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封印解除

 転移は、距離に応じて込める魔力が異なるので、距離があればある程魔力の揺らぎが大きくなる。

 その為実際に転移を使うのは、現地について、滝の底に移動するときだけと決めているの。


 そこまでは、本当に全力で移動すれば、今の私の力であれば一時間もかからないでしょう。もちろん隠密も使っているわよ。


 予定通り、大きな山に囲われた一角に、見事な滝があったわ。

 本当に記憶の通り。

 記憶が蘇るまでに時間がかかっているので、大きく景観が変わっているかとも思ったのだけれど、素晴らしい景色のままだったの。


 普段ならこの景色に見入っても良いかもしれないけれど、それは次の機会までの我慢。

 まずは封印を解く事に集中しましょう。


 水しぶきが反射して、美しい景色を織りなしている滝の近くに行き、もう一度だけ記憶の場所で間違いないかを確認したの。

 滝の底。ここからは見る事ができない底には無数に横穴があり、その一部に仲間が封印されているわ。


 この場所は、自然のままの状態を利用して封印したのでしょう。

 あからさまにきれいな横穴とかではなくて良かったわ。


 私がキグスタ達の監視から逃亡した時に、不自然な横穴であれば本当に厳重に調べられた可能性があるものね。


「それじゃあ行きますか」


 気合を入れて、短距離の転移を慎重に使ったの。

 もちろん横穴には空気があり、人が動ける程度の大きさだったわ。


 ぱっと見は、本当に何もない場所。

 でも私にはわかる。


 ここに私の仲間が一体封印されている。

 近い穴に別々に封印されているのも気配でわかるわ。

 まずはここから行きましょう。


 手に軽い切り傷を入れて、封印されている床にその血を垂らすと、一気に魔法陣が浮かび上がり、精神体の仲間が現れたわ。成功よ!


 魔法陣の力を感知されないか焦ったのはここだけの話。

 よくよく考えれば本当に局所的な力なので、この辺りを警戒していなければ感知されることはないわよ。

 でも、油断はできないので、残り三体の封印もすぐにでも解いて帰還しましょう。


 他の三体も同じ工程を繰り返すだけなので、全く問題なく封印を解く事に成功したわ。

 この四体の封印は、存在を隠蔽しているだけの封印。個体を抑え込むための封印ではないから、解除も簡単ね。


 こうして新たな仲間四体と共に、私は再び一時間ほどの時間をかけて部屋に戻ったの。

 宰相にはもう少し遅くなると伝えていたけれど、問題ないでしょう。


 仲間達には、異空間に存在してもらっているの。これから何かしら活動するときに、仲間から私の存在が気取られないようにしているのよ。

 

 この四体の仲間、誰に憑依するかなのだけれど、二人は決めているわ。

 負の感情を取れるだけ取ったカンザとウイド将軍。


 もちろん奴隷の購入ができなければ別の人選を考えるのだけれど、基礎的な力を持っている人材なので、何とか手に入れたいわね。

 残りの二体は、もう少し考えさせてもらおうかしら。


 特段このまま異空間にいて貰っても全く問題ないのだから、焦って行動を起こしても仕方がないものね。


 せっかくキグスタ達にこちらの動きが明らかになっていないのだから、慎重に事を進めましょう。


 私にも突然本当の仲間ができたので、今までの事を理解して貰うために、共に異空間で生活して色々と説明していたの。

 その間に二日は経過していたようで、皇帝のコンタレイがいつの間にか帰ってきていたわ。


 本当にいつの間にか、私の部屋に来ていたの。

 私ったら、どれだけ意識が仲間に向いていたのかしら。


 本当の仲間と過ごす時間って、あっという間に過ぎるものなのね。初めて知ったわ。

 でも残念、時間切れね。いつまでもこうしている訳にはいかないので、異空間から出て皇帝と話をする事にしたの。


「お疲れ様、コンタレイ。首尾はどうだったかしら?」

「只今戻りました、フラウ殿。私と侍女は問題なく入国できました。入国の門でほんの少しだけ待たされましたので、恐らくその時点で悪意の有無を判定していたのではないかと思います。その後の対応は素晴らしかったので、悪意無しであると判断されているはずです」


 皇帝を見る限り何の監視もついていないし、異常もない。

 私の想定通りに事が進んだと考えてよさそうね。


「交易ですが、暫くは龍と共にこちらの侍女が行き来する事になります。その後、折を見て再びグリフィス国王との会談を行う予定です。その段階で、奴隷の売買について申し出ようかと思っております。如何でしょうか?」


 流石は皇帝、そして元高位貴族ね。私の意図を理解した上で今後の行動を考える事ができている。


「それでいいわ。頼んだわよ」


 まずは第一関門突破と考えて良いでしょうね。

 フフフ、今は力では全くかなわないけれど、戦略、頭脳を使った闘いならば互角以上に渡り合えるのよ。


 見ていなさい。私の知略をもってすれば、キグスタ達は敵ではない事を証明してあげるから。


◆◆◆◆◆◆


 確かにフラウの思惑通り、ジャミング帝国の皇帝コンタレイはグリフィス王国の入国時に悪意の有無をチェックされていた。


 既に入国時の全員に対して例外なく実施されている処置であるので、流れるような作業ではあるのだが、流石は皇帝。僅かな所作から、チェックされている状況を把握していた。


 グリフィス王国サイドとしては、たとえこの時点で悪意判定の水晶が赤、つまり悪意ありと出たとしても、入国を拒否するつもりはなかった。

 もちろん警戒する事にはなるが、元々スキルに対する言掛かりを付けてきている国家である為に、悪意がある事を前提で動くことにしていたのだ。


 しかし、グリフィス国王だけではなく、キグスタを含めた大多数の予想を覆して、ジャミング帝国の新皇帝コンタレイの判定は青。悪意無しであると言う結果に終わった。


 驚きを表情に出さずに対応する門番達。

 もちろんその水晶についている精霊の誤判断を疑い、その水晶を持って鉱山に至急出向いてチェックした。

 当然水晶は真っ赤に染まったため、精霊達にも問題のない事が確認されたのだ。


 この情報は、即時グリフィス王国上層部に伝達され、上層部は嬉しい誤算として受け取った。


 そのため、皇帝コンタレイは、グリフィス王国が当初予定した物よりも豪華な歓待を受ける事になった。

 グリフィス王国やキグスタとしても、生活を脅かすような問題が今後発生する可能性が限りなく低くなったと認識して喜んでいたのだ。


 流石に、自らが準備した悪意判定機能を疑う事も出来ずに、更に門番が再度チェックしたと言うのだから、キグスタとしても驚きを持ってその事実を受け止めていた。


 まさか、フラウの手のひらの上で転がされているとは、思いもしていない。


 以前キグスタは自らの生存をフラウ達に秘匿していたが、今度はフラウの生存を秘匿されていると言う、全く逆の立場になってしまっているのだ。

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