差があるとは言え、何か不測の事態が起こってしまっては申し訳ありません。私が行けば多少の怪我は治せますし、あの一行への牽制にもなるのではないでしょうか」
当然あいつらをけん制した時点で確実に不敬罪に問われることになるが、そんな事を理解していないナタシア王女ではない。
気軽に言ってくれるが、相当の覚悟のはずだ。
「ありがとうございますナタシア王女。ですが、万が一も起こり得ません。優秀な護衛も既についておりますので」
優秀どころか過剰戦力過ぎるのだが、そこは敢て言う必要はないだろう。
「そこ迄仰られるのでしたらわかりました。それでキグスタ様はこれからどうされるのでしょうか?」
「やっぱり両親を見て冒険者にあこがれていたので、一から冒険者を始めますよ」
これは偽りのない事実だ。
なし崩し的に選抜メンバーなどにされて、不遇の扱いを受けてきた三年間。
だが、ダンジョン攻略や人々の為に魔獣を討伐した経験もある。
その瞬間だけは充実していたのが思い出される。
やっぱり俺は父さんと母さんの血が流れているんだ……と感じられた瞬間だったのだ。
「そうですか。では何かあれば遠慮なく私を頼ってくださいね」
改めて言うが、なぜナタシア王女がここまで俺に良くしてくれているかがわからないが、ありがたい申し出なので受け取っておくことにした。
「わかりました。その時はまた同じように手紙を書いたうえで現れることにします」
誰もが見惚れるような笑顔を見せてくれる。それだけで幸せな気持ちにさせてくれた。
そこに、ドアをノックする音が聞こえる。
もちろん俺はヨハンにその情報を教えてもらっているので驚きはしない。
その人が到着するのに合わせるように話を終わらせたのもそのためだ。
ナタシア王女が心配そうにこちらを見ているが、俺は軽く手を振って姿を消して貰った。
王女は少し悲しそうな顔をして俺の方に手を伸ばす素振りを見せたが、すぐに扉が開いた。
「姉上、先ほどまで剣聖様が謁見の間にいたのですね。私にも声をかけてくださればよかったのに……」
「ごめんなさいドレッド。でもまた会える機会はあると思うわよ」
ノックだけで入室の許可がないまま入ってきたのはナタシア王女の実の弟で、剣の道に憧れているドレッド王子だそうだ。
そのため、フラウを神聖化しており、呼ぶときも剣聖様になるらしい。
よし、ここにもう用はない。
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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す。異母兄よ、国王よ、そして防壁に守られている貴族の連中よ、最早お前達は赤の他人だ。自分の身は自分で守れよ!!
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