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ソレッド地区の祭り

 俺が統治しているソレッド地区。

 学校に沢山の子供が通い、スキルに応じた教育を受けている。


 町はかなり発展しており、人々は笑顔で生活できているのが嬉しい。

 そして嬉しい事と言えば、グリフィス国王からの情報で、スキルに対して文句を言い続けていたジャミング帝国の新皇帝が、グリフィス王国に対する悪意がなかったと言うのだ。


 水晶判定でそう出ているので、間違いがない。


 これは嬉しい誤算だった。

 これからは、以前実施していたフラウ探索のように、余計な事に一切力を使わなくて済むようになったと考えて良いだろう。


 そして今日は、学校の発表会と言う名の祭りだ。

 学校の講師として、超常の者達の配下であり、俺に付き従っている神達の部下となる者が子供達にスキルに関する知識を与えている。


 ただし、ハルム配下の精霊王ミルハは、ギルド職員として働いているので除外されている。


 通常の学問を教える担当になっていないのは、彼らも人の心や駆け引き、その辺りの知識が欠落しているから、除外させている。

 最近は少しましになってきているので、このまま生活していれば学問等も教えられるようになってくるだろうな。


 最近はそんな事情から、超常の者達全員が常に顕現して生活している。


 そして今日の主な催し物は、<調理><裁縫><美術><錬金術>を持つ者達の作品発表会と、<剣術><操術><槍術><魔術><拳術>を持つ者での模擬戦を行う事になっている。


 もちろん、模擬戦に関する仕切りは超常の者達が行う事によって、万が一にも大怪我の無いように手配済みだ。

 この祭り、ソレッド地区全域を使っての大々的な祭りになっているので、グリフィス王国の王都の住民や、国王自身、そして周辺国家の重鎮まで来ている状態になっている。


 その中には、先日予想を反してグリフィス王国に悪意のなかったジャミング帝国の皇帝、コンタレイの姿もあるらしい。


 この学校に通う子供達は、上位スキル持ちはほんの数人しかいない。

 だが、展示されている作品を見る限り、たとえ上位スキルでなくとも、研鑽する事によりかなり技術が向上する事が分かる。

 上位スキル持ちが作った作品と言っても問題のないレベルに仕上がっているからだ。


 俺はヨハンと共に、学内、そして周辺にも展示や販売されている子供達の作った作品を見させてもらっている。

 種類によっては食べられる物もあるので、購入してヨハンと二人で食べている。


 最初は恐縮してなかなか俺から購入品を受け取ろうとしなかったヨハンだが、ともに楽しみたいと伝えると、喜んで受け取ってくれて、現在に至る。


 周りを見ると、色々な人が祭りを楽しんでくれている。

 時折、空を悠々と飛んでいる龍達が見た目きれいな魔法を空中に発動して、祭りを盛り上げている。


 既にグリフィス王国に属性を冠した龍が存在する事は知れ渡っているので、誰も怯える人はいない。

 むしろ、伝説級の龍をその目で見られて喜んでいる程だ。


 自分としては、ある程度祭りを楽しんだところに、グリフィス国王からの呼び出しを受けた。

 騎士について行き学校の一室に入ると、そこに待機していたのはグリフィス国王とジャミング帝国のコンタレイ皇帝だったのだ。


「素晴らしい催し物ですね、キグスタ殿。お楽しみの所申し訳ありませんが、少しだけ時間をいただけますか?」

「ありがとうございます。丁度ある程度見終わった所なので問題ありませんよ」

「実は、コンタレイ皇帝から相談がありましてね」


 コンタレイ皇帝は、椅子から立ち上がり一礼してくる。

 なるほど、ジャミング帝国と言えば、銀狼と繋がっていた国家と聞いていたのだが、この態度、水晶のチェックを通ったのも頷ける。


 心を入れ替える何かがあったのだろうか?


