表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/130

再び超常の者達

今日はおしまいです。

 当然その話程度の情報は、その場にいなくとも得ることができる超常の存在達。

 各自が勝手に情報収集をしているのだが、全員ほぼ同時にカンザ一行の腐った行いを把握して、怒りを抑えることができなかった。


 至高の主であるキグスタの両親。その両親を貶めているのだ。

 更に、あろうことが相変わらず嘘を並べ立ててキグスタを悪者に仕立て上げているのだ。


 許せるわけがない。


 特に狙ったわけではないが、あまりの怒りからかありえない程の自然現象を起こしてしまい、カンザ一行の乗る馬車の進行方向に暴風が吹き荒れており馬車で進むことはできなくなっていた。


「チッ、なんでこんなに突然嵐みたいになるんだ。おかげでまともに馬車で進むことができないぞ!」

「確かに異常です。これは魔王か魔神かが顕現したことが原因なのかもしれません」


 かろうじて馬車本体を魔術で防御することに成功したリルーナが比較的落ち着いて回答する。


 だが、馬までは守ることはできていなかったので、これからの移動は自分の足で行わなくてはならない。


 荷物についてはリルーナの魔術で全て持ち運び可能なので問題ないが、いくら上位のスキルを持っていると言っても、野宿、歩き、野宿のコンボは少々辛いのだ。


 当然野宿を行う場合には、見張りが必要になる。

 いつもは何も言わずにキグスタに行わせていた一行だが、ダンジョン脱出の際に手痛いミスをして聖武具を全て破壊されてしまった経験があるので、必ず誰かが見張りを行うようにしている。


 暴風は収まったが、中々激しい雨は収まる気配を見せない。


 一行は一旦ナルバ村に戻ろうとしたのだが、あろうことか村への道は完全に塞がれていた。


 実は、精霊神ハルムが精霊に命じて道を封じていたのだ。

 あのパーティー一行が村に戻ったら、少なくともカンザとフラウは至高の主の両親の家に泊まることになる可能性が極めて高い。

 場合によっては全員が押し掛けるかもしれない。


 宿泊時に更なる嘘を吹き込み、ご両親が更に心を痛める事を危惧した神々の総意によって、行動をおこしたのだ。


 今回は、絶対の主君であるキグスタへの言訳など考える前に行動してしまった。

 と言うよりも、怒りによって既に地上に変異を起こしてしまい、ついでとばかりに行動しただけなのだが。


 もちろんカンザ一行が王都に向かって歩を進め、ある程度距離が離れた段階で塞いだ道は復元することになっている。

 こういったフォローも忘れない。ここを疎かにしてしまうと、キグスタからの覚えが悪くなる可能性があると言う事を、非常に危惧しているのだ。


 カンザ一行は完全に塞がれた道を見て、止むを得ずに王都に向かって歩を進めることにした。


「くそ、歩き辛くて仕方がない」

「まったくだ。いくら俺達でもこんなに歩き辛いとあまり進むことが出来ないぞ」

「服が濡れて気持ち悪い」

「休憩する場所も良く考えなくてはいけませんね」


 愚痴を言いつつも、上位スキルによって底上げされている体力と、今までの魔獣を狩った際に得られた経験値によるレベルアップによって、通常の人ではありえない速度で進んでいく。


 超常の存在達は、面白くなさそうに彼らの情報を得ている。

 もちろん雨は激しさを増したままで、止む気配すらない。

 さりげなく土も歩き辛い様に石を隠していたり、かなり柔らかくしたりと、細かな嫌がらせも忘れていない。


 至高の主の命令がなければこんなチマチマした嫌がらせなどする必要はないのだが、主の命令と主に不利益を与え続けている存在に対する怒りとがせめぎあった結果、微妙な嫌がらせにとどまっているのだ。


 この超常の存在が遊びで人々に与えていたのはスキルであって、レベルに関してはなにもしていない。その為、彼らのレベルは操作することができない。

 更には、与えてしまったスキルは剥奪する事ができないので、忌々しく思っているのだ。


 だが、例外もある。特に<精霊術>はスキルの消失はないが、契約する精霊がいなくなれば使用することはできない。

 魔獣を操る<操術>にも同じことが言えるだろう。


 しかし、カンザのパーティーメンバーで影響のあるスキルを持っているのは、リルーナの<精霊術>だけだ。


 スキルも剥奪できない。レベルにも干渉できない。

 その結果が、あの嫌がらせに繋がっている。


 カンザ一行も、体力に物を言わせてかなりの距離を進むことができたが、雨は一向に止む気配はなく、益々激しさを増すばかりだ。


 既に数時間は歩いただろうと言うところで、野営するにはうってつけの洞窟を見つけて一時的に退避する。


「ふぃ~、ようやく一息つくことができたな。今日はそこそこ進んだので、ここで一泊しよう」

「それじゃあここに必要な荷物を出すわね」


 リルーナが野営に必要な道具一式を魔術で出し、全員で準備を始める。

 テント、毛布、湯あみ用の桶、タオル、食料、水だ。


 いまだに野営の準備に手間取っているカンザ一行だが、何とか準備を整えて夕飯を取り、見張りの順番を決めてそれぞれ就寝した。


 かなり疲れているらしく、見張り以外は即深い眠りについた一行。


 一方神々はある程度の怒りを発散できたのか、それ以上の嫌がらせを行う事はなかった。

 と言うよりも、至高の主の両親の動向が気になってしまい、カンザ一行への興味が薄れたのが現実なのだが……

ブクマ・評価頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