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キグスタ、ナルバ村に帰還する(1)

まだまだまだまだ続きます。

 俺は3年とちょっとぶりに家に帰ってきた。

 と言うよりも、ヨハンに転移で瞬間移動してもらった。


 何故帰ってきたかと言うと・・・あの元仲間(・・・)が嘘の報告を父さん母さんにしたからだ。


 うその内容によっては、もう少しダンジョンの最下層で<統べる者>についての情報を集めても良かったのだが、あの内容ではそう言う訳にはいかない。


 俺が生きていること、そしてあの連中、残念ながら()妹を含む連中が嘘を言ってること。

 実際は無駄な荷物を散々運ばせた挙句、ボス部屋に放置されたこと。


 ついでに、俺は触れてもいない聖武具を奪ったような事を言っていると言う事だ。


 聖武具に関しては、俺の配下となっている神々が破壊したのは間違いないが、俺が奪ったわけではない。

 そこは余計なことは言わないでおこう。

 そもそもあれは聖武具等ではなく、子供用の玩具なのだが……これも黙っておいた方が良いかもしれないな。


 「はい……」


 明らかに憔悴している母さんが扉を開けて俺をみて固まってしまった。

 そのまま目に涙が溢れて震えている。


 俺は優しく母さんを抱きしめた。


「ごめんな。心配かけた。でももう大丈夫。少し落ち着けたら事情を説明させてもらおうと思って急いできたんだ」

「キグスタ、生きていたのね?フラウが死んだって・・・それに、ボス部屋の前でおかしくなったとも言っていたわよ」


「ああ、その辺りも説明させてもらうよ。でも、俺はおかしなことは一つもしていない。そこは信じてくれ」


 母さんは優しく微笑み頷いてくれた。


「あなた!キグスタが帰ってきたわよ!!」


 嬉しそうに父さんを呼びに行き、再び父さんと戻って来ると、父さんも嬉しそうに右手を差し出してきた。

 俺も右手を出して、固い握手でお互いの無事を確認した。


「じゃあ、こんな所じゃ話もできないでしょ?入って入って」

「ああ、その前に紹介したい人がいるんだ」


 ……人じゃないけどいいよな?……


「あら、ええ??あなた執事さんなんて雇ったの?この三年間で随分と成長したのね?」

「あ、そうじゃなくって、えっと・・・まあいいや。俺の世話をしてくれている執事のヨハンだ」


 ヨハンは美しい所作で一礼した。


「我が君の執事を拝命しておりますヨハンと申します。お見知りおきください」

「わざわざご丁寧にありがとうございます。キグスタは迷惑をかけていませんか?」


「滅相もございません。我が君は、我らが命を懸けてお仕えすべき至高のお方です」

「そ・・・そうですか?そこまでキグスタを思ってくださってありがとうございます」


 母さん、ちょっと引いてるぞ。気持ちはわかるけど……

 これからスキルの話もしなくちゃいけないので、ヨハンが人ではない事を話すことになる。

 とすると、これ以上の驚きが待っているので少しだけ心配だ。


 でも、会っていきなり神様です!なんて紹介できないからしょうがないだろ!!!


 そんなこんなで、久しぶりの我が家の席に座る俺と父さん母さん。

 椅子はフラウの分……一脚余っているのだが、ヨハンは決して座ろうとしなかった。


「我が君にお仕えするのが使命であり生きる意味でございます。そんな私が我が君と席を同じくするなど恐れ多い」


 頑なだ。神故に立ちっぱなしでも疲れないのだろう、と勝手に解釈して、俺は父さんと母さんにこの三年間の惨い扱い、そして最終的にはあのダンジョン最下層で裏切られたことを事細かに説明した。


 途中所々悔しくて、そして悲しくて言葉に詰まってしまったが、なぜかそのタイミングでヨハンがどこから出したのかおいしいお茶とお菓子を出してくれたので、何とか長丁場を乗り切ることができた。


