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最後の戦いに向けて

 キグスタはスライムの防御力や、超常の者達二人の全力回復によって程なく全快した。

 その姿を見てソレイユとソラリスは喜ぶが、そのままハルムとアクトの回復作業に取り掛かった。


 その他の留守番組である超常の者達は、ソレイユやソラリスには及ばないまでも、力はあるので、自発的に全員でヨハンの回復作業を開始している。

 ヨハン自身には意識があり、自分自身でも回復作業を行っているので、こちらも程なく完全に回復する事が出来た。


「まさかあの二人が……おそらく本人の自我は既にないでござるよ。我ら一同の失態でござる」

「ご主人、このハルム一生の不覚。ご主人の忠実なる配下、そして私とアクトの部下であるオリサとロゼは、アクトの言う通り既に自我は消え去っているでしょう」


 突然意識を奪われるほどの一撃を食らった二人だが、最低限の状況把握はできている。

 流石は超常の者だ。


 そこにヨハンもキグスタに対して深く頭も下げる。


「我が君にあそこまでの傷を負わせてしまうなど、あってはならない事です。更にハルムの言う通り、我が君の忠実な手足となる二人も失いました。如何様な罰も謹んでお受けいたします」


 キグスタは、ヨハン、アクト、ハルムからの声を聞き、ようやくこの場にオリサとロゼがいない事に気が付く。

 キグスタの記憶にあるのは、何故かあの二人が自分を拘束して……フラウやカンザ、そしてウイドが目の前に現れたのだ。


 徐々に記憶が鮮明になり、理解してしまう。

 オリサとロゼは、自分に危害を加えないように必死で戦っていたであろう事。

 おそらく何かに操作されているか、乗っ取られてしまったか……なのだろう。


 これ以上キグスタを傷つける状況にならないように、互いに命を散らせたのだ。


 その行動がきっかけで、ヨハンがキグスタとアクト、ハルムと共に転移で帰還する事が出来たのだ。


「俺こそすまない。俺なんかと違って、皆は本当に長い間共にいたのだろう?共に生活していたのだろう?それなのに……俺なんかを守るために……本当に済まない」


 キグスタも家族の大切さは嫌という程知っている。

 超常の者達は、人族であるキグスタなどとは比べ物にならない程、長きに渡り生活している。

 そんな家族の二人が突然その命を散らせたのだ。

 それも、自分の油断が原因で起きた上、自分を守るために……


 心が押しつぶされそうになるキグスタ。

 ハルムを始め、超常の者達に深く頭を下げたまま動くことができない。

 キグスタが下を向いている床には、涙が零れる。


「我が君、あの二人オリサとロゼは、我が君にそこまで想っていただけて幸せでございます。我が君の為にその身を散らせる事は、我らの本懐。まさに、我が君に対しての真の忠誠を示す事が出来たのです。こちらこそ、我が配下に過分なお言葉、ありがとうございます」


 ヨハンを筆頭に、全ての超常の者達がキグスタに跪き首を垂れる。


「キグスタ様、心をしっかり持ってください。どうしてフラウやカンザ達が復活しているのかは分かりませんが、こちらに攻めてくる可能性は高いでしょう。何としてもグリフィス王国を守るのです。それが、オリサ様とロゼ様の想いを無駄にしない唯一の行動です!」


 妻であるナタシアに活を入れられ、ようやく顔を上げるキグスタ。


「キグスタ殿、申し訳ない。即鉱山の調査をさせたのですが、あのコンタレイ、カンザとウイドもあの時に引き取って帰った事が確認できました。まんまと騙されましたが、奴は黒です」


 ここにきて、ようやく皇帝コンタレイがグリフィス王国に対して最大の悪意を持っている事を確認したキグスタ一行。


「もう原因や理由はどうでも良い。あいつ等に無駄口をたたく暇も与えずに確実に始末しろ!」


 キグスタの目には、怒りの炎がともっている。


「恐れながら我が君、あの時のフラウは負の感情を食らって自らの力を増幅しておりました。我らの感情を力にするのです。大変厄介ですが、平常心で迎え撃つ必要があります。我が君の感情が乱れれば、その分奴らに力を与えてしまうのです」


 ヨハンが冷静に対策を伝える。

 と同時に、改めて熱くなりやすい武神ソラリスにも釘を刺したのだ。


「あいつ、厄介な。クソッ。ふ~、わかった。冷静にだな。だが、奴らを完全に滅する事、完膚なきまで叩き潰す事、ここだけは決して譲る事の出来ない最低ラインだ。それで良いか?」

「承知いたしました。我らの力の全力をもって、我が君の期待に応えて御覧に入れます」


 美しい所作で一礼し、超常の者達も続く。


「戦闘に参加するのは、四神のみとします。他の者達はグリフィス王国の守護をお願いします。キグスタ様も、ここでお待ちください」


 キグスタは自らも打って出ると言いそうになったが、再び人質になり足を引っ張る可能性、そして感情のコントロールが超常の者達と比べてかなり甘いと言う現実を考慮し、その言葉をグッと飲み込んだ。


 ここで言う四神とは、死神アクト、獣神ソレイユ、武神ソラリス、精霊神ハルムだ。


 ヨハンを始めとした超常の者達は、既に隠す気も無いのだろうフラウと共に行動している四体の気配を察知している。

 その中には、オリサとロゼの姿をしている別の気配も察知した。


 この時点で、ひょっとしたら二人はまだ生きているのかもしれない……と言う淡い期待は打ち砕かれたが、キグスタの心にダメージを与える可能性があるので、一切表情には出さない。


「では、行ってまいります」


 ヨハンと共に転移で気配のする方に移動する。


「ヨハン様、某とハルム、()部下をこの手で開放してやりたいでござる」

「私からもお願いします。最後までご主人の為に行動をした二人、せめて我らの手でその身を開放させてください」


 オリサとロゼは、ハルムとアクトの部下だ。

 上司として、既にその身を乗っ取られているか操作されており、自我は消滅している二人を、せめてその手で送ってやりたいと思ったのだ。


「わかっていますよ。あの二人はお任せします。ですが、くれぐれも冷静にお願いしますよ。無駄に相手に力を与えてしまう事になりますから」

「かたじけない」

「感謝します」


 既に互いを視認できる位置まで近接している。

 ヨハンと四神、フラウ、カンザ、ウイド、オリサ、ロゼが、それぞれの相手が決まっているかのように向かいつつ距離を縮めていく。


 だが、戦闘相手との距離は近くなるが、互いの距離は開いていく。

 戦闘時に隣の戦闘に影響があるのを防ぐためだ。


 そうは言っても、当然超常の者達の戦いであるので、このまま戦闘を行ってしまっては大陸に影響が出るのは必至だ。

 そこでヨハンの指示により、全員対戦相手を引き連れて異空間に転移するようになっている。


 こうなると互いの状況もわからず、念話による意思疎通もできなくなる可能性が高いが、大陸に影響が出るよりはましであると考えたのだ。


 最後にヨハンは、超常の者、四神に一声だけ念話で伝えて、フラウと共にこの場から消えた。


『キグスタ様の忠実な配下よ。必ず勝利を!そして無事な生還を!』

連載中の副ギルドマスター補佐心得、


https://ncode.syosetu.com/n5874gy/


一読いただけると嬉しいです。

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