フラウの真実
はぁ~、長い間、馬鹿共の相手をするのは疲れるわ。
まったく……私の力は多少増えたけど、もっと力が欲しかったわ。
ウフフフ、驚いた?私はフラウ。
キグスタ、リルーナ、そしてホールと幼馴染と言われていたフラウ。
でも、それは仮初の姿。いえ、本当にフラウなのだけれど、説明が難しいわね。
この命は、母親の中で尽きていた所に私が乗り移ったの。
丁度、私の力がある程度使えるほど復活したから、できたのよ。
私の力を増幅させるために必要な物は、負の感情。憤怒、嫉妬、哀愁、絶望、色々あるけれど、素敵な栄養になるの。感情によっては大した栄養にはならないけれど、大事な私の栄養源よ。
私は、この体で生を受けたのだけれど、両親がとても暖かい感情を持っていたのよ。
なので、思わず魔獣を差し向けちゃった。
だって、あんな感情、栄養にならないのだもの。
でも、これは本当に後悔したの。
転生の術を起動できてこの世に生を受けても、この体では碌に動けないし、自分で何も食べられない。
いえ、食べなくても大丈夫だけれど、負の感情の有る場所に行けなければ、餓死してしまうのは変わらないの。
せっかく産まれたのに、既に虫の息……
意識ははっきりしているだけに、ちょっと辛かったのよ。
でも、そんな私を助けてくれたのがキグスタの両親。
それから、私はキグスタの妹として、キグスタの両親の子供として育てて貰えたの。
今度は、先走って行動を起こすと自分の命が危ないと学習したので、大人しく猫を被って生活する事にしたわ。
もちろん、お兄ちゃんが大好きなふりをして。
でも、これも打算。
そのうち、このキグスタをゴミのように捨ててやろうと思っていたのよ。
キグスタが私を信頼すればするほど、その時に絶望と言う栄養が得られるからよ。
でも、私は自分の存在が良くわからないの。
気が付いたら、徐々に力を増やして…そして他人の体に乗り移って…
でも、本能で理解している。
この世界を壊すのが使命だって。
なので、全力でお兄ちゃん大好きなふりを続けているわ。
そんな日々の中、キグスタ相手に剣術を使っていると、少しだけ本気を出したせいで、すぐに相手にならなくなっちゃった。
それで、信託の儀?とか言う、人族ならば誰でも得られるスキルを判別する日がやってきたの。
そこで出たスキルは、<剣聖>。この世界で上位スキルと呼ばれる良いスキルみたいで、より剣術がうまくなるみたい。
でも、上位スキルを持つ者は、悪魔の王と戦うための特別なプログラムを受ける必要があるとかで、王都に召集される事になったの。
ここで、キグスタと離れてしまうと、今まで育て上げた信頼が駄目になると思ったのだけれど、キグスタは不思議な<統べる者>と言うスキルを持っていたおかげで、一緒に王都に行ける事になったのよ。
ついでに、ホールとリルーナも上位スキルを得ていて、同行する事になったわ。
そこで出会ったのが、カンザと言う上位スキル持ち。
彼は良いわね。とても良い。気配だけで負の感情があふれ出ているのが分かるわ。
何とか彼を私達のメンバーに入れる事に成功すると、私は徐々にキグスタから距離を取り始めたの。
当時のキグスタは驚いて、私に少し媚を売るような行動もしていたけど、そんな私の姿と、溢れんばかりの負の感情を持つカンザの行動を見て、リルーナとホールもキグスタを粗雑に扱い始めたの。
フフフ、こうなった時点で、カンザ、リルーナ、ホールから大量の負の栄養を貰えて、力が増えていくのが分かったわ。
でも、キグスタは、哀愁と言う、負のエネルギーの中では少ない栄養にしかならない感情しか持っていなくて、期待外れだったの。
このまま、このキグスタを育てても大した栄養にはならないと判断した私は、思い切ってキグスタを切る事にして、既にキグスタに対して負の感情を最大限に膨らませているカンザ、リルーナ、ホールに相談…と言う名の誘導で、とあるダンジョンの最下層に置き去りにする事にしたのよ。
こうすれば、大した栄養を吐き出さなかったキグスタも、憤怒の感情位は持ってくれるでしょ?
その後は、カンザを追い出す方向にしようかしら?
