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ナルバ村の再開拓

 一連の騒ぎは落ち着きを見せ、俺達のフラウに対する警戒は解いてはいないが、ぱっと見は日常が戻ってきている。


 超常の者達は常に全員が顕現しており、王都方面、中継の町、それぞれに滞在してもらい、警戒を怠っていない。


 最大戦力のヨハンは、常に俺の後ろ。

 そして、近衛隊長の四柱であるアクトは妻達の護衛、ソレイユはフラウの探索、ソラリスはグリフィス王国の王都の警戒、ハルムはソレッド地区の警戒に当たっており、彼らの配下になる超常の者達も、それぞれ各場所で警戒してくれている。


 そんな中、着手しなくてはいけないのは、俺の生まれ育った村、ナルバ村の再開拓だ。


 周辺は森に囲われており、魔獣が生息している。

 ナルバ村からみると、一方向はグリフィス王国の王都方面、そして真逆はワウチ帝国方面になる。


 グリフィス王国方面に関しては既にある程度の整備は終わっているので、村の拡張…町として運用できる程度の拡張をし、ワウチ帝国側への道を整備する事にした。


 森については、道中の安全、そしてナルバ村に対する安全への配慮はするが、魔獣の生息地であるために不要な開拓はしない事にする。


 これは冒険者としての生活の糧を奪わないようにする配慮でもある。

 だが、今後は戦闘系のスキルを持つ人々は激減する予定だ。


 そうすると、魔獣の生息域と人々の生息域については、もう少し距離を開けるような配慮が必要かもしれない。

 もちろん、魔獣から得る事ができる素材については、養殖や、テイマーによって制御されている魔獣が生み出す素材の供給等、できる事を試していこう。


 今回の再開拓は、ソレッド地区のギルドに来てくれているガーグルさんも同行している。

 一応、管轄地域の状況を把握すると言う名目だけど、どのような感じで開拓されるのか見たいだけではないか……と思っている。


「ガーグルさん、あの辺りの森を伐採し、整地します。ワウチ帝国への道はこの方向、そして、将来的にも安心できるように、防壁を作成して……ソレッド王国でも採用している水晶による入国可能者の選別もできるようにしますよ」

「おお、ありがとうございます。それで、どなたが作業をされるのですか?」


 この場に来ているのは、俺とヨハン、そしてガーグルさんだけ。

 必然的に、俺かヨハンになるのだが、ヨハンの見た目は初老の執事。


 俺は、<統べる者>しか持たない、普通の青年。


 一応、彼達の力についてガーグルさんは知っているはずなのだが、直接目にした事は無いために出てきてしまった言葉だろう。


「一応、ヨハンに頼んでいます。おそらくガーグルさんが予想しているような作業ではないとは思いますが、始めても良いですか?」

「え?ええ、よろしくお願いします」


「ヨハン、頼むよ」

「承知いたしました」


 すると、目の前に広がっていた森は奇麗に伐採・整地され、森と整地された場所との境界には、壁が聳え立つ。

 と、同時に、まるで植物でも生えるかのように家が整然と建ち並び、一呼吸程度で作業が完了してしまった。

 俺としては、見慣れた光景なので驚く事は無い。


 だが、流石ヨハンだ。ここまで俺のイメージ通りに造れるとは……


「終わりましたよ、ガーグルさん」


 おや、何の反応もない。想定していたよりも素晴らしい街並みになって、感動しているのか?だとすると、俺のセンスを褒めてくれているのと同じなので、嬉しいじゃないか。


「な、なんですかこれは!!!」


 うぉっ!びっくりした。


「えっと、何かありました?」

「何か?ではないでよ!力がおありとは聞いていましたが、この目で見るのと聞くのとでは大違いです。私の想像を軽く超えてきましたよ。素晴らしい。ヨハンさんも素晴らしいですね」

「いえ、これは我が君の力でありますれば……」


 ちぇっ、街並みのデザインに驚いた訳じゃなかったのだな。ま、いいや。


「えっと、ガーグルさん、門番については手配いただけますか?水晶は使えるようにして準備しておきますので」

「え、ええ。はい。わかりました」


 申し訳ないけれど、避難民や移民達は、現時点で門番等、国家の安全に直接係わる作業を任せるまでには至っていない。


「それと、一応この村、いえ、町になるのでしょうかね?龍番を作っておこうかと思います」

「そこまで整備頂けるのですか。ありが……」


 言っている傍から出来上がったので、言いたかった言葉が尻すぼみになっている。


「ヨハン、こうなると、龍の数、足りなくなるか?」

「確かに我が君の仰る通り。私の方で一体召喚いたしましょうか?」


 あれ、ソレイユが伝説の龍を全て召喚したわけではなかったのか?

 俺の不思議そうな顔を見て、聞くまでもなくヨハンは教えてくれる。


「我が君、私が召喚する光龍は、ソレイユでは召喚できないのです」


 そうですか。でも、龍が足りないのは事実だし、安全に寄与できるわけだから召喚してもらおう。


「じゃ、頼むよ。っと、そうそう、その光龍、他の龍達とは仲が悪いとかはないよな?」

「まったく問題ございません」



 すると、目の前には他の龍達と同じ大きさではあるが、神々しい龍が現れて、俺に向かって深く頭を下げている。


「初めまして。これから、このグリフィス王国、そしてこのソレッド地区の為によろしくな」

「きゅ~」


 少し鼻先を俺の体にこすりつけてくる。

 行動や鳴き声は、他の龍達と変わらないらしい。


「アハハ、流石はキグスタ様。光龍……他の龍達と共に御伽噺に出てくるような存在ですが、その一切は謎。伝承でも存在していただろう……程度の情報しかない龍を召喚するとは……」


 召喚したのは俺じゃないのだけどな。

 一方の、召喚者であるヨハンは、俺が持ち上げられている様子を見て、いつも以上に機嫌が良さそうだ。

 申し訳ない気もするが、いちいち気にしていたらきりがないのはわかっているので、放置する。

 

「それじゃあ、再開拓終了しました。一旦ソレッド地区の中央に集めていた避難民の中で、こちらに移住しても良いという人々を連れてくる作業を、ギルドの方で依頼として冒険者に発注して頂けますか?」

「ありがとうございます。早速戻って手配します」


 こう言った依頼も、冒険者達の糧になるので必要だ。

 何も、魔獣の討伐だけが冒険者の仕事ではないからな。


 こうして、ナルバ村改め、ナルバ町の開拓も終了し、門番も派遣された事によって、新たな開拓作業と、移民問題は解決した。


 後は、フラウ、そして残りの二人の扱いになるな。


 リルーナとホールについては、一旦帰還させよう。

 どの道、あの国家にい続けても、最早グリフィス王国に対しての情報は得る事はできないだろうからな。

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