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最後の戦い(1)

 それぞれの異空間で相対しているのは、


 ヨハンVSフラウ

 カンザVSソラリス

 ウイドVSソレイユ

 アクトVSオリサ

 ハルムVSロゼ


 となっており、最後の戦闘がついに始まる。


 ここはハルムとロゼの外見をしている者がいる異空間。


「ハルム隊長、そんなに二人きりになりたかったんですか?」


 ロゼの外見、そして全く同じ声をしている物体がハルムを煽る。


「フフ、そうですか。それほど自分の力に自信がありませんか。私の知っているロゼであれば、このような状況になれば問答無用で攻撃をしてきますがね」

「え~?なんでそんな事を言うんですか隊長。つれないじゃないですか」


 言いたい事は全て伝えたとばかりに、ハルムはロゼの最後の言葉には一切反応せず、攻撃を開始した。


 ロゼの前後左右上下を囲うように、精霊神ならではの力を使った複数の魔法の攻撃だ。


 至高の主であるキグスタの命令は、余計な口を開く事無く叩き潰す事だ。

 そして何より、長きに渡り自分についてきてくれたロゼが、決して口にしないような戯言を吐く姿を見たくなかったのだ。


 その為、一切の加減を行わずに術を行使したハルム。

 既に転移もできないように結界も張っており、その結界の中央にはロゼだった者。

 それを囲うように無数の魔法が今か今かと攻撃直前の状態で待機している。


 ロゼだった者は焦る。

 多少煽って感情を乱して、更に力を得ようと欲をかいたのだ。

 その行動は、結果的には自分の首を絞めるだけになっていた。


 視界を埋め尽くすような魔法。転移術は一切起動しない。

 近くに見える魔法一つですら、自分の力で相殺する事などできないと判断できるほど圧倒的な力の差がある。


 前回隙をついて致命傷を与える事が出来たので、相手の力を見誤っていたのだ。


「ロゼよ。長きに渡り私と共に活動してくれた事、感謝します。そしてご主人に対する忠誠、見事でした。私はあなたを誇りに思っています。また何れ会える日が来る事を願っていますよ」


 ロゼだった者は、このセリフを聞き終えた瞬間に意識がなくなった。

 まさに成す術がないとはこの事だ。


 ハルムは、ロゼが乗っ取られているのか操作されているのかは直前まで判断できなかったが、その姿をその目で確認して、既に精神体に乗っ取られた事を理解した。


 その為、術式の中に肉体と共に、精神体をも完全に消滅させる術を組み込んでいたのだ。

 結果、ロゼの肉体は完全に消滅し、精神体であった物体もこの世から消え失せた。


「ロゼ、長きに渡り、ありがとう」


 既に勝負はついたのだが、ロゼの姿をしていた者が立っていた場所に座り、かつての忠実な部下に思いを馳せているハルム。

 そこには、ロゼと言う存在をハルムが認識した時に分け与えた精霊が佇んでいた。


「辛い思いをさせてしまいましたね」


 優しく、慈しむように精霊に触れる。最後の攻撃の時点で、ロゼだった者に最後まで付き添っていた精霊を感知していたので、攻撃対象からは外していたのだ。


 この精霊、当然ロゼの異常を感知していたので、一切の命令を聞くかどうか以前に、その存在を認識されないようにしていたようだ。


 思えば四人の部下の中で、一番自分に懐いていたのはロゼだった……と、余計辛くなってしまう事しか思い浮かべる事ができないので、万が一この感情がフラウに流れる事を懸念したハルムは立ち上がり、最後に深く一礼すると、ロゼの忘れ形見とも言える精霊と共にこの場を後にした。


 同時刻、アクトとオリサのいる異空間でも動きがあった。


「私、隊長の事、元から気に入らなかったんですよ。いっつもそっけないし、なんだか雰囲気も陰気で大っ嫌いでした」


 オリサだった者も、アクトを煽って負の感情を手に入れようとしていた。

 ロゼと異なるのは、既に攻撃を仕掛けながら煽っている所だ。


 そんな煽りを聞き続けているアクトは、視線をオリサに向けながら必要最小限の動きで全ての攻撃を躱していた。


「あれ隊長、なんで攻撃してこないんですか?まさか怖気づいちゃいました?」


 更に苛烈な攻撃をしてくるオリサ。

 死神アクトの配下らしく、暗器を多用して攻撃してくる。


 その全てを難なく躱し続けているアクト。

 当然ハルムと同様に、オリサが既に体を乗っ取られている事を理解している。


 その目にかつての忠実な配下の姿を、そしてその耳に、その声を改めて記憶しようとしていたのだ。


 やがて完全に吹っ切れると、ついにアクトは動き出す。


「やっとですか隊長。待ちくたびれましたよ。でも、なんで何の感情も湧いていないんですかね?もしかして薄情なんですか?」


 オリサのセリフに、やはり負の感情を引き出す事を目的にしていると確信したアクト。

 見かけは部下そのものであるが、実際は敵なので情けをかける必要はないのだが、せめて苦しまないように滅してやろうと術を行使する。


 死神にのみに許された術、殆ど反則と言って良い即死術だ。


 自分と同等以上の力を持つ者には効果は無いが、目の前のオリサの姿をした者には間違いなく効果があるだろうと確信し、術を行使した。


「隊長、速くこ・・・・・・」


 話の途中で、オリサの姿だった者は倒れ伏す。


「長きに渡りご苦労であったでござるよ、オリサ。貴殿の忠心、そして雄姿、しかとこのアクトの心に刻まれたでござる。ではさらば」


 その言葉と共に、オリサだった体は消滅する。


 もちろんハルムと同じく精神体も消滅させており、万が一にも復活できないようにしている。


 この異空間には、アクトを攻撃していた時に使われていた暗器が転がっている。

 多数転がっている暗器の内、オリサが好んで使用していた暗器を拾い上げると、大事そうに懐に忍ばせ、異空間を後にした。


 この暗器、ハルムの精霊と同じく、アクトがオリサを認識した時に自らが精魂込めて作った物を渡していたのだ。


 この異空間を去るまで、決して悲しみの心を表に出さないよう、命を懸けて至高の主を守ろうと必死にもがいた優秀な部下を、心中で最大限褒め称えながら……


「いつかまた、共に修行をするでござるよ、オリサ」


 アクトの呟きは、誰にも聞かれる事は無い。


連載中の副ギルドマスター補佐心得、


https://ncode.syosetu.com/n5874gy/


一読いただけると嬉しいです。

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