フラウと仲間
依り代を得る事が出来た二人と、未だ精神体の二人と共に異空間の中にいるフラウ。
見かけカンザとウイドであるため、依り代を得た者の名前はそのまま彼等の名前を使う事にしたようだ。
そもそも、フラウを含むこの異空間にいる存在達は、名前に対して執着がなかったのだ。
「それで、キグスタ達の対処はどうする?俺達もこの体に慣れたし、早速グリフィス王国を攻めに行くか?」
「待て、カンザ。まだ仲間二体が依り代を得ていないのだ。こちらの戦力も最大限にしてから仕掛ける方が良いだろう」
未だ順調に交易を行えているグリフィス王国と、そこに根を下ろしている排除対象であるキグスタを筆頭とした超常の者達。
そこに攻め入るには、最大限の力を得てからするべきとウイドは指摘している。
仮に今すぐに適当な依り代を精神体に与えたとしても、依り代の力が弱い場合には、本来の力を取り戻すのにかなりの時間がかかる。
その点では、ウイドとカンザはある程度の力があったので、既に力を取り戻す事に成功していたのだ。
更には、既に活動をしているので、更なる力の上乗せまで行えていた。
逆に言うと、今の彼等と同等以上の力がある依り代であれば、すぐにでも力を取り戻せることになる。
だが、事は単純ではない。
それほどの力を持つ者がいない事、仮にいたとしても、当然力がある者なので抵抗されるのだ。
そんな事はわかっているので、残りの二体についての扱いを決めかねているカンザとウイド。
「大丈夫よ、二人共。私に考えがあるから。それに、カンザの言う通りそろそろ攻撃を始めてもよさそうよ」
今の話では、精神体のままでは何の力も行使できない二体をそのまま攻めると言っている。
つまり、最大戦力ではない状態で、超常の者達に仕掛けると言っているのだ。
カンザとウイドは、フラウの真意を知りたいので続きを促す。
「私達はグリフィス王国に入れない。だから、逆に向こうからこっちに来てもらうのよ。今までコンタレイが信頼を得ているから、誘いには乗って来るでしょ?」
「それはそうだろうな。で、それからどうする?」
「まあ焦るな、カンザ。落ち着つけ」
少々前のめりになるカンザを抑えるウイド。
「それから……」
フラウの説明に納得するカンザとウイド。
「流石はフラウだ。これなら最大戦力で奴らを叩き潰せるわけだ」
「フム、素晴らしいな。その作戦、異論はない」
こうして、最後の決戦とも言えるフラウを筆頭とした一行と、キグスタを筆頭とした一行が激突する事になる。
コンタレイには、いつもの通り作戦の詳細は伝えられない。
ただ単に、交易もうまく行っているので互いの親睦をさらに深めるためにも、皇帝と国王だけではなく、上層部の交流も活発にしていこうと提案させたのだ。
その手始めとして、大陸中にその名を轟かせるに至った、龍を従えているキグスタとその配下をジャミング帝国に招待した。
キグスタやグリフィスとしては、当初は敵対すると確信していたジャミング帝国の皇帝が、思いのほか善人である事、グリフィス王国に悪意がない事、今までの交易は順調である事などから、喜んでその申し出を受ける事にしていた。
ここで、キグスタ側には少々問題が発生していた。
そう、誰がキグスタと共にジャミング帝国に行くのかでひと悶着あったのだ。
「当然我が君の執事である私は同行させて頂きますよ。むしろ、何故行かないと言う選択肢が出てくるのかが不思議でなりませんな」
ヨハンが当然のように、そして少々圧をかけながらこの場にいる超常の者達に告げる。
そもそも超常の者達の中で最強のヨハン、今までも常にキグスタの傍にい続けてその身を守り続けている事から、他の超常の者達も納得した。
せざるを得なかった。
そして残りだ……
はっきり言って面倒くさいので、全員連れて行ってしまえば良いとキグスタは思っているのだが、グリフィス王国にも残る者がいないと、キグスタの家族、グリフィス王国に対する安心材料が激減するので、それは止めた方が良いと超常の者達から提言があった。
そう、超常の者達自ら同行できる枠を狭くした状態で、その残りの枠を争っているのだ。
キグスタや家族の事を思っての進言である事はわかっているので、何とも言えない表情をしつつも、黙って同行者が決定するのを待つキグスタ。
「やったでござるよ~!フハハハハハ、やはり某、持っているでござる!」
「フフ、やはりご主人と同行するにふさわしいのはこの私、ハルムであったようですね」
先ずは、死神アクトと精霊神ハルムが権利を勝ち取ったようだ。
こうなると、当然その配下の者達から同行する者達が選ばれる事になる。
有り得ないとは思っているが、緊急事態の際に連携がとりやすいからだ。
同行する事ができなくなった武神ソラリスと獣神ソレイユは少々落ち込み、その配下の者達にダメ出しをされていた。
そう、その戦いとはくじ引き。
中の見えない箱の中に棒を四本入れ、その内の二本の先端に色を付けておく。
色付きの棒を引き当てた者が、キグスタと同行する権利を得るのだ。
超常の者達の力があれば色付きの棒を引く事など造作もないのだが、もちろん全ての力を使わないと言う条件で実施している。
アクトとハルムの配下の間でも、全く同じ壮絶な戦い?があった。
今回は、四本の棒の中で色付きは一本。
その中で同行の権利を勝ち取ったのは、アクトの配下であるオリサ、ハルムの配下であるロゼだ。
こうして、キグスタの他にはアクト、ハルム、オリサ、ロゼがジャミング帝国に交流を深めに行く事に決定した。
この先には、フラウを筆頭とした真の敵が待ち受けているとは知らずに、意気揚々とジャミング帝国の門の前に転移する五人。
そこから門に移動すると、そこには皇帝自らがキグスタを出迎えていた。
いつもグリフィス王国に来る時のように、近衛騎士と言った武力を持つ者は近くにはいない。
超常の者達も、当初この皇帝がグリフィス王国に来るたびにキグスタに内緒で、ハルムの力を使って悪意のチェックをしていたのだが、常に悪意無しであると判定されたので、今では何の警戒もしていない。
「キグスタ様、そして皆様、ようこそお越しくださいました。今日は我がジャミング帝国を堪能していただき、私の下の者達も紹介させて頂きたいと思っております」
にこやかな皇帝コンタレイに、いつもの通り笑顔で挨拶をするキグスタ。
その後は、コンタレイが先導してジャミング帝国に入国する。
もちろん皇帝と共に入国しているので、何のチェックも受けていない。
以前交易品を決定するために品物を買い漁った通りを通過し、敷居の高そうな食事処で食事をする事になった。
「実は我が帝国では、騎士や冒険者達が交流してスキルの上達を図るべく、闘技大会を行う予定なのです。ですが、その闘技大会の安全を確保するための結界等の技術があまり高くないので、是非とも皆様に助言を頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「喜んで。この後にでも向かいましょうか?」
こうして、流れるように闘技場に向かう事が決定したキグスタ一行だった。
そこには、あのフラウ達が待ち構えているとは知らずに……
連載中の副ギルドマスター補佐心得、
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