「キグスタ殿、ご存じの通り、我がジャミング帝国はお恥ずかしながら前皇帝を排除する形で私が即位しております。その際に、かなりの建屋の損壊、鉱山の破壊なども起きており、現時点でも修復が完了していないのです。大変申し訳ないのですが、できれば労働力を提供して頂けないかとグリフィス国王に相談させて頂いていたのですよ」


 そうか、内乱と言えばそうなる可能性もあるのか。

 労働力に関していえば、超常の者達は既にグリフィス王国での学校の講師や、ギルド職員、そして俺の家族の護衛についてしまっているので、本当の緊急事態でない場合を除き、派遣する気にはなれない。


 その他の労働力であれば、別段俺に断りを入れる必要もないので、グリフィス国王の許可さえあれば良いのではないだろうか?


「そうですか。私としてはグリフィス国王の許可があれば問題ないと思いますが?」

「おぉ、ありがとうございます」

「キグスタ殿、急に呼びだして申し訳なかったですね。今日の夕方にはジャミング帝国に帰られるとの事で、至急キグスタ共にも伝えようと思ったのです。では、後はこちらで処理をしておきますので」


 なんだか拍子抜けしたお願いだったが、そのまま学校を後にして自宅に戻ると、まだ小さい我が子と触れ合う事にした。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 学校に残された皇帝コンタレイと国王グリフィス。


「急なお願いを聞いていただき、ありがとうございます。労働力、大変助かりますが、鉱山の修復もあるのでかなり劣悪な環境になります。その辺りに適した労働力を頂けると助かるのですが。そうすれば、今鉱山の修復に充てている人員を、町の修復に従事させる事ができます」

「そうですね、鉱山の、しかも修復ともなればそうなるでしょう。どなると、我が国の鉱山で働いている犯罪奴隷となりますが、よろしいですか?」


 コンタレイの思惑通りに話が進んで行く。


「願ってもないですね。かなり過酷な環境になりますので、その……申し上げにくいのですが、無事に帰還できるとも限りません。その辺りの補償は如何致しましょうか?」

「いや、そもそも犯罪奴隷ですからな。我が国の犯罪奴隷は、実際、かなりの悪事を働いたもののみがあの場所で働いておりますので、問題はありません」


「では、次回の交易品は、少々色を付けさせていただきます」

「そうですか、お気遣い感謝します。では、お時間もないでしょうから、数名適当に連れてきましょうか?」


 互いに気を遣っているように見えるが、コンタレイとしてはグリフィスの申し出は余計以外の何物でもなかった。


「いえ、できれば私の方で人物を見て数名、多くとも五名程度選択させて頂ければと思っているのですが」

「おっと、そうですな。実際にどのような仕事に就くかは私ではわからないので、適した人材はその目で判断される方が良いですな。では、これから向かわれますか?」


「はい、そうさせて頂きます。ですがグリフィス殿は祭りをまだ楽しまれていないのではないですか?私に気を遣わずに、場所だけどなたかに案内して頂ければと思っておりますが」


 実際にグリフィスは、コンタレイだけではなく他国の重鎮との対談をこなしていたので、祭りに一切参加はできていなかったのだ。

 その為、自分の国家に所属する子供達の作品を見たくて仕方がなかったのだ。


「そうですか、ではお言葉に甘えさせていただきましょうか。おい、コンタレイ殿を鉱山にお連れしろ」


 こうして、コンタレイと騎士は鉱山に向かい、数人の犯罪奴隷と共にジャミング帝国に帰還した。

 当然その中には、カンザとウイド将軍の姿もあったのだが、騎士は案内をしただけで犯罪奴隷に詳しくなく、この場を管理している人物も、腕がなく大して労働力にならない二人の詳細は知っていたが、既に意識も朦朧としている状態になっており、邪魔で仕方がなかったので、何の問題も起きなかったのだ。


 そう、ここは毎日のように犯罪奴隷が送り込まれ、そして過酷な条件での労働によりこの世界から消えていく。


 その中の二人が過去の重要人物であったとしても、既に立ち上がる事も出来なくなっている状態の為、持って数日。

 今更いなくなろうが問題ないと判断され、死亡扱いとして処理された。

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