ま、キグスタの件が片付いてから考えればいいわね。
そして、作戦を実行する日、キグスタはただの大きな石を私達の指示で大切そうに運び、最下層のボスの部屋に入っていったわ。
ここには先日侵入して、下級悪魔が出る事はわかっているの。
もちろん、今の私が本気を出せば倒せるけれど、それでは面白くないので、わざと負けて、キグスタを仕留めるための場にしたのよ。
そして、ボス部屋の扉が閉まる直前のキグスタ。
とてもいい栄養を私に与えてくれたの。少し私達が煽ったのもあるけれど、とっても良い栄養だった~。
憤怒、絶望。素敵な栄養のおかげで、私の力は数段上がったのが分かったわ。
ありがとう、お兄ちゃん。フフフフ。
作戦が成功した私は、他の三人と歩調を合わせて地上に向かったのだけど、野営の時点で何か強大な力を近くに感じて、私だけは避難しておいたのよ。
そうしたら、全員が国王より与えられている聖武具全てが、目の前で粉々になったの。
今の私の全力でも破壊する事ができないこの聖武具。
強大な何かが破壊したのは間違いないけれど、今の私の力では探知できないし、変に力を開放して、あんな奴らに目を付けられるのは勘弁してもらいたいので、おとなしくしていたの。
後から考えれば、これは大正解だったのよ。
こうして一旦地上に出て生活を始めたのだけれど、宿泊場所に虫は出るは、謁見の間ではキグスタが運んでいた石が現れるは、もうさんざん。
もちろん、都度強大な力を感じたので、私はただのフラウとして最大限警戒して行動したわ。
そうこうしているうちに、聖武具を破壊した補填として、キグスタの両親を捕縛しに行く事になったのよ。
実際に私もキグスタの愚行を説明したのだけれど、その時も両親からは素晴らしい負の感情を頂きました!!!
キグスタ達からもらった栄養は素晴らしく、今の私であれば聖武具を破壊するのも問題なくできるわね。
でも、上手くいったのはそこまで。
キグスタは存在しているし、今まで感じた強大な力も、キグスタの配下によるものみたい。
何なのよ!!あんな力、卑怯よ。
かなり力が増えている今の私でも、手も足も出ないわよ!!
これからは、もっと負の感情を集める必要があると思って、カンザとリルーナ、ホールを度々キグスタにけしかけたのだけれど、キグスタからは哀愁程度の感情しか得る事ができなかったの。
ここが誤算ね。
あの男が、少しでもカンザと同じように激しく怒るような男であれば、私の力はかなり増強されていたのに……
そして、ついにカンザが離脱、いえ、キグスタによって奴隷にされ、私達三人もナルバ村での生活を余儀なくされたの。
はっきり言って、私は別に負の感情さえあれば生活には困らないのだけれど、ホールとリルーナの絶望と言う感情をもう少し大きくしたいので、共に行動する事にしたわ。
そしてある日、わざと魔獣との戦闘中に自分の武器を壊したの。
これで、残りの二人はもっと絶望するに違いないと思ったのだけれど、絶望の感情なんてほんの少し。その代わり、懺悔?後悔?本当に、爪のカス程度の栄養にしかならない感情が大きくなってきちゃったのよ。
このままだと、私も干からびちゃう!!と言う事は無いけれど、力が増えないわ。
何とか、色々二人を絶望の方向に引き込もうとしたけど、駄目だった。
これは、どちらかを犠牲にするほかないかな…と思っていたのだけれど、そんな時に再びあの強大な力を持つ配下と共に、キグスタが来たの。
そして、新興国家のグリフィス国王に戦争を仕掛けようとしている国の情報を集めるように指示されたのよ。
その時に連れていかれた採掘場はとっても素晴らしい環境で、カンザもそこにいたわ。
ずっとあそこに居たい気になったけど、そんな事はできなかったの。できる訳ないわよね。
でも、次の場所も戦争を起こそうとしている国。フフフ、素敵な感情で溢れているのでしょうね。
私は、内心を悟られないように現場に連れていかれたの。
もちろん、強大な力を感じているので、監視は当然ついているでしょ?
よくよく観察すると、小さな虫型の魔獣が数匹、付かず離れずに、監視しているのが分かったわ。
もう、こうなったら、この負の感情で溢れている素晴らしい国をそそのかしつつ、行方を眩ました方が良いと判断して、目障りな監視の魔獣を排除して、闇に潜ってみたの。
でも、きっとあの化け物共が私を探しに来るはずだから、魔力を残さないように、一旦避難する事にしたわ。
だんだんと私の力が大きくなって行くのが分かるほど、ここは素晴らしい国なのに、残念。
でも、近いうちに必ず戻ってくるわ。
誤字が多くて申し訳ありません
 