 父さんと母さんは当初困惑していたが、ダンジョン最下層での裏切りの辺りでとても悲しい顔になってしまった。


「あのフラウが……確かに彼らが我が家に来た時は何となく態度に違和感があったんだが」

「あのカンザと言う人が殆ど喋っていたけれど、確かに芝居がかっていたわね」


 二人は俺の言う事を信じてくれたようだ。

 この状態なら、更なる話をしてもいいかもしれない。


「実は、今話した通り、俺が聖武具を持ち逃げしたような形になっているんだ。今まで触れた事すらないけどね。でも、あいつらは王都に言ってそう報告するはずだ。そうじゃないと代わりの聖武具を得ることができないことになるからな」

「フラウも何を考えているのかしら。これではもう完全に縁を切るしか方法がないわね」


 いつもおっとりしている母さんに怒りの表情が見える。

 赤子のころから世話をした血の繋がりがない友人の娘。

 その娘が実の息子をこっ酷く裏切ったのだ。命を奪うレベルの裏切りに最早フラウを許す余地は残っていないのだろう。


「そうすると、王都の連中やあのメンバーですら父さん母さんを糾弾しに来る可能性がある。そんな事は許す訳にはいかない。なので、父さんと母さんに新しい力を得て欲しいんだ」

「そうはいってもキグスタ。俺達はそこそこの年齢だ」

「う、うん!ゴホンゴホン!!」


 突然母さんが大声で咳き込む。


「いやスマン、間違えた。俺だけ少々年齢が・・・・な??なので、これから新たな力を得るとなるとかなりの時間がかかるんじゃないか?」


 なぜか少々汗をかきながら話してくる父さん。母さんには頭が上がらない所も変わっていない。

 俺達が三年間で激変してしまったので、変わらない父さん母さんを見るだけで幸せな気持ちになれる。


「えっと、これから説明する事を落ち着いて聞いてほしい。さっきの話よりも衝撃的だから。あ、でも悪い話じゃないよ。そこは安心してくれ」


 父さん母さんは俺を見て頷く。


「大丈夫よキグスタ。あなたの事は信じているから。ねえお父さん?」

「ああ、もちろんだ。お前は俺と母さんの大切な宝だからな」


 くっ、嬉し過ぎて荒んだ心に染み渡る。少々目頭が熱くなるが何とか堪えることができた。


「じゃあ早速説明させてもらおうかな。実は俺のスキル<統べる者>ってスライムを扱うスキルじゃなかったんだ」

「あら?でも今もスライムちゃんあなたの肩にいるじゃない?」


「いや、それはそうなんだけど・・・<統べる者>にも力の差があって、今までこのスキルを持っていた人達は力が弱すぎてスライムしか扱えなかったんだ。でも俺の<統べる者>は別格らしくて、超常の存在を文字通り統べることができるんだ」

 

 これだけ聞いて、何やら察した父さん母さんはヨハンを見ている。

 ヨハンは恭しく一礼するだけだ。


 とは言え、何もない空間からいきなりお茶やお菓子を出して見せたんだ。

 普通の存在ではないこと位わかっていたはずだ。


「父さん母さんの予想通り、ここにいるヨハンは超常の存在の一番上の立場だよ」

「やっぱり!お菓子もお茶もとても美味しかったものね!!」


 ?……母さんにとっては、美味しいお菓子やお茶を出してくれる人が凄い人になるみたいだ。


「スマンな。話を進めてくれ」


 父さんは慣れたもんで落ち着いている。逆に俺が慌てたよ。


「そ、それでね、実はみんなが持っているスキル、ヨハンを始めとした超常の存在が与えているんだ。だから、ここで父さんと母さんに<剣神>と<魔神>を与えておけば安全が確保されると思うんだけど……」

「あえおりjごいrじょ??」


 驚きのあまり父さんがぶっ壊れた。


「あなた!落ち着いて」  ……パン……


 中々の力で頬をはたかれた父さんは落ち着き?を取り戻した。

 やはり母さんは最強だな。

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