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ソレッド地区の繁栄

 普段よりも若干だけ警戒している状態で生活をしていたキグスタ一行。


 しかし、その後もフラウの魔力は感知されなかった事、グリフィス王国に異変がなかった事から、確実にフラウと言う脅威はなくなったと判断して、ソレイユによって展開されていた魔力感知についても解除された。


「ふ~、これから本格的にこの地区の運営を行うか」


 と一人で呟くキグスタ。

 もちろん背後にはヨハンがいるが、超常の者は何をどうすれば良いのかわかる訳もないので、沈黙を貫いている。

 呟いたキグスタも、返事が来るとは思っていない。


 だが、キグスタ本人も何をどうすれば良いのかわからない。

 肝心の妻達は子供に夢中の為、声を掛け辛い状況に陥っていた。


 もちろんキグスタが声を掛ければ相談に乗ってくれるだろうが、嬉しそうに、忙しそうに子供の世話をしており、子供が寝ている時は、疲れているのか一緒に寝ている妻達を見て、なかなか声を掛けられなかった。


「初めに何をするか……だな。安全は既に確保できているし、遠距離の移動も問題がない。とすると、スキルがなくなった事による新しい生き方を教える事か?」


 キグスタは必死で考える。

 それこそ耳の穴から煙が噴き出さんばかりに悩んでいた。


 魔獣関連は、少ないながらも戦闘系のスキルを持っている者が専属で対処する事にしようと思っていたキグスタだが、それでは魔獣の数と、今現在与えている戦闘系のスキル持ちのバランスが取れない事に気が付いた。


 圧倒的に魔獣の方が多いのだ。


「よし、ソレイユに頼んで何とかしてもらおう」


 結局他人に委ねる事にしたキグスタだが、実際にソレイユに頼んだ瞬間、再び自分で考えなくてはならないと思っていた。


 そのソレイユの返事とは……


「それでは我が主、全ての魔獣を滅しましょう。これで戦闘系のスキルは一切不要になります!」


 自信満々に回答されたのだ。


 それでは、魔獣から得られる素材や一部食料が手に入らなくなるので、論外だ。

 更には冒険者と言う職が無くなるので、生活に困る人々が出て来る。


 更に悩むキグスタ。

 そしてようやく出てきた案が、再びソレイユに頼んで、ある一定の強さを持つ魔獣をテイムするという事だ。


 その魔獣を冒険者ギルドで運営し、冒険者ギルドに賃貸料を支払う事により、テイム済みの魔獣を冒険者がレンタルできると言うシステムだ。

 魔獣の強さ、レンタル期間により賃貸料に差をつける。


 素晴らしい案ではないかと自画自賛していたキグスタの元に、ナタシアが子供を抱きながら様子を見にやってきた。

 子供はスヤスヤ寝ており、一瞬でこの場の空気が和む。


 これ幸いと、自画自賛の案をナタシアに説明するのだが……


「キグスタ様、それですとこのグリフィス王国以外にも同じようなシステムを導入しない限り、必ず不平不満が出てきます。であれば、いっその事スキルについての件、撤回しては如何でしょうか?ですが、与えるスキルは通常スキル。決して上位スキルすら与えないとすれば、何の問題もなくなるのではないでしょうか?」

「でも、それだと神託を覆す事になるし、既に何もスキルを得なかった者達もいるだろう?」


 そうなのだ。ここで神託を安易に覆すと、悪魔の王についても疑いの余地が出てきてしまう。


「いいえ、問題ありませんよ。スキル無とした場合の人々の生活を考慮して、再び神がスキルを与える事にしたと言えば良いのです。既にスキル無となった者達にも与えれば問題ないでしょう」


 実際、最も簡単な対処方法ではある。

 神託の信頼性と言う部分に若干の不安が残ってしまうが、キグスタではそれ以上の案が出ないので、ナタシアの案を即採用する事にした。


 非戦闘系統のスキルを与えてしまった者達には、彼らの希望するスキルではなかった可能性が高いが、そこは涙を飲んでもらう事になる。

 こうして、即二度目の神託は大陸中に伝わり、と同時に、超常の者達によって再びスキルが与えられた。


 最初の壁にいきなりぶつかったキグスタだったが、何とか助けてもらってその壁を乗り越える事ができた。

 この時点でキグスタ本人は自分だけでは何もできないと判断して、少しだけ妻達の時間を貰って、ある程度の意見を聞いていたのだ。


 その会話の時には、もちろんヨハンが後ろに控えているので、彼もその内容は理解している。


「まずは子供達の勉強、遊び場、そして親が働いている時間の子供のケア……か」


 妻達は、自分達が子供を育てている立場から、実際に必要であろう事柄を上げてきていた。


「では我が君、皆様の意見の通りに学校を拡充し、各スキルに応じた遊技場、戦闘系であれば模擬ダンジョン、調理系であれば調理場等を準備すればよろしいでしょうか?」

「そうだね。それと、親が働いている最中の子供のケア。これは俺も思いつかなかった。確かに俺はフラ…一人で家にいる事があったな。その時は寂しかったのを覚えている。なるべくならば、そんな思いをする子供は少ない方が良いからな」


 こうしてソレッド地区では、大規模な建設が行われることになった。

 今回は超常の者達の力は使わない。


 ギルドを通しての依頼とすることで、地区の経済を回す事にしている。


 経済は回るが、完成は遅くなる。

 ここは仕方がないと割り切るしかないのだ。


 そもそも超常の者達の力で、一瞬で建設できる方がおかしいのだから。


 一番の問題になるかと思っていた、子供のケアをする人の募集もギルドを通して実施した所、引退を考えていた冒険者達からの応募があったため、難なく人を集める事にも成功した。


 当然、ワウチ帝国側から来ている移民もその中に含まれている。


 一気に騒がしくなるソレッド地区。

 各種素材をグリフィス王国の王都や他国から仕入れているので、商人も潤い、その護衛についている冒険者も潤う。


 まさに日夜を通して建設が行われているので、かなりの速度で作業が進んでいる。

 キグスタは、時折建設現場を見に行っていたのだが、あまりに大歓迎されて工事が止まるので、気配を完全に消して現場を見る事にしていた。


 こうして更なる発展を遂げたソレッド地区。

 完全に建設が完了するのには数か月を要したが、見事な建築物が並び、地区に住む全ての子供が無料で学校に行けるようになった。


 そこでは、友達、仲間の大切さや、戦闘だけではなく、計算等を含むスキルに応じた基礎訓練が行われている。

 年に数回は大規模なイベントを行う事を計画しており、学校を中心としたお祭りを実施するのだ。


 子供も清く正しく成長し、大人も笑顔の絶えない場所になってきたソレッド地区。

 不穏な人々や、悪意ある他国の間者などは入国すらできないので、繁栄の一途をたどる事に成功していた。

